第11話 触るな危険
アインが目を瞑ったことを確認して、周りに被害が出ないように
一瞬で二人の手足をへし折った。そうへし折った。
「ギャーーーーーーーー」
周囲の人たちが目ん玉飛び出るほど驚いてる。
絡まれた女の子を華麗に逃がしてあげて、頭を掴んで裏道に引きずっていく。その姿はまさに悪者のそれであるが、頭に子供と猿のスパイスが更に混乱を巻き起こしている。
その時、あっちだ! こっちだ! と声が聞こえて、どうやら憲兵がきたようだ。
「おい! そこの子供連れの奴とまれ!」
「はい。どうぞ。犯罪者を捕まえました」
「犯罪者はお前だろう!? そこの二人はひどい怪我をしてるじゃないか?」
「違うよ! ライムお兄ちゃんはお姉ちゃんを助けたんだ!」
「
「僕の名前はアイン・キュロス! お兄ちゃんを捕まえたら許さないぞ!」
「?! 領主様のご子息の名前を語るとは不届き者め! これで死罪確定だな。
おい。ゴローキの二人大丈夫か?」
「ううう。すまねぇ」
「俺に任せておけ」
「お前達には傷害罪と不敬罪の疑いがある。大人しく縄につけ」
「いやだね。今グルだってわかったし、抵抗させてもらう」
「お前らごときに何が出来る。逆らえば死罪だぞ」
「どのみち死罪にする予定だろ? くだらない。キュロス領にお前のようなカスはいらない。そうだなアイン?」
「うん。ライムお兄ちゃん。やっつけて! 父上には僕からも謝るから」
おおお。アインが数分単位で成長している。
キリが戦闘モードに入っている。キリにやらすと怖がられたら大変だ。
「あくまでも抵抗するのだな? 抜剣!」
「ほう。死にたいか? まぁ~いいや。両腕とお別れするんだな」
濃霧や霧化を使うまでもなく、ぶっとんだ身体能力で一瞬で三人の腕が切り落とされる。
声にならない悲鳴があがる。裏道とはいえ人通りが多いため野次馬で騒然としている。
「あんちゃん。流石にまずいって!」
「私たちが証言してあげるけど、手を出したら‥‥‥」
うんうん。街の人はいたって普通の人たちだ。どの世界にもどの国にも悪は存在する。
すべてを排除するなんて不可能だけど、俺の目に入ればそれは許さない。
なぜなら家族の街だからだ。いずれアインが統治するから、出来るだけ排除しておく。
「騎士団だ!」
パカパカと馬に乗って凄い勢いで10名程駈け付けてくる。
戦闘にいるのはどうやらザッツさんだ。
話が早いな。
「道を開けろ! どいつが街の治安を乱した? 成敗してくれる」
「あっ。ザッツさん俺です」
馬から盛大に落ちた
「アイン様! それにライム殿! どうしてこのような所に?」
簡単に事情を説明したが、追加でアインが相当怒ってしゃべり続けている。
街の人達はアインが領主の子息だと認識し、右往左往している。
その間、俺は青ざめてる輩二人に、ちょっと怖い方法で質問しゴロツキ組の事務所を聞き出していた。
「ザッツさん。申し訳ないですが、アインとキリを預かってもらえますか?」
「それは問題ないが、どうしたのだ?」
「いや。ゴロツキ組? 潰しにしこうかと思って」
野次馬も流石に急展開についていけないようで、口をあんぐりしている。
「それは助かるな。後処理は任せてくれ」
「お願いします。では」
その日、ゴローキ組は100名からの構成員すべてが、、、ライムにかかれば誰も生きてられない。濃霧が立ち込めたが最後。
ライムからすると裁判すら面倒なので終わらしたらしいが、本来はライムの判断は裁判を凌駕するのだが、本人は前世と現世で相変わらずチグハグな判断をする。
「ザッツさん。すいません。たくさん転がってますが、後お願いできますか? 後、隠し財産の場所もペラペラいってましたので、こちらに置いときます。不利益を被った人達に還元するのが良いかと」
「任せておけ。これで暗躍してた悪い奴らはこの街から出ていくかもな」
「えっ? 悪はなくなりませんよ」
「そりゃー全部は無理だが、この街にいればいずれコイツらの二の舞いだろ? 情報は一瞬で回るだろう。吾輩達も動いてはいるが証拠がなくてな。しかしライム殿にはそんなことは関係ない。その怖さは悪い奴ほどよく理解してるもんだ」
「そういうもんですかね? あっ! ちょっと最近儲かりまして、迷惑かけたのでこれで皆で一杯いってください」
と、金貨50枚ほど渡した。
「おい! 多すぎる。全員で飲んでも余るわ!」
「じゃー何回でも行ってください。一緒に訓練した仲間ですから遠慮は無用です」
「ガハハハ! そうか。ならば遠慮なくもらおう! おい! 聞いたか?」
「「「「おーー」」」」
騎士団はさらに動きがよくなり、テキパキ作業している。
「じゃー少し遅くなったけど帰るかアイン」
「はい! ライムお兄ちゃん! 滅茶苦茶楽しかったし、勉強になったよ」
「そうか! うんよかった。また行こうな」
その後、子供を肩車した猿つきの御一行は街の噂となり、見かけた日は犯罪率が急激に下がったとさ。また、グルになった憲兵は奴隷に落とされ、もちろん両腕がないため買われることもなく、まるでこうなりたくなければ悪事を働くなと言わんばかりに見せ物になっていた。
後ほど、ライムが同情し助けたことは内緒の話。
◇
◇
◇
「昨日はアインと大活躍したようだな」
「すいません。大人しくするつもりだったんだけど」
「父上! 僕がお兄ちゃんにお願いしたんだ!」
「アイン。わかってますわ」
「アイン。よくやった。それを見て見ぬふりする人間は成長できん」
「俺もアインは立派だと思う。これで街の人達も安心して過ごせるんだ。アインがキッカケになった事を誇っていいと思う」
「えへへ」
えへへ。頂きました。
なぜかキリも誇らしい顔をしている。
「キリもアインが大好きなようだ。少なくとも護衛としては強いぞ」
「キリは僕といて嫌じゃない?」
キキッ!と○ョッカー返事をする。
このコンビネーションが一番の癒しだ。
「好きなようだぞ。よかったな」
「うん! いつも一緒にいてね」
「でだ。ライム少し相談がある」
「なんでも言ってほしい」
「実は先日貰った神水で王妃を助ける事ができた。まずはありがとう。そしてその条件は厄介事であることも承知している。ただ」
「あなた。ここからはワタクシから。
それでね。王妃は義理のお姉様になりますの。でね、ライムの力じゃなくて、感謝をどうしても伝えたいと二人が聞かないの。もちろん厄介ごとは嫌だと伝えているけど、神に誓って感謝の意を伝えたいと、泣きながら言うのよ。強引な話ならワタクシも突っぱねるけど、、ちょっとね」
「と言うことは、王様がサーラさんの兄弟だよね? ならいいよ。あまり上手く話せないけど。それでいいなら」
「ほんと!? 本当にありがとう。もし変な事言ったらワタクシがお兄さんをぶん殴るわ」
「はははっ。期待してるよ」
全員が笑いに包まれた。
この瞬間ってすごく好きだな。
「日程は決まってるの? それと王都までどれくらい時間がかかるの?」
「明日、早馬を走らせて早々に日時は決まるだろう。王都までは、辺境といえど実は早馬であれば半日で着く程度だ。だからこそこの地が重要と言うわけだが」
「そうなんだ。じゃー明日はせっかくAランクに上げて貰ったし貢献してくるよ」
「上げてくれたと言うか実力だと思うが、まぁーそれも引いてはキュロス領のためにもなる。頼んだ」
◇
◇
◇
相変わらずハンター組合に行くと全員が、よそよそしいように見えるが、依頼板で適当な依頼を探していると
「おーライム。依頼を受けるならちょっと相談があるんだか」
「あー別にいいですよ」
相談というのが、大いなる平原というエリアにあるダンジョンの調査をしてほしいらしい。
「平原には数カ所ダンジョンがあるが、その内の一つが、氾濫の兆候があると報告が来ている。主な根拠がこのダンジョンは3階層の中型なんだが、明らかに魔物の数が増えていること、また本来2階にいる筈の魔物が1階に現れて怪我をしたとの事例もある。本来はダンジョンコアを破壊すべきだが、実は経済的な事情から生かすことが多い。今回はその弊害でもあるがな」
「とすると、今回の調査でダンジョンを破壊したらまずいのか」
「いや。一度氾濫してしまうとコアが暴走する可能性が高い。要するに繰り返し氾濫が起こると言う事だが、、潰せるのか?」
「慎重に行くが、およそ問題ないかと」
「そうか。報酬はとりあえず調査費で金貨50枚。討伐すれば追って相談だ」
「まぁー金には困ってないからそれでいいよ。ただしスキル書は貰うよ?」
「それは問題ない。ダンジョンで手に入れた物はそいつのもんだ」
「そうだよな。じゃー詳しい場所の地図を書いてくれ」
「わかった」
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