第4話:家へ

 青年は数十回に渡る転生の末にようやく掴んだチャンスを離さまいとし、青年がずっと抱いていた疑問――裸の女性や墓場の水子など――を解消しようとした。


 赤子を捨てようとした彼女に連れられて、青年は彼女の「家」に到着した。しかし、それは家と呼ぶにはとてもみすぼらしかった。彼女は、解体で出たようなボロボロの木の廃材と布をうまく組み合わせたものを「家」と呼んでいた。


 その女性の家は、青年が見た中で最も栄えている街にあった。その街では、石畳の広い道路に南北に貫かれており、さらにその主要道から分岐した何本もの側道に覆われていた。建物は石で出来た土台に木を用いて造られていた。

 女性に連れられて青年が街の中心に近づくにつれて、側道は徐々に広くなっていき、またその表面も土から石畳へと変わっていった。そして整備された側道が増えていくにつれて、周りの建物は驚くべきことに――階層が増えるとか、豪華になるという意味ではなく、窓やドアが大きくなっていったのだ!

 女性の家は、人間が肩車しても余裕で入れるようなドアの建物が乱立しているような、街の中心に近いところにあった。そこにたどり着くまでに、少なくとも三本の側道を経由する必要があった。


 最も広い道からは見えなかったが、青年は同じようなを複数見た。そして、そのいずれも、青年が着いていった女性のように、裸の女性が住んでいるらしかった。


 家につくと、女性は青年に向かって

「いい? まもなく朝がくる。そしたら、日没まで決して声を上げてはいけないよ。それから、もしこの子が泣き声を上げたならば、この子は捨てて逃げなさい。わかった?」

といった。

 青年はその迫真ぶりに頷く他なかった。


 街は朝を迎えた。女性はどこかへ行ってしまった。

 青年は、しかし、その女性の忠告に逆らって、自身の興味に従うことにした。それは命は無限であるがゆえの冒険とも言えた。


 朝が来ると、街の端々から、様々な声が聞こえた。それは、しかも人間の声ではなく、ゲームのモンスターのような声であった。

 青年はこの声と女性の忠告に関連があると考えた。そこで、恐らく泣いてしまったら――というより、存在が知られてしまったらだろうか――何か恐ろしい事をされてしまうのだろうと推測した。

 そして、それを確かめるべく青年は賭けに出た。

 

 青年は女性の家から離れると、思いっきり泣いてみた。それは、半径五〇メートルにいるすべての生き物が知覚できるであろうくらいにはうるさかった。


 そうして泣いて、少し待っていると、側道から様々な異形のものが顔を見せた。それらは皆、目や口が不規則な場所に付いていて、体からトゲや腕が生えていた。どうやって動いているのか、疑問に思うようなものもいた。

 それらは皆、青年を見つけると、一斉に駆け寄り、そして少し青年の体を見た後、青年の四肢をもぎ始めた。当然、青年はあまりの痛さに泣き叫ぶ。すると、それに嬉しそうな様子を見せて、それらは、さらに青年のへそから下を削り取ったり、臓器を露わにしたりと青年を弄んだ。そうして青年が虫の息になったころ、それらは青年を使った遊戯に飽きて、どこかへ行ってしまった。

 青年は薄れていく意識の中で、女性の忠告の意味を噛み締めた。


 青年はこうして、また女神の顔を見ることになった。

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