特定をした男

今回は特定班による誤情報により人生を壊された人からの依頼だった。

「よう、呼んだか?」

「お前がうらみ屋か?」

「ああ」

「もう俺の人生めちゃくちゃだ! 怖くて外も歩けない! どうにかしてくれ」

「どうにかって、俺は復讐してやるだけだ。現状をどうにかは出来ないぜ」

「だったら俺を特定した奴らを懲らしめてくれ」

「分かった」



「YouTuberベルフェの特定班をぶっ潰せ!」

 ベルフェはフードを深く被り、黒いマスクをした姿で、カメラの前に座った。

「やあ、皆さん、初めまして。ベルフェって言います。ま、さっき言った通り、早速、アホな特定班かぶれを成敗していきましょうかね」

 ベルフェは横に置いたパソコンのキーボードを叩く。

「まずはこいつ! 愛知県にお住まいの伊藤! 勝手に特定した気になって正義の味方面して楽しかったか?」

 画面に伊藤の個人情報が映る。

「次は大分県の斎藤!」

 目線をカメラに向け、視聴者に呼びかける。

「真実を確かめようとせず拡散したお前らも同罪だからな!」


「で、今、俺は何処にいるでしょうか?」

 カメラが回り、手足を縛られ、口にガムテープを貼られた男が映る。

「正解はっ、宮城県の青山の自宅より生中継中だ!」

 ベルフェはカメラを持ち、青山の方に詰め寄る。

「よお、人の人生壊しておいて、気楽なもんだな」

「う~、う~」

「過度な善意は悪意にもなるんだよ、覚えておけ」

「う~、う~」

「じゃあ、BANされるかもしれんが、チャンネル登録と、いいねよろしくな!」


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