あれ?もしかして、入れ替わってる?!×8
ちえ。
第1話
『『『『『『『『あれ?、もしかして』』』』』』』』
『『『『おれたち』』』』『『『『わたしたち』』』』
『『『『『『『『入れ替わってる?!!!!!』』』』』』』』
ある日、平和なある街で、その事故は起こった。
路線バスが急にスリップし、神社の脇の塀に衝突。幸い運転手、乗客合わせて八名は全員怪我も体調不良もなく健康体であった。
だが、その場は混乱の境地に陥っていた。
なんと、事故にあった全員の中身がランダムに入れ替わっていたのである。
「順番に事情確認をお願いします」
病院で全身の精査を終わらせた八人が一室に集った。
警察の調書の写しを手に、着古した白衣を姿で初老のドクターが話しかける。
「えーっと、まずは、”まき”さん」
『『『『はい』』』』
四人が手を挙げた。ドクターは驚きに目を見張る。
「あの、”まき”は苗字でしょうか、名前でしょうか?」
「ああ、苗字です。”まき みどり”さん」
『『はい』』
一人であるはずの”まき みどり”が二人ほど返事をする。二人は顔を見合わせてぺこぺこと頭を下げ合い、それからドクターに尋ねた。
「あの、おれは、中身が”まき みどり”なんですが」
「私は”まき みどり”さんの身体と入れ替わった”みなと”です。お呼びの”まき”さんは、元々のまきさんでしょうか、それとも今の身体の私のことでしょうか?」
「ああ、身体のほうでしたら、おれは”たくみ”さんだということでした」
ドクターは
「この情報は身体の名前なのか、中身の名前なのか、どっちだ?ああ、ここに”二十歳・女性”と書いてある。それに当てはまる方では?」
ドクターは二人に視線で尋ねた。だが、返ってきた返事はまた予想外だった。
「あの、おれは二十歳ですが、手術が終了して女性から男性に戸籍変更手続き中でして」
「私は二十歳の女性なのですが、見た目が女性に見えたかどうかは…よく中学生くらいの男の子に間違われて。性別答えた覚えがないんです」
「ええと、それでは、”まき”さんの身体と入れ替わった”みなと”さんの身体のかたは……」
「あの、その”みなと”は苗字で良かったんですよね?私の身体は”たいら みなと”さんと言われるそうで。中身の方は、”みさき まき”なのですが」
「あっ、ぼくは”みなと あやせ”さんの身体になった、”みどり たくみ”ですけど」
「私の身体は”みなと やえ”ちゃんだって。あやせちゃんの妹の」
「えーっと、”みどり”さんです、”まき”さんの身体に入ってる”みなと”の本当の姿は」
「………ちょっと待ってください。仕切りなおしましょう」
ドクターにはもう何がなんだかわからない。
うーん、うーんと眉間に十歳は老け込んだように
「そうだ、こうしましょう。一列に並んでもらって、右端から元の名前と、今の身体の名前を聞きます。それ以降は、皆、今の身体のお名前で呼びましょう。混乱しますから」
ドクターは時間をかけて、八人全てをメモに残した。だが、時間をかけて記録し終えたところで、状況はあまり変わらない。
「それでは、まきさん」
『『『『はい』』』』
入れ替わってしまった本人たちが、まだ新しい名前に慣れていないのだ。
とっぷりと日が暮れるまで、そんな会話が繰り返された。
だが、それなりに皆慣れてきたようだ。
ドクターは翌日に話を聞くことにして、その日は解散することにした。
次の日。
部屋に集まった八人は、ドクターの顔を見たとたんににこやかに言った。
『『『『『『『『もとに戻ったんです!!』』』』』』』』
何が起こったのかはわからないままだが、これ以上の面倒ごとにはならなくて済むようだ。
ドクターは、これでこの混乱したやりとりを終わらせることができるとほっと胸を撫でおろした。経緯の確認のためひとしきり話を聞こうと声を掛ける。
「それでは、”まき みどり”さん」
『『はい』』
ドクターはぎょっと目を見開いた。
手を挙げた二人は焦って頭を下げあう。
入れ替わった姿しか知らず、入れ替わった相手の名前で呼ばれることに慣れた八人は、元に戻ったことで再度、名前と姿の認識が混乱してしまっていたのだ。
昨日とは中身が違うのだから、誰が誰なのかわからない。
ドクターはこの件を手短に終わらせようと必死に調書をまとめ上げたが、何をどうしたってその内容は整然としなかった。
あれ?もしかして、入れ替わってる?!×8 ちえ。 @chiesabu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます