今日も私は自己嫌悪。

夏木

今日も私は自己嫌悪





 最初は、そんな事なかった。

 最近は、目が合うと困った様な顔をされて、そして私は……、勢いよく顔を逸らしてしまう。

 そんな事しちゃ駄目だって分かってるのに……。

 このままじゃ、きっと、困った顔すらなくなって、無視されるようになるんだろう。

 それが分かってるのに、私は、治せない。

 そうなったら、もう終わりだって分かってるのに。

 嫌われるのも嫌だけど、無視されるのも嫌。

 それなのに、私はどうして……、あんな態度を取ってしまうんだろう。

 きっと、勘違いされてる。

 私が、彼の事を嫌いだって。

 違うのに。むしろ……。


 考えただけで、赤くなりそうな顔を叩いて、気を紛らわせる。

 それから迷いに迷って、自販機で飲み物を二本買い、教室に戻る。

 扉の開く音に、俯いていた彼の顔がこちらへと向き、そして誰が入って来たか確認すると、また彼の視線は下へと戻った。


 ……嫌悪が浮かばなかった事を喜ぶべきか、それとも、なんの反応も無かった事を悲しむべきか。

 ……待ち人じゃなかったんだもの。

 おしゃべりする間柄でもないから、彼の反応は普通だわ。

 そう、普通よ。気にする事はないわ。

 ……たぶん。


 尻込みしそうな心を叱咤し、私は自分の席、彼の隣へと向かう。

 そして、持っていた缶ジュースを彼の机に置いた。


「……え?」


 こちらへと顔が向けられる。完全に戸惑った顔だ。


「上げる」

「え? なんで?」


 プレゼントです。


「知らない。これを買ったら何故かそれが出てきたの。私、それ飲まないから。だから上げる」


 ウソです。でも本当の事は言えません。素直に言えるような性格ならこんな苦労はしてません。

 でも、これで普段の態度の悪さは許してください!


「いや、悪いし」

「じゃあ捨てればっ!」


 返そうとしてきた彼に、思わず出たきつめの一言。


 終わった……。


 最早、帰宅という名の逃走しかない。


 彼の事が好き。


 なのに、真逆の態度を取ってしまう。

 こんな自分、嫌い。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

今日も私は自己嫌悪。 夏木 @blue_b_natuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ