第2話 眩しすぎる……!
予想外の出来事で頭がおかしくなりかけた俺は、何とか心を落ち着かせてクラスの男子と仲良くなることを試みた。
結果は――成功。
外見がマシになったおかげか、反応は結構よかったと思う。
多分、入学初日なので皆友達を作りたいと思っていたのだろう。
これがもし1カ月後とかだったら、いきなり何?って感じで警戒されてもおかしくない。
俺は春休みの期間、高校デビューのための準備を色々してきたが、コミュ力を改善するのが一番難しかった。というか、ほとんど出来ていない。
なので、自分から人に話しかけて仲良くなれたことはかなり嬉しいし、少し自信もついた。
一応、オタクの友達と話す時に練習はしたんだよ?相手の目を見て話すだとか、出来るだけ聞き手に回るだとか。
だが、あくまでそれらは基礎中の基礎。俺的には、自分から人に話しかける積極性こそが、俺達陰キャと陽キャのコミュ力の一番の差なんだと思う。
やはり、実際に色々な人とたくさん話すのが一番の上達方法なのだろう。陽キャってすげー……
校長先生の有難いお話(笑)をBGM感覚で聞き流しているうちに、いつの間にか入学式は終わっていた。
多分定番の新入生代表の話とかもあったのだろうが、ボーっとしててまったく覚えていない。
午前中の授業では各教科のガイダンスが行われた。
真のリア充は学業を疎かにしない、なんて変なことを思い込みながら話を聞くが……
(集中できねえ)
もちろん原因は俺の隣の席に座っている奴だ。いや、気にしすぎな俺が悪いんだろうけど。
チラッと隣を見やると、彼女は先生の話を真面目に聞いている。なんか、陽キャギャルっぽい見た目とのギャップが凄いな。確かコイツ、中学の頃はかなり頭良かったっけ?
視線を前に戻し、先生の話に意識を戻す。
現在は数学のガイダンスが行われている。
数学は高校に入ると急に難しくなると親がよく言っていた記憶がある。注意深く聞いておくか。
えっと、最初は文字と式……中学の内容の発展的な感じか。
「?」
ふと、隣から視線を感じる。
俺の席は廊下側の一番前なので、隣の席に該当する人間は一人しかいないのだが……
(流石に気のせいか)
さっきは真面目に話を聞いていたし、俺が自意識過剰なだけだろう。
「……」
……やっぱ見られてね?
一応……一応確認しておこう。集中できないからな。
チラッと横目で隣を見やると、案の定目が合う。
「!」
目が合ってすぐに、ソイツはわざとらしくプイッと目を逸らした。
どうやら、集中できていないのは俺だけじゃないらしい。
これ以上意識するのも馬鹿らしくなった俺は、再び先生の話に耳を傾けるのだった。
※
キーンコーンカーンコーンとお馴染みのチャイムが鳴る。
やけに長く感じた午前中の授業がやっと終わった。
「藍沢!一緒に食堂行かねえか?」
そう俺を誘ってきたのは
コイツの特徴はなんといっても――超イケメン。
正直、最初に見た時は男の俺でも思わず見惚れてしまった。
程よい長さの黒髪に、大きくキリッとした目。
見た感じ背も180㎝近くありそうだし、スタイルもいい。
そんなぶっ壊れスペックを持っているのにも関わらず、フレンドリーでコミュ力も高い。一度話しただけなのに、コイツが一番話しやすいのがすぐに分かるくらいには。
まさに、俺の目標とする真のリア充像そのもの。陰ながら勝手に師匠と呼ぶか迷ったレベル。
そんな奴に飯に誘ってもらえるなんて光栄だし、正直嬉しいに決まってる。本来なら断る理由なんかあるはずがないのだが……
「スマン、今日はちょっとやらなきゃいけないことがあるんだ」
尚早と、今日は先約がある。俺は基本的に先に約束した方を優先するのだ。
「そうか……」
おい、そんな残念そうな顔すんな。それをやっていいのは美少女だけだぞ。
ヤバい、めっちゃ罪悪感湧いてきた……
「代わりと言ってはなんだが、明日は一緒に行かないか?」
そう言うと早瀬はニカッと笑みを浮かべる。やめろ、その笑顔は俺には眩しすぎる……!
「おう! もちろんだ!」
屈託のない純粋な笑みを浮かべてそういう早瀬。オタク趣味で腐りに腐った俺には間違いなく浮かべられない笑顔だ。
早瀬と別れ、屋上に向かう。
ふと、今日はもともと学食に行くつもりだったので弁当を持ってきていないことに気づく。
(まぁ、ちょっとくらい遅れても大丈夫か)
急遽パンを買うために購買の方へとルート変更。
上る予定だった階段を逆に降りていくと購買が見えてくるが……
「混みすぎだろ……」
購買の前は人でごった返していた。朝の通勤ラッシュか何かかな?
恐らく大半が一年生だろう。初日は食堂か購買で昼を済ませたいのは皆同じようだ。
パンの残量を見る限り、並んでもギリギリ買えるかどうか……
それに、あまり遅れすぎるのも申し訳ないし。
(今日の昼は断食でーす)
仕方なく昼食は諦め、Uターンして降りてきた階段を上る。
はぁ、もし話が終わって時間が余ったらまた来よう。
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