第3話 ご飯・・・うぅぅ


「おや、やっと起きたのかい。旅人さん。随分と疲れが溜まっていたようだね」


「え、あ~・・・おはようございます」


 部屋を出て階段を降りていくと、恰幅の良い女性が掃除をしていた。

 多分この宿屋の女将さんなのだろう。

 というか、自分は旅人設定にされているようだ。

 不審者扱いされなくてよかった。


「悪いけどあまりに遅いから朝食はなしだよ。どうしても食べたいって言うなら銅貨3枚になるけど、どうする?」


「そ、それじゃあ貰ってもいいですか?」


「まいど。なら先払いだ」


「は、はい。じゃあこれで」


 残念なことに銅貨は持ち合わせないため、俺は銀貨を一枚取り出した。

 だが、女将さんは渡された銀貨を手に難しい顔をした。


「ウチは両替屋じゃないんだ。もう少し小さい金はないのかい」


「すいません。生憎これしか持ち合わせが無くて」


「あれま、そうなのかい? う~ん仕方が無いねぇ。それなら元々支払っていた宿代を一日分返すから、そこから支払ってもらえないかい? そうじゃないとウチが困っちまうよ」


「元々支払っている?」


「前払いで10日分払っていただろ? 1日分返して9日間の宿泊にするから、返した金で払っておくれよ」


「ああ、まぁ、はい、じゃあそれで」


 いつのまに10日間も契約していたのかと言う疑問が残るが、多分あの女神様? が先んじて手を打ってくれていたのだろう。

 俺が旅人と女将さんが認識しているように。


 それから一日分の宿泊料金(半銀貨2枚と銅貨5枚)を受け取り、そこから食事代として銅貨を3枚支払った。

 よくよく思うのだが、食事代が銅貨3枚って日本円で換算すると300円だよね。

 すげ~安いと思うよ。


「はい、お待ち」


「・・・どうも」


 ただし出された食事が微妙としか言えないから納得の値段とも言える。


 異世界でありがちな固そうな黒パンに厚めに切られチーズ、なんか野菜だか豆だかがドロドロになるまで煮込まれたシチュ~? 的なスープを出された。

 量はあるのだが、味が微妙。

 ぶっちゃけ好んで食べたいとは思えない料理であった。


「・・・自炊を視野に入れた方がいいかも」


 ぼそりと呟きながらやはり科学の発展していない時代になど来るものではなかったと、物凄く後悔するのだった。



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