第5話、不死者の起源(中)

 俺は今、高天原たかまがはらと呼ばれるらしい神域しんいきへと足を運んでいた。天照大御神と呼ばれている神に会う為に謁見えっけんを申し込もうと思った……のだが。

「えっと、この状況じょうきょうは一体?」

だまれ!貴様、何処に所属しょぞくする神だ‼」

 俺は現在、神殿の近衛このえを務めると思われる下級神数名にやりを突き付けられていた。

 どうやら警戒けいかいされているようだ。下級神は俺に対する敵意てきいで満ちていた。だが、果たしてこの状況じょうきょうをどうしたものか?まあ、この程度の下級神なら何とか出来るだろうけどな。

 とはいえ、それはあくまで最終手段。そのような手荒な真似まねは出来る限りしたくはないのも本心ほんしんだ。さて、どうしたものか?

 そう考えていると、神殿の中から一柱の女神めがみが現れた。太陽たいようの如き輝きをその身に纏った女神。恐らく太陽を神格化した神霊かみなのだろう。

 彼女はきょとんとした視線しせんで俺達を見ている。

「えっと、この状況は一体なんですか?」

「おおっ、俺と同じセリフだ‼」

「天照様、少しばかりおちを。今すぐにこの不届きな侵入者しんにゅうしゃを排除しますので」

 ……いやちょっと待て。主神あるじの問いに答えず独断行動するのは流石に下級神としてまずくないか?ほら、其処の女神もあきれて溜息を吐いているぞ?いやまあ、俺が原因の話ではあるのだが。

 ほら、とにかく其処な下級神どもはさっさと槍を退けて。さあ、謝って!俺に対する不敬を誤って!

 ……あ、ごめんなさい。少し調子にりました、はい。

 なんだろう、この女神さん。口元を引きらせているような気がする。

 ……結局、その後は天照さんが間に入る事によって何とか騒動そうどうは終結した。とはいえその後それ以上の騒動が起こった訳だが。

 と、いうのも……

「えっと、どうしてこうなった?」

「さ、さあ?どうしてでしょうね……はぁっ」

 俺と天照さんの声が、騒動の中でひびく。うん、どうしてこうなった?

 というのも、現在天照大御神の神殿の中では酒宴しゅえんが開かれていたからだ。俺が元の世界から持ち込んださけがどうやらこの世界の神々の口に合ったらしく、そのままの勢いで宴会えんかいに発展したという訳である。

 天照さんが、そっと溜息を吐いたのも分かる気がする。うん、これはひどい。

「えっと、ところで貴方はだれですか?何処どこの神です?あまり見かけない顔ですが」

「……ああ、俺の名はアシハラ。異世界から来た神だよ。一応は創造神そうぞうしんに当たる」

「は、はぁ。その異世界の創造神が一体この高天原へ何の用です?」

「いや、特に用事ようじはない。強いて言えばひまつぶしだ」

「……………………」

 流石に、天照さんはいているようだった。それもそうか、俺は手元の酒を一息に煽った。うん、美味うまい。

 ……と、その時。俺がマイカに渡した水晶すいしょうの玉を介して俺に緊急信号が来た。

 あの水晶は俺の神力しんりきを宿したお守りだ。持ち主の身に危機が近付いた時、俺にその危機をしらせる力を宿している。

「……天照さん、少し此処をはなれさせてもらう」

「……分かっております。あの子をよろしくおねがいします」

 どうやら、天照さんも理解していたらしい。流石はあの巫女みこの主神だ。

 そのまま、俺はその場から消えるようにった。

 あの神域の森、其処に異常なけがれが出現した。どうやら魔物まものが出現したらしい。

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