猫を殺した男

悪魔界にも近代化の波が押し寄せて来たらしい。

 恨み屋はけっこう前から携帯電話もスマホも使いこなしてはいた。


 もうネットのサイトからのメール依頼も下火になってきた。恨み屋は長年連れ添ったサイトに「トゥイッター始めました。気軽にフォローお願いします」というメッセージとアカウント名を記しておいた。一応、鍵アカウントにしてはいるが、なるべくフォロー返しはするつもりだ。


 アカウントを作って数日後、猫アイコンからフォロー申請が来た。フォロワーは三人目、ちなみに一人目と二人目は過去の依頼者だ。まあ元気にはやっているようだった。

 新規の依頼者の猫アイコンとDMを何回かやり取りし、実際に会ってみることになった。


 そいつは猫の餌に毒を混ぜ殺した男が許せないらしい。

 早速、一緒に罰を与えに行くことにした。

「猫ちゃんに酷いことした罰よ!」

 こんなに積極的に殺しにかかる依頼者も珍しかった。

「良かったな。これでアンタの猫もちっとは報われたと思うぜ」

「え? 私の?」

「アンタの飼い猫もこいつに殺されたんだよな?」

「何言ってるの? 私は猫飼ってないわよ。そもそも私の住んでるマンション、ペット禁止だし」

「え……。じゃあ、アンタが見せてくれた猫の写真は?」

「あの子は私がフォローしてる人の家の子よ。こんな奴に殺されて、こいつがロクな罰も受けずにのうのうと生きてるから私が代わりに罰を与えたの」

「……そうか。分かった」

 つまり、こいつは自分が飼っているでもない猫の敵を殺した訳か。

 動物愛護も行き過ぎるとな……。

「ねえ、次はこいつを殺しに行きましょう!」

「え……?」


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