ぐちゃぐちゃな愛
せにな
少年と少女
大雨でぐちゃぐちゃになってしまった道を1人の少女が俯いて歩く。
そんな少女に傘を持った1人の少年が近寄ってくる。
「おつかれさん」
「なんでここにいるの」
ギロっと少年を睨みつけて傘ごと自分から離そうと押し出す。
「せっかく迎えに来てやったのにそんな態度はないだろー?あと、涙で顔がぐちゃぐちゃになってるぞ?ちゃんと顔ふけって」
「ほら」と言いながらハンカチを少女の顔に押し付ける。
素直にハンカチを受け取った少女は顔に当てたまま口を開く。
「私、振られちゃった」
「そっか。告白して後悔してる?」
「……してる」
「振られたから?」
「違う。逃げ道がなくなっちゃったから」
少女の言葉を聞いた少年は優しく抱きよせる。
「最初から俺にしとけば後悔しなかったのにね」
少年の言葉を聞いた少女は首を横に振りながら押し出そうとする。
「もしそれができているのならそうしてる。でもできないじゃん!」
「なんで?」
「それは……」と少女は言葉を詰まらせてしまう。
何度か少年の目を見つめたあと、少女は言い淀んだ言葉を口にする。
「だってお兄ちゃんと私は家族、じゃん」
声がしぼみながらも最後まで言い切った少女はもう一度ハンカチで顔を隠してしまう。
「別に家族だっていいじゃん。お前のことを1番見てるのは俺だし、お前のことを1番好きなのも俺だよ。それに兄妹だから全ての相性もいい」
そう言った少年はもう一度少女を抱き寄せようと肩に腕を回す。
するとハンカチを顔に押えたままの少女が少年の胸に顔を埋めて、か細い声で言葉を言う。
「私たちがそういう関係になったら家族がぐちゃぐちゃになっちゃうじゃん」
「その時は俺がなんとかしてあげるから安心しろって」
「ほんとうに?」
「おう」
はっきりと返事をした少年の胸から顔を離した少女は「じゃあ証明して?」と言い目を閉じる。
大雨の中、少年と少女のぐちゃぐちゃな音が雨音を掻き乱した。
完
ぐちゃぐちゃな愛 せにな @senina
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