第4話 日本山陸大気庁職員
当時、確かに日本全土からいくつもの不可解な報告がなされていました。
一番多かったのは、火山の爆発を知らせるものです。
山から大量の煙が立ち上っていた。森が突然光って爆発した。
本来なら地脈など存在しようがない場所からも報告が上がってきました。
ほかにも山を水平に走る嵐のようなものを見たとか、スギとおぼしき巨木が空中を浮遊していったとか……。
もちろん報告にあった場所の調査は続行しましたが、当時は台湾有事勃発の直後という事もあり、「弾道ミサイルは侵入してたのか?」 「日本海はどうなっている?」 「中国の戦艦が迫っているという情報は本当か?」と。
当時の日本はそんな調子でしたね。
確かに奇妙な事態をつなげて考えれば……「謎の火山爆発」や「謎の嵐」が人工林に集中していたこともわかったでしょう……。
今からすれば、私達は危機に気づけなかった人間として責められるべきかも知れません。
もしも私達に想像力があれば、迫る脅威に気づけたかも知れません。
でも、本当に予測なんてできたと思いますか?
あの日まで、誰もヤツを知らなかった。
いいですか、あの日が来るまで、人間っていうのは、賢い、途方もなく賢いだけの、ただの動物に過ぎなかったんですよ!
あんなものがいるだなんて……誰も想像していなかった……。
嵐も、火山の噴火や爆発も、それはみな自然現象です……天災なんですよ。
その天災が、たった一人の人間の女の子によって引き起こされていただなんて、一体どれだけ奇想天外な妄想を働かせれば気づけたっていうんです。
私達は、SF作家でも漫画家でもない。
だからあの日が来て……町一つが壊滅して……それでようやく気づくのが精一杯だったんです。
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