第3話 森での生活


「よっと。もうこの辺りの魔物も怖く無くなってきたな」


 森で一晩過ごしてから、早くも1カ月が経とうとしている。

ゴブリンが3体程度だと霧スキルを使うまでもなく倒すことが出来るようになっていた。


「魔石は回収してと。今のでレベル10か。正直レベルが上がりにくくなってきてる」


 すっかり森での生活も慣れたもので、食べ物も動物やら植物を鑑定しながら口に入れている。塩が無い分味気ないが、初めて豚を焼いて食べた日は感動したもんだ。

何より裏切る人間の心配をする必要ないことが自身の精神を落ち着かせていると感じている。


「きゃーーーー!」「ぎゃーーーー」


 そんな安定? した森の生活を打ち壊すように人間の叫び声が聞こえる。

恐らくだがゴブリンに襲われて攫われているのだろう。

付近の森を調べたが近くにそれなりの規模のゴブリンの集落がある。

考えたくはないが、男は食料にされ女は繁殖に使われているのだろう。


「助けるってのは無いかな。けど、ゴブリンも宝物を貯めてるって本で読んだことがあったし、一度チャレンジしてみるか」


 実は霧スキルの霧化以外に濃霧って技を覚えた。規模によって消費魔力は違うが、拠点を攻めるには一番効果的であることはわかっている。だから試してみたい気持ちが強いってことが強い動機になっているようだ。


「うん。沢山いるなぁ~。この1カ月結構討伐したのに、100近くいるんじゃないか? 1匹だけ大きなゴブリンが‥‥‥。たしかホブゴブリンか。あいつからヤレば混乱するかもな。よし」


  ≪濃霧≫


 濃霧を発動したと同時にホブゴブリンに斬りかかる。

即座に気配に気づいたようで持っていた剣でやみくもに斬りかかってくる。


  ≪霧化≫


 ホブゴブリンの剣は空振りし、一瞬で首を刈り取る。

そのまま右往左往するゴブリンを片っ端らから討伐していく。

レベルアップの感覚に嬉しさを覚えながら、とにかく濃霧が消えるまでに片をつけようと瞬殺していく。


 濃霧が晴れた。時間にして10分程だろうか。

辺りにはおびただしい程のゴブリンの死体が転がっている。残りが居るとしたら洞窟の中だろう。人間もそこに連れていかれていると思われる。

さっそく警戒を強めて奥に入っていく


「うげっ」


 思わず吐き気を覚えると、悲惨な光景が目に入る。

男は切り刻まれ、女は目に精気がない。数体のゴブリンが襲い掛かってくる。

奥に進んでいくと、さっき悲鳴を上げた人と思われる女が縄で括られて声にならない声を上げている。


「どうしよかな‥‥‥」


 ライムは真剣に悩んでしまった。生かすか殺すかを。

自分の森での生活を邪魔されたくない気持ちが強くなって通常では考えられない思考をしてしまっていた。


 その結果、一旦スルーして宝物庫を探すことにした。


「おっ! 結構あるじゃん。光るものを集める習性ってほんとだな。カラスみたいだけど、魔石やら武器やら使えそうな物は片っ端らから貰おう」


 その結果、装備が一新された。一新といっても中古だが。

今までの物は母親の遺品だし大切に保管してる。お金も随分ある様だ。今となってはあまり必要としないものだが、、


「で、どうするか。取り合えず縄をほどいて話をするか」


 猿ぐつわを外し縄を解いてやった。

その第一声が


「ちょっと!! 助けるのが遅いじゃない!」


「えっ」


「よく見たら子供? 人を助ける前に人様の遺品を漁るなんて、どういう神経してるわけ? 一緒に来なさい! ハンター組合に突き出して逮捕してもらうわ」


「あ、あの」


「しかもゴブリンを誰かが討伐した隙をついてを働くなんて#$%&’ 待って!!」


 気が付けば、殺すどころか逃げ出してしまった。

もうこの辺りにいれない。もっと遠くにいかなきゃ。

やっぱり失敗した。人間なんて助けなければよかった。


「せっかく住み心地がよかったのに、余計な事したな。もっと森の奥にいくか」




‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



 あれからどれくらいの月日が経ったのだろう。

森の奥に進むことで魔物の強さも徐々に上がって、それにつれて当然レベルも上昇してきた。魔物も徒党を組むというか集団で襲ってくることも多くなり、霧スキルの強化するため前世知識をフル稼働させて新しい技を研究している。


「霧って水だよな? たしか温度が下がった場所に発生してたと思うんだけど、ってか雲も水だよな。温度が下がる。雲もほぼ同じ。うーん。馬鹿っぽいけど氷と雨?」


 目の前に霧を浮かべておもむろに氷をイメージする。

そうすると霧は月明りにキラキラと光っている。そこに発動している逆の手を差し入れると


「冷た!!! もはや痛い。そっか霧の発生って温度が下がることだからそれを強めるとこうなるのか。明日朝に魔物に試してみるか。動きを鈍くするくらいの効果は見込めそうだ」



 翌朝、森を散策するとがいた。

ホブゴブリンを覆うように霧を発生させて、温度を急激に下げてみる。


 ガッ!!


 と、うずくまるホブゴブリンは、喉を抑えて絶命した。


「え? なんで? 体の動きを鈍らすはずが死んじゃった。ちょっとステータスを確認しようか」


名前:ライム【人間/男】 

年齢:12

レベル:60

体力 :4000

魔力 :4950/5000

攻撃力:1200

防御力:800

俊敏性:1500

特殊スキル:霧【霧化・濃霧・氷霧】

通常スキル:鑑定、収納

戦闘スキル:魔法【火、風、水、土、無、光】

      剣術、体術


 あら。もう12歳になってる。

それより氷霧こおりぎりが新しい技になってる。

 ちょっとした仮説だけど、スキルで発生させた霧は空間に発生するから体の隅々までいきわたっていて、それを突然凍らすことで肺が凍ってしまったのかな。

 通常は直接的に肺が冷えることがないから、生物はほとんど抵抗できずに肺が凍ってしまうんだ。とんでもねーっすね。殺戮スキルっす。


 後は見逃してはならないのが光魔法だ。

この数年、思ったより怪我してるんだよな。そのたびに光魔法をイメージで無理やり発動してたのが今回めでたくスキル化したようだ。


 もっと魔法を多用して戦った方が有利に進めると思うかもしれないが、この世界の魔法はイメージと魔力量。当然、今も無魔法で身体強化も使っているが実際はの一言。だから特殊スキルが重宝されるわけだが、、

 とはいえ、光魔法のヒーリングは魔力量を思いっきりこめて発動させると、相当の怪我も治せる。怖くて試してないが、指一本くらいなら再生させれそうだ。


「とにかくこれでレベル上げの効率化を図れる。どんどん討伐していこう」



 この近辺に魔物がいなくなったと錯覚するほど討伐した。

しかし魔力量に応じてサイズが変わる収納スキルだが、現在すでにテニスコートくらいのサイズをもってしても限界に達するほど魔物を収納している。

 ゴブリンのような魔物は魔石だけ抜いてポイだが、オークやハイボア、ミドルホークなんかは美味しいのよ。とはいえ、時間経過はしちゃうから入れ替えしつつ、熟成肉ってね。さらに旨いのよ。さらに森の奥に生えている果物。バーナやリーゴも糖分確保で必要だしね。貧乏性を超えて森暮らしするとこうなります。


「さて、今日はこの木の上で寝ることにするか。警戒するまでもなく魔物いないし」


 木の上で寝るのも慣れたもので、動物の皮を布団にして眠りにつく。

ウトウトしもう少しで寝落ちする寸前で、


 すぐさま霧化を発動し付近を警戒する。

と、隣の木からこちらを覗く魔物がいるが少し様子が違う。

気配が弱い? いや死にかけてる?


「なんだ? 変わった魔物だな。猿?」


 鑑定するとキリングモンキーとなっている。

名前からして危険な猿だろうけど、話しかけたことで逃げようとしている。


「俺、前世で猿飼うのが夢だったんだよな。母親の猛反対で飼えなかったけど‥‥‥。ほら弱ってるんだろ? 回復してやろうか?」


 そういって木の上に立ち上がった瞬間、猿が逃げるため隣の木に飛び移ろうと飛んだが飛距離が足りず落下し、地面で力なく横たわっている。


「あ~あ~。とはいえ回復させて襲われて殺すパターンも最悪だし、まずは猿と言えばバーナだろ。それを近くに大量に置いて、ヒーリング!!」


 猿改めキリングモンキーは、今更だが‥‥‥。驚いてバーナと俺の顔を行ったり来たり。愛い奴め。


「ほら。遠慮なく食べろよ。怖いなら離れてやるから襲うなよ」


 と正面を向いたまま後ろに下がる。

キリングモンキーは警戒しつつバーナを口にほお張る。

勢いよく食べすぎたか喉を詰まらせている。水魔法で水を近くに浮かべてやると、警戒しつつも命には代えられないと一気に飲み干す。


「ひゃははははははははは~いや久しぶりに笑ったよ。それこそ10年ぶりくらい。肉もあるが食べるか?」


 キリングモンキーは言葉がわかるのか頷いているように見えた。

特製の熟成肉を魔法でコンガリ焼いて投げてやる。


 それがキリとの出会いだった。






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