第4話 一人と一匹の生活


「なんだよ~。一定の距離を取って近くに居られると俺も警戒しちゃうんだけど」


 キリングモンキーは見事に餌付けされたのか付いてくるようになった。

なったのはなったんだが、距離は縮まらない。


 しかし頭が賢いのか、魔物が近くにいるとキキーっと声を上げて知らせてくる。

飯代は稼ぐぞって意思を感じるのは俺だけか。俺しかいないが。


 氷霧を覚えてからは、正直森では敵なしだ。

Aランクと言われる魔物が束で襲ってきても、一瞬で倒すことが出来るし猿が事前に知らせてくれるから、奇襲攻撃も受けないから最早森では無敵に近い。


 相変わらず森を奥に奥に散策していると洞窟を見つけた。

警戒しながら奥に進むと。


「あっ。これたぶんダンジョンだ。洞窟自体に強い気配を感じる」


 初めてのダンジョンを発見してしまった。

まだ屋敷に居る時に読んだ本にダンジョンの事を知ったが、ダンジョンコアと呼ばれる生物がダンジョンを作り魔物を創り出しているらしい。

 当然生物だからコアを殺せばダンジョンは死ぬが、長く生きれば生きる程ダンジョンの規模が大きくなり魔物も強くなるらしい。が特典というかこれも理解はできないが、スキル書を得ることができるようだ。

 昔からの考察では、ダンジョンで亡くなった人間のスキルがスキル書になったり、その装備が宝箱に収納されてるってことらしいけど。事実は誰も知らないようだ。


「おい。猿。俺はダンジョンに行くけどお前どうする?」


キリングモンキーは、ソワソワして決めかねてるようだ。


「なんだか猿って呼ぶのも愛想がないよな。よし今日からお前はキリだ。といってもここで別れてもいいんだぞ」


 キリングモンキー改め、猿改め、キリは俺の目をじっと見てくる。

そして少しずつ近くに寄ってきて、飛びかかってきた!

不意を突かれた俺は霧化を使う暇もなく目を瞑ってしまった。


 肩に重みを感じる。横を見るとキリが肩に乗って首を傾げている。


「いや。びっくりするだろ! なんだ一緒に行くのか?」


 キキっと返事をする。うむ。可愛い。


「じゃ~初ダンジョン行くとしますか」


 なんだかこの世界で初めての友達が出来たようで嬉しくて少し涙が出そうだったことはキリには内緒だ。


 前世知識で言うとマッピングスキルが欲しい所ではあるが、どうやらご都合主義ではないらしい。左手の法則? うる覚えの知識を使って進んでいく。魔物はホブゴブリンやコボルト程度しか出てこないが、、驚くなかれ!!


 魔物を討伐すると魔石を残して消えちゃう。

とすると食べ物どうすんの疑惑だよね。俺の場合は山盛りあるけど、ダンジョンは食べ物持ち込み必須ってことで‥‥‥。

食べ物の事ばっかり考えてると。。


「キリ。お腹すいたよね?」


 キキっと私も腹ペコです! みたいなアピールしてくる。と感じるってことだが。

ダンジョンで休憩場所ないのかな? かなり奥まで進んだような気がする。時間にすると数時間の感覚だ。特に今現在は魔物が脅威ではないけど、連戦が続くと魔力がヤバいし。少し注意して更に突き進んでいくと。


「あれ? あそこに部屋の入口みたいなのがあるな」


 一応警戒しながら入口に入ると、

 扉なんて無かったよね? これはモンスター大量発生パターンかボスパターンじゃん。


「くるぞ! ‥‥‥。こない。なんだそりゃ。いや。ちょっと待て。これはただ閉じ込められたパターン? 逆にやばいだろ」


 慌ててこの部屋を探索すべく薄暗いが何故か見えるダンジョンの洞窟を奥に進むと、さらに小部屋があった。後ろには戻れないし、進むしかない。


「キリ。警戒を強めてくれ。進むぞ」


 慎重に進んで行くと反対を向いた全身フード姿の人間? が何やらブツブツと呟いているようだ。


「あっあの。貴方も閉じ込められた感じですか」


 カカカカッと笑い声? のような声が聞こえて、全身フードが振り向いた瞬間、極大のファイアーボールが飛んできた!


「げっ! 骸骨だ」

 

《霧化》


 思わず霧化で避けようとしたら、腕の一部に大きな火傷をおった。

魔物と戦って久しぶりの大きなダメージで驚いてしまう。


「そうか。大きな火力の火魔法には霧が飛散されてダメージをくらうようだ」


 ひたすらにファイアーボールを撃ってくる。

必死に避けながら、作戦を考えるが今更いい案は出てこない。


 最悪な相性の相手ではあるが、霧スキルを信じて戦うしかない。


 《濃霧》


すぐさまファイアートルネードで霧を飛散させてくる。その終わりと同時に、


 《氷霧》


 一瞬動きが鈍くなった。

ここで、ウォーターボールをぶつけて、相手を吹っ飛ばした。と、同時に


《氷霧》《氷霧》《氷霧》《氷霧》《氷霧》


 この5連発で全身に氷柱が出来て動きを止めた。その隙をついて接近し、


「弱点は心臓と相場は決まってんだよ!」


 骸骨の心臓辺りに剣を突き刺すと悍ましい悲鳴をあげて目のランプ? 赤い光が消えた。


「ひぇーやばかった。イタタタ。火傷が酷いな。《ヒーリング》」


 ちょっと霧スキルを過信した事は今回で大反省しないとな。特にダンジョン内は機密度が高いから火魔法を使われ過ぎると湿度が下がって更に効率が悪くなる。

うん? 悪くなったのか? 連続すると体に氷柱が出来てたから、自然の法則よりも魔力量が優先される可能性が高いかもな。


「それにしても魔法使いと戦ったの初めてだから良い勉強になったよ。

おっ! スキル書発見! いつの間にか骸骨消えちゃったけど、この黒い

ローブとスキル書が今回の報酬か」


 早速鑑定するとスキル書は鑑定偽造スキルで、黒いローブは魔法ダメージ軽減と気配隠蔽とある。どちらも最高の戦利品となった。


「黒いローブは、若干恥ずかしいような気がするけど効果には変えられないな。

鑑定偽造は微妙だけど、鑑定されて能力がバレるのも不利になる可能性があるから必要といえば必要だよな」


 そんなことをブツブツ言いながら歩いていたら、拳大の魔石が台座に据えられていた。


「あっこれがもしかしてダンジョンコア?」


 思わず鑑定するとその通りだった。


「しかし想像したダンジョンより遥かに小さい作りだったけど、出来たてだったのか? 

あとはコアの討伐だけど、壊すの勿体無いような気がするからそのまま取れないかな」


 力一杯引きちぎろうとするが、当たり前なのか常識なのか、取れそうにもない。


「はぁはぁ。そりゃ無理か。なら氷霧の連発はどうだろ」


《氷霧》《氷霧》《氷霧》《氷霧》《氷霧》


 ダンジョンコアは氷柱でびっしりとなった。

そもそも死んだかどうかどうやって確認するんだ? おや。おやおやおや。

 この氷柱どうする? 失敗した。

急いで火魔法でじんわり溶かしていくが、さすが氷霧。溶けるのに時間がかかる。


ピシッ!


「あーー。温度差でコアにヒビ入っちゃった」


 これにはキリも呆れて猿顔だ。

ダンジョンの雰囲気が生き物のそれとは違う無機質な雰囲気に変わった。


「なるほど討伐するとこんな感じになるんだ」


 コアを回収して閉じ込められてた部屋の扉を確認すると、まるで初めから扉がなかったような状態でスムーズに帰路につけた。

 問題は真っ暗で光魔法のライトで照らしながら、むしろ警戒度を上げて帰る羽目になった。


「不思議な経験だったけど、もう少しダンジョンについては情報がほしいな。それを得るにはハンター協会に行くしかないから、当分ダンジョンはお預けだね。」




 その後、森の遥か奥地に辿り着き、大きな湖の辺りに小屋を作って数年間過ごす事になる。


 そのが、神の庭かみのにわと畏怖されS級ハンターがチームで挑戦しても生存不可能な禁足地であったことをライムは知らない。


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