第3話 グリムとペロー
「そもそもこの二人は、まったく別の国、別の時代の人たちなのだ!」
掃除にて綺麗にされた黒板を、蘭華さんは容赦なく白線で二分した。
人の心とか無いんですか?その黒板、ピッカピカでしたよ、さっきまで。
どうにも、ブーメランは知らないふりをしたらしい。左右対称の美しい笑みで、彼女は黒板の右側に『Charles Perrault』左側に『Brüder Grimm』と綴った。
迷いなく人物名を書く様子からは、とてもじゃないが、英単語の綴りが覚えられないせいで補習授業をさせられた人間には見えない。
「さて、玲奈。私はなんと書いたでしょう?」
「シャルル…ぺらうと?……ブルダー?グリム??」
「実はこの綴りで、右側がシャルル・ペロー。左側がブラザー、グリム。グリム兄弟となるのだ!」
流石になんとなく予想はついてたので得意げな顔やめてください。腹が立つ。
「ペローはフランス。グリム兄弟はドイツでそれぞれ活躍した!そのため綴りをフランス語とドイツ語で揃えている!」
「英単語は綴れないくせに」
「今ボソっとなんか言ったな!」
言ってませんとも。
蘭華さんはそれぞれの名前の下に『1628/1/12〜1703/5/16』『19世紀』と流れるように、迷いなく書いた。
そんなに鮮明に覚えてるのに、なんで歴史の成績あれほど悪いんだよ。
「ちなみに活動時期も違って、ペローが17世紀後半を生きたのに対して、グリム兄弟は19世紀を生きた人たちだ。」
え、待ってよそれって。
「グリム兄弟が、パクリということ……?」
「ふっふっふ、話しは最後まで聞きたまえ」
はいはい、わかってますよ。
「まず、大前提としてあるのは、彼らは民間伝承を
「オリジナルでは無いんだ。」
「そう、アンデルセンはオリジナルなんだが……ペローもグリム兄弟も、伝承を基礎として多少の改変を加え、まとめ上げたとされている。」
カッ、カカッ、カツッ。
チョークが踊るように滑り、名前の下に様々な情報が付け足されていった。
『Charles Perrault』
・法律家
・フランス地方を中心とした民話
・洗練されている
『Brüder Grimm』
・言語学者
・大ドイツ圏の民話
・ダークな面アリ
「シャルル・ペローが作品を発表をしたのはサロン……展覧会。当時の社交界だ。彼は教訓を上手い具合に混ぜ合わせ、美しい文にまとめあげた。」
「それはわかるけど…グリム童話のダークな面って?」
ダークな童話とは、いったい……?
「グリム兄弟の方はね……たとえば、
「あぁ、シンデ、レ…ラ?え?」
「まぁ、その話しはまた今度してあげよう」
蘭華さんはニッコニコだが、それはサイコパスとかではなく、物語について話したくて仕方ないからであってほしいものだ。
怖すぎる。
シンデレラって、童話のはずだよね?
「ではでは!赤ずきんについての解説を始めよう‼︎」
蘭華さん⁉︎それは乙女ゲーの原案じゃありません‼︎ 夏 雪花 @Natsu_Setsuna
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