物繰り少女
「────ってことがあったんだよね」
月曜日の放課後。私は『たこなぐり』に集まって、先輩二人とひーちゃんに昨晩あった出来事を話していた。
「それで……このちっこいのが、鵺なんか?」
そして、私はちっこいの──鵺も一緒にここに連れてきていた。
「月乃よ、このたこ焼きというのはなかなか美味いな」
今日の『たこなぐり』は営業中で、みんなで一パックずつたこ焼きを買って、イートインスペースで食べていた。鵺にも私がひとつ買ってあげたのだが、どうやら気に入ったようだ。
「それにしても……まさか月乃ちゃんが鵺を飼うとはなぁ」
「飼うとはなんだ! 飼うとは! せめて居候といわんか!」
鵺はそんなことを言った火虎先輩に、抗議の意思を見せるように箸を持った手をブンブンと振った。
「あ……もう、ぬーちゃん、口の周りが汚れてるよ?」
私はソース濡れになった鵺──今朝からは『ぬーちゃん』と呼ぶようになった幼女の口元を持っていたポケットティッシュで拭いてあげる。
「おい、子供扱いするな! 自分で拭ける!」
「そんなこと言って……朝ご飯ボロボロこぼしてたでしょ?」
今朝、目覚めたとき。何故か『ぬーちゃん』は泣いていた。理由を聞くと、百年ぶりに人肌に触れたのと、人に優しく抱きしめられたのが幼少期ぶりだったから、つい涙が出てしまったと、彼女は言った。
そんなことを言うぬーちゃんを、なんだか放っておけないというか、今日限りで追い出したりできないなという思いになってしまい、朝、おばあちゃん以外の家族にもぬーちゃんを紹介すると、お母さんとお父さんはすんなりとぬーちゃんを受け入れてしまった。弟は少し戸惑っていたが、そのうち流されて了承してくれた。
そんなこんなで、朝の短い時間の中で、ぬーちゃんは家族の一員となった。本気で戦った妖怪相手にそんなことになるなんて、我ながら不思議に思う。
「なんか……違う、そういうポジションは、私が欲しかったのに……!」
突然、ひーちゃんが変なことを言って、席から立ち上がる。
「ひーちゃん? どうしたの?」
「呼び方も被ってるし!」
「え?」
「何? ぬーちゃんって! 鵺のぬーちゃん!?」
「陽菜のひーちゃん……!? 落ち着いて!?」
そんな、謎の興奮をしているひーちゃんを落ち着かせながら、ぬーちゃんのお世話をする私。
ちなみに『ぬーちゃん』と呼んでいるのは、今朝、私のことを『貴様』ではない呼び方にしてほしいと言うと、『月乃』と呼んでくれるようになったので、私が「じゃあ、鵺のことは『ぬーちゃん』って呼ぶね」というと、意外と気に入ってくれたので、こうなった。
「アッハッハッハ!! 何やこれおもろいわあ!!」
「ふふふっ……! 楽しそうね!」
先輩達は、そんな私達を見ながら笑ってたこ焼きを食べている。
「まあ、そないに可愛らしくなられたら、こっちも乱暴できんようになるなあ」
そう言うと、火虎先輩はぐりぐりと乱雑にぬーちゃんの頭を撫でた。
──すると、びりびりっと音がして、火虎先輩の「ギャッ!!」という声がして、九頭龍先輩の「うわあ!?」という声がした。
「なんか……静電気みたいなのが……」
そう言って手を抑える火虎先輩。どうやら、ぬーちゃんが軽く放電したらしい。ぬーちゃんは「ふんっ!」と言って火虎先輩からそっぽを向いていた。
「こら、ぬーちゃん! 私達以外にもお客さんはいるんだから、能力使っちゃダメでしょ!」
私がそう言うと、ぬーちゃんは素直に「ごめんなさい」と謝った。えらい。
「そういう問題じゃないやろ……」
火虎先輩は少し不満そうにそう言うと、九頭龍先輩がそれにクスクスと笑っていた。
「そうだ……九頭龍先輩、これ……」
私は、ある物を思い出して、制服のポケットから取り出す。日曜日に買っていたアレだ。
「うん……? ああ、これは、『ご当地妖怪』のグッズね!」
「やっぱり、知ってたんですね」
「ええ! なにせ『かきくけこ五大妖怪』に関わる物ですから!」
ならば、話は早い。私は『物繰り少女』と『物借り少女』の缶バッジを九頭龍先輩に見せる。
「このキャラクター達……なんだか似てるような気がして……」
「似てるって……ああ、確かに、『物借り少女』が晴子に似てるとは思っていたけど、和隈さんも『物繰り少女』に似ているわね……」
九頭龍先輩は『物繰り少女』の缶バッチを持って、それと私を交互に見比べている。すると、その横からひょこりとひーちゃんが出てきた。
「あ、それ、私も思ってたよ、つっきー!」
「あ、うん……そう?」
「そう! 『モノクリ』の美少女キャラクター化っていうのを聞きつけて見てみたら、月乃ちゃんそっくりだったからびっくりしちゃったんだよね」
ひーちゃんや九頭龍先輩もそう言うということは、やはり客観的に見ても似ているということだろう。ならば。
「それでなんですけど……もしかしたら、私と火虎先輩以外の『かきくけこ五大妖怪』の末裔も、『ご当地妖怪』に似ているんじゃ……っていう仮説を立ててみたんですよね……根拠はないですけど」
「ええ……ええ!! 確かに、もしかしたら、他も……ふふふっ!」
私の仮説を聞いて、九頭龍先輩のテンションか上がる。
「この仮説が正しければ! 現代版『かきくけこ五大妖怪記』の完成まですぐね!!」
「あのなあ……アタシと月乃ちゃんのが似とるっていっても、髪型と顔の感じだけやし、たまたまかもしれんやん?」
興奮していく九頭龍先輩を諭すように、火虎先輩が冷静にツッコミを入れる。やっぱり、たまたま偶然キャラデザがそうなっただけだろうか。
「ねえねえ、現代版『かきくけこ五大妖怪記』って?」
話を聞いていたひーちゃんが質問をしてくる。そういえば、この話をしたときに彼女はいなかったんだった。
私はひーちゃんに、九頭龍先輩が妖怪好きなことや、私や火虎先輩等の『かきくけこ五大妖怪』の末裔の記録を集め、現代版の『かきくけこ五大妖怪記』を作ろうとしていることを教える。そして、私と火虎先輩がそれに協力していることも。
「ふーん……ちょっと面白そうかも!」
「あれ? ちょっとなんだ。『ご当地妖怪』、好きじゃなかったっけ……」
「うーん……集めてたのは、月乃ちゃんがたまたま『モノクリ』の子孫だったからで、他のご当地妖怪には興味ないんだよね」
「あっ……そうなんだ……」
私はその言葉に少し照れてしまう。だが、これは喜んでもいいのだろうか。
「うだひなちゃん! 『物借り少女』はどうや?」
「うーん……いらないですね!」
「そんなあ……」
火虎先輩が『物借り少女』を売り込みに行くも、あえなく撃沈してしまう。いい感じのオチがついたのではないだろうか。
「うん? あれ、これ──」
今のやり取りで落ち込んで、下を向いた火虎先輩が、何かを見つけたのかテーブルの上のある一点を見つめていた。
「月乃ちゃん! これ! これ……あのときの!」
火虎先輩が私の名前を呼び、先程まで見つめていた物を指差して見るように促してくる。
そこにあったのは、私が先程出した『ご当地妖怪』の缶バッチで、青髪のキャラクターが印刷されていた。名前は──『物切り少女』。
「あ……れ? これって……?」
「うん……せやろ……? 似とる……よな?」
私達はこの、『物切り少女』に似た少女に会っていた。それは、『家入の隠し屋敷』へ案内してくれた少女だ。
「そんな、でも、この娘は家入の……ぬらりひょんの孫娘なんじゃ……?」
「でもなあ……というか、もしかして、ホンマにこの『ご当地妖怪』って……」
私と火虎先輩が驚きを隠せずにいると、たこ焼きを食べ終わったぬーちゃんがこちらを向いて、「何を驚いているんだ?」と言う。
「ぬーちゃん、この……『ご当地妖怪』ってやつが私達に似てるの……」
そんな、理由のわからないことを言ってみると、ぬーちゃんはキョトンとした顔をして、口を開く。
「そりゃあそうだ、だってそれは、ぬらりひょんが企画したものだからな」
私達の周りだけ、空気が凍る。一体どういうことだろうか。
「ぬらりひょんが……企画したって……?」
私は必死に冷静になって、ぬーちゃんにそう聞いた。
「ああ、それは……おっと、ちょうどよくテレビに出てるじゃないか」
「え?」
ぬーちゃんがイートインスペースにある、テレビを指差す。すると、そこには──。
『今日は、ご当地妖怪を企画された家入グループの会長である、家入総太郎さんに来ていただいております! 家入さんよろしくお願いしまーす!』
そこには、ぬらりひょん──家入総太郎の姿があった。
「な……!? か、会長!? なんやそれ!?」
火虎先輩はそう言って、テレビを両手で掴んで画面を食い入るように見ている。
「うわあ、そういえば、見たことあると思ったら……」
「ああ……私も見たことあるわね……テレビとかにもよく出てるかも……」
ひーちゃんと九頭龍先輩はどうやら見たことがあるようで、今思い出したようだ。
ちなみに私はテレビをあまり見ないので、知らなかった。
「家入グループってことは……大きな会社ってこと……? ぬらりひょんが、そこの会長で……企画したってのはどういう……」
私がぬーちゃんにそう聞くと、ぬーちゃんは「なんだ、知らなかったのか」と言った。
そこからぬーちゃんの話を聞けば、どうやら家入は古くから様々な事業で成功していて、最近家入グループというのを立ち上げたらしく、その力を使って、百鬼夜行の為に色々なことをしているらしい。
そして『ご当地妖怪』も、その『色々なこと』のひとつらしく、これを見た『かきくけこ五大妖怪』の末裔達がぬらりひょんのところへ来てくれるんじゃないか、というのが目的のひとつらしい。
「じゃあ……この『ご当地妖怪』って……」
「ああ、『かきくけこ五大妖怪』の末裔をモデルにしているらしいな。だから──」
「つっきーが……つっきー自身が、『物繰り少女』……ってこと?」
ぬーちゃんの言葉を遮り、ひーちゃんがそんなことを言った。
「私自身が……『物繰り少女』……?」
私は、ひーちゃんから言われたことを、似たように返してしまう。
「じゃあ……アタシは『物借り少女』ってことか……?」
テレビを食い入るように見ていた火虎先輩も振り返り、同じようにそう言った。
ということは、つまり、先程見ていた缶バッチの青髪のキャラクター、『物切り少女』は──。
「ねえ……じゃあ、ぬーちゃん? この青髪の娘って……」
私は、恐る恐るぬーちゃんに缶バッチを見せて聞いてみる。
「ああ……ぬらりひょんの孫娘か……彼女は『モノキリ』の末裔でもあるな……」
──やっぱり。じゃあ、あの娘は九頭龍先輩が探している人物ということにもなる。
「ねえ……もしかして、現代版『かきくけこ五大妖怪記』更新のチャンスかしら……!」
九頭龍先輩が目を輝かせている。まさか、『物切り少女』を探す気なのだろうか。
「と、智香! 待ってや! 相手はぬらりひょんの孫娘やで!?」
「でも……」
「でもやない……! また、危険な目に合ったらどうすんねん!」
火虎先輩が大きな声でそう言った。おそらく、心の底から心配しているのだろう。
私はどうするべきか迷ったが、ここは九頭龍先輩の味方をすることに決めた。
「でも、火虎先輩? 私達、九頭龍先輩に協力するって言っちゃったよね?」
「そ、それはそうやけど……『物切り少女』はダメやろ……危険やないか?」
火虎先輩は、私が九頭龍先輩の味方をすると思っていなかったのか、少し戸惑いつつも考えを変えない。
「でも……私には、そんなに悪い娘には見えなかったけど……」
「見えなかったってだけやろ? そんなんじゃ……」
「それに──もし危険でも、私達が守ればいいじゃない」
「なっ……」
私のその言葉に、火虎先輩は面食らっている。
「つ、月乃ちゃん……? 君ってそんなに武闘派やったっけ……?」
「別に、戦いたいわけじゃなくて……ただ、私があの娘ともう一回話してみたいだけなの……」
そう、私はもう一度『物切り少女』と話してみたいのだ。私はここ最近、『妖怪』という存在と関わるようになってから、友達が増えたり、危険な目にあったり、昔の友達と会えたりした。
もし、私が『妖怪』という存在と頑なに関わろうとしなければ、これらの出来事が起こることは、ほとんどなかっただろう。
だから、私はこれまで興味を持ってこなかった『妖怪』との関わりを、持ってみるのも悪くないと思い始めている。
例えぬらりひょんの孫娘でも、頭ごなしに危険だと決めつけ、関わるのをやめるのはもったいないと私は思う。
そして、もしかしたら仲良くなれるかも──なんて、平和ボケした考えも実はある。
「だから、私も一緒に『物切り少女』に会ってみたい」
「月乃ちゃんまで……」
「私も! つっきーが守ってくれるっていうなら、会ってみたい!」
「うだひなちゃんも……?」
これで、三対一だ。多数決ならこれで決まりだが、そうはしたくない。火虎先輩の考えも尊重し、もし彼女がダメというなら私も九頭龍先輩を止めようと思う。
「うーん…………わかった、月乃ちゃんとアタシが揃って一緒にいるときになら……ええで」
火虎先輩はしばらく考えてから、少し不満がありそうながらも『物切り少女』を探すのを了承した。
「晴子……ごめんなさい、無理言って……でも、ありがとう」
「もう、しゃあないやろ……ただし、月乃ちゃんとアタシが二人揃ってないとダメやで?」
さあ、これで『物切り少女』を探す事ができる。私はお互いに笑い合っている先輩達を見ながらそう思った。
「それじゃあ! 明日の放課後からは『物切り少女』探し開始ってことで!」
「うん、そうだね……明日から頑張ろうか」
「はあ……悪い娘やないとええんやけど……」
「陽菜さん……和隈さん……晴子……協力してくれて、本当にありがとうね!」
九頭龍先輩は私とひーちゃんと火虎先輩のそれぞれの目を見てから、感謝の言葉を述べる。
明日からは、『物切り少女』を探す放課後になる。それは、不安も少しあるが、楽しいものになるんじゃないかという期待もある。何にせよ、明日からが楽しみだ。
「盛り上がっているところ悪いんだが……」
そうして私達女子高生四人組が結束を固めたとき、ぬーちゃんが口を挟んできた。
「ぬーちゃん? どうしたの……?」
「その、『物切り少女』なんだが……確か、月乃達と同じ格好をしていたと思うんだが……?」
「「…………ああ!? そういえば!!」」
ぬーちゃんの指摘を聞いて、私達は思い出す。そうだ、そういえば、あのとき着ていたのはY高の制服だ、と。
「アカン! 普通に忘れとった!」
「ああ、なんで忘れてたんだろう」
何故、こんなことを忘れていたのだろうか。何度かあの少女のことは思い出していたはずなのに。
私と火虎先輩がお互いに頭を抱えていると、「どういうこと?」と、ひーちゃんと九頭龍先輩が聞いてくる。
私達『ご当地妖怪組』は、『物切り少女』があのときY高の黒いセーラー服を着ていたことを説明する。何故か今の今までそのことを忘れていたことも。
「うーん……ということは、明日からは校内でその娘を探す……ってことになるわけね」
「ああ……せやな、でも、なんで忘れてたんやろ……」
どうやら火虎先輩も不思議に感じているようだ。
ただ単に、二人揃って忘れていた、というには少しおかしい。あのとき私も火虎先輩もあの格好に驚いていたはずだからだ。それに、昨日いろんなことがあったとはいえ、あの青髪の『物切り少女』を思い出せば、真っ先に出てくることではないかと思う。
「ねえ、ぬーちゃん。ぬらりひょんの能力ってどういうものなの?」
ぬーちゃんにそう聞くと、「ぬらりひょん……? さあ? 実はアイツの能力については知らないんだ」と返ってきた。
そうか、ぬーちゃんでも知らないのか。もし、『物切り少女』が『モノキリ』だけでなく、『ぬらりひょん』の能力も継いでいるのなら、その能力のせいなのではないかと思い、詳細を知りたかったのだが。
「まあ、ここで考えとってもしゃあないやろ! 明日から探して、会えたら色々聞いてみよか! 今日のところはこれで解散や!」
確かに、そうかもしれない。明日、本人に直接聞く。それが一番良い気がする。
私達はそれから、食べ終わったたこ焼きの船皿等を片付け、店の外へ出る。
店を出ようと、席を立ったとき、「孫娘をよろしくのう」と言う声が聞こえた気がしたが、そんなことはどうでも良かった。
私達はそのまま店を出て、先輩達と別れた。ひーちゃんとはいつものようにバス停で別れ、私とぬーちゃんは残り短い帰路に着いていた。
ひーちゃんは別れ際、「いいなあ……私もつっきーと一緒に行きたいなあ……」と言っていた。なら、今度お泊り会でもしてみようかと思う。
「ねえ……ぬーちゃん、ぬーちゃんは、妖怪ってどういう存在だと思う?」
私は不意に、そんなことを聞いてみる。
「うーむ、難しいことを聞くなあ……そうだなあ、人を怖がらせたり、困らせたりして、それを糧にして生きる存在……だろうな」
ぬーちゃんから返ってきたのは、私が今まで漠然とイメージしていた妖怪像そのものだった。ぬらりひょんもそんな感じのことを言っていたし、妖怪山で会った河童はまさにそんな感じだった。
「じゃあ……人の血が混じった妖怪は……どう?」
私はさらに、ぬーちゃんにそう聞く。ぬーちゃんは明らかに困った顔をしている。
「うーん……まあ、人によりけり……という答えじゃだめか?」
私はその答えを聞いて、なんだか納得してしまう。火虎先輩のように、少し能力を悪用している人もいれば、ぬーちゃんのようにがっつり悪用する人もいるし、私のように悪用はしないが、家で自堕落な使い方をする人もいる。
私は少し楽しみなのかもしれない。私や火虎先輩以外の『かきくけこ五大妖怪』の末裔たちが、どのように能力を使っていて、どのようにこの社会で生きているのかが。
私はそんな考えを口に出すことはなく、黙ってぬーちゃんの手を引いて家まで帰っていった。
そうして、家に帰って、晩御飯を食べたり、お風呂に入ったり、ゲームをしたり、漫画を読んだり、弟をからかったりなどをぬーちゃんと共にした後、私達は眠りにつくためベッドの中にいた。
「今日は、早く寝られるなあ……」
私は、昨日に比べて平和に過ごすことのできた今日に感謝をしながら目を閉じる。
「ぬーちゃん……おやすみ……」
私は昨日と違い、床に敷かれた布団で眠るぬーちゃんにおやすみの挨拶をする。この布団は、ぬーちゃんが寝るためにおばあちゃんが用意してくれたものだ。
ぬーちゃんは最初、なにか仕掛けられていないか警戒していたが、何も無いのがわかるとすぐに布団に入っていた。
「おやすみ、月乃……」
ぬーちゃんからそう返ってきたのを聞いて、私は安心して意識を手放そうとする。微睡み、眠りそうになった頃、こんな声が聞こえた。
「ありがとう、月乃……今日は、楽しかった……なんだか、人間の仲間に入れたみたいで……また、明日からも……よかったら、仲良くしてほしい……」
ぬーちゃんはそう言うと、すぐに寝息を立ててしまった。
「こちらこそ、明日からもよろしくね……」
私もそう言うと、すぐに意識が遠のいていくのを感じる。
こうして私の、少し変わっているが平和な月曜日が終わっていったのだった。
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