第4話、不死者の起源(上)

「……ひま

 まだ、世界が神代と呼ばれていた頃。神国しんこくの王にして主神である俺ははっきり言って退屈たいくつしていた。暇で暇で死にそうだ。

「はぁ、そう言われましても…………」

 若い神官は苦笑くしょうする。

 いやまあ、この世界を創造そうぞうしてから既に幾星霜。世界は安定期に入り俺が神としてやるべき事は既にやり尽くした。後は世界の、人類ヒトの行く末を見守る事だけしかやる事がないのである。

 それが、はっきり言って退屈なのだ。退屈は神を殺す何よりの凶器きょうきなのだ。

「…………駄目だめだ、本当に暇すぎて死ぬ」

 どうしたものかと考えるアシハラ。死因が退屈など、正直ごめんだった。洒落にならないにも程がある。

 しかし、だとすればどうするべきか……

「……そうだ、たびに出よう」

「は?何言ってんだ、この馬鹿神ばかがみは?」

 ……いや、この神官不敬すぎやしないだろうか?ぶっちゃけ主神あるじに対する態度でも顔でもないだろう。え、なら今の馬鹿な発言を撤回てっかいしろだって?ははっ、そのたのみは聞けないね!

 俺は気にしない。え、少しは気にしろだって?それもいやだね(笑)

 そうして、俺はそのまま異世界へのもんを開いた。異世界へぶ直前、神官が青筋を額に浮かべているのが見えた。あ~ばよってね!

 ……そして、俺の目の前には深い森が広がっていた。

「ふむ、随分ずいぶんと神気と霊気に満ちた森だな。聖地せいちか何かか?」

 その森は神聖しんせいな空気に満ちており、一目で聖地か霊場の類だと理解出来る。さしずめ此処は神霊しんれいの聖地といった場所か。

 そう察した瞬間、背後の木陰こかげからがさっと音がした。振り返ると、其処には一人の少女が立っている。少女と目が合った。

 ……瞬間、俺の脳内で衝撃しょうげきが走り抜けた。

 からすの濡れ羽のような黒髪に同色の瞳。ほっそりとした華奢きゃしゃな身体。まだ幼さの残る小顔と巫女みこを思わせる服装。はっきり言ってドストライクだった。生涯で初めてといえる衝撃だった。

 ちなみに俺は純白しろの髪に赤い瞳、長身の引きまったボディに純白の衣服を着ているナイスガイだ。うん、自分で言っててむなしくなってきた。

「あの、どちらさまでしょうか?」

 はっ⁉思わず見惚みほれていた。

「あ、ああっ……俺の名はアシハラ。此処とは違う世界せかいの主神をしている。君の名は何と言う?」

「えっと、私はマイカと言います。この神域しんいきの管理を任された一族の巫女みこです」

「……そうか、此処は神域なのか?」

「はい、この森は我らが主神しゅしんである天照大御神のおさめる神域で神々の霊地です」

「……そうか、この国のは何と言う?」

「えっと、葦原中津国あしはらなかつくにと言います」

「なるほど、ありがとう。この国を治める主神には挨拶あいさつに向かうとするよ」

 そう言って、俺はマイカと名乗る巫女に水晶すいしょうの玉をわたした。

「……えっと、これは?」

「色々と教えてくれた礼だ。おまもりだとでも思ってくれ」

「あ、はい……」

 そう言って、俺はその場を去った。向かうはこの神域を治める主神のもと

 天照大御神の住まう神殿しんでんだ。

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