第6話、不死者の起源(下)

「はっ……はっ……!」

 何でこんな事に。私は現在、神域の森の中で妖魔ようまに追われていた。妖魔とは悪霊の一種であり、怨霊おんりょうの集合体だ。私を追っている妖魔は不定形の黒いけものの姿をしており身体の至る所から巨大な口を開いている。

 巨大な口から覗くきばが、私をらいたいと言っているように感じる。それが、私の恐怖心をあおってくる。

「だ、誰か……誰か、助け…………っ」

 瞬間、私は足をもつれさせて無様にころんだ。そんな私に飛び掛かる妖魔。

 ぎゅっと目をつむった、その直後……

「させるかっ‼」

 グギャッ‼短い悲鳴がひびき、どぐしゃあっと、派手はでな音が響いた。恐る恐る目を開くと、其処にはつい先程森の中央広場で出会であった神様が立っていた。彼は、私に晴れ渡るような笑顔を向けた。

 まるで、私が無事で良かったとでも言うかのように。

「よう、奇遇きぐうだな。怪我はないか?」

「っ‼」

 気付きづけば、私は神様の胸元に飛び込んでいた。正直の所、自分自身でも不敬ふけいだとは思うけど。我ながら自分をおさえる事が出来なかった。

 口から嗚咽がれる。声が震えるのが自分自身理解出来る。

こわかった……怖かった、よお……っ」

「……………………」

 そんな私を、神様は……アシハラ様は優しく背中をでてくれる。

 その優しさが、私にとってとてもあたたかくて。私は余計にけてきた。

 ……しばらく泣いた後、私は神様の胸元で泣いたのがずかしくていそいそとアシハラ様から身をはなした。そんな私を、アシハラ様は何かを考え込むかのように真剣に見ている。何を考えているのだろうか?そう考えていると。

「マイカ、君さえ良ければ俺と生涯をともにしないか?」

「……えっと、それは?」

 えっと、聞き間違いでしょうか?アシハラ様からとても衝撃的な言葉を聞いた気がします。

 しかし、そんな私にアシハラ様はまるで気にした様子ようすもなく。いえ、アシハラ様もかなり気恥きはずかしのかそっぽを向きながら私に再びそれを言いました。

「マイカさえ良ければ、俺と生涯をともにして欲しい。つまりだ、俺と結婚けっこんして欲しいんだよ」

「…………っ⁉」

 今、恐らく私の顔は真っ赤になっている事でしょう。私は自分の顔があつくなっているのを感じます。

 ですが、相手は神様。たせてはいけません。

「……私で、本当によろしいのでしょうか?私のようなもので」

「君だからいんだ。君が良い」

「っ‼」

「私はマイカの事が大好だいすきだ。どうか、私と結婚して欲しい」

「……私も、私もアシハラ様の事をおしたいしております。どうぞ、よろしくお願いいたします」

 こうして、私はアシハラという異世界の神様とむすばれました。

 少しだけ以外いがいに思われるかもしれませんが、私はアシハラ様の事を最初に見た時からおしたいしておりました。とても素敵な殿方とのがただと、そう感じておりました。

 けど、相手は神様。そんな考えを持つのは不敬だと自身をいさめていたのです。

 ですが、そんなアシハラ様から直接大好きと言っていただけました。私は天にも昇る気持ちでした。

 それから半年後の事、私はアシハラ様との御子みこを宿しました……

 その御子に、私達はミズホと名付なづけました。

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