四日目:タコ焼き×とりゅふちょこれーと
「今日は、早番の人がいたんですよ。絵の下に他の絵があるみたいだから、上の絵の具を削ってみようって言って」
いつの間にか、頼んでもいないたこ焼きが目の前にあった。
ホカホカと湯気を立てるたこ焼きの上で、何かが躍っている。熱にもがき、ウネウネと蠢くそれを見つめながら、青のりを振りかけた。さらにマヨネーズをたっぷりかければ、目障りなソレは見えなくなった。
「ちゃんと巡回もしましたよ。ウサギは出ませんでした。絵画も移動してませんでした」
「絵が見つかったから、白ウサギちゃんも重たい絵画を運ぶ必要がなくなったのね」
マヨネーズの上からソースをかける。お皿いっぱいに広がったソースが、マヨネーズと混ざり合いながらテーブルの上にあふれ出る。
「それにしても、早番の彼はどうやって壁の中の絵を取り出したのかしらね?」
「壁にも異常はありませんでした」
空になったソースの容器を捨てる。ついでにわずかに残っていたマヨネーズもかけ、ソースの容器と同じように放り投げた。
「不思議ね。まあ、それは良いわ。絵の具の下からは何が出てきたの?」
「白ウサギが出てきました」
「やっぱり。それで、白ウサギはどんな顔をしていたの? 呪いの絵画なんだから、普通の顔じゃなかったのよね」
そう、普通の顔ではなかった。普通ではない顔だった。
「ビーズの目は人間の目玉だったり?」
「人間の目玉でした」
「バッテンの口は大きく裂けていたり?」
「耳まで裂けていました」
「開いた口には鋭い歯があったり?」
「先が鋭く尖った歯がありました」
「耳は千切れていた?」
「千切れていました」
割り箸でたこ焼きを割る。
ふっくらとした皮が破け、中から赤黒い何かがこぼれ出てきた。表面にプツプツとついた丸いものは、ビーズだった。白ウサギの目にはまっていたものと、同じだった。
「白ウサギは、とても恐ろしい顔をしていたのね。一度見たら、一瞬にして気絶してしまうほど」
そうだ、見たら気絶をしてしまうような顔だった。
なら、気絶をしなければならない。
だってあの顔は、気絶するほど恐ろしかったから。
「四日間のバイトお疲れ様。たくさん話せてとても面白かったわ」
薄れゆく意識の中で、男性の声だけがはっきりと聞こえた。
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