第6話

      電車の窓から見える街

ゆっくりと動き出した電車の中で

滑る様に流れる街並みに私は別れを告げる

あの人と過ごした4年半

乗り慣れた電車と

見慣れたこの街とも今日でもう終わり

「さよなら」

あの人に伝えてから

無機質の街を離れる覚悟はできていた

独りを選んだ私には

2人で作った記念日が溢れるこの街に居るのは

辛すぎる…

太陽の光のシャワーが肌を焦がす位暑い夏も

ちらつく雪に白い吐息が洩れる寒い冬も

あの人と一緒だったから

ちっとも不愉快に感じた事はなかった

胸がときめいて、嬉しさだけを感じてた

喧嘩して泣き明かした夜も

いつの間にか仲直りして

また隣にあの人が居て

並んで共に歩くのが当たり前だと信じてたんだけど

当たり前が多くなり過ぎて

今度はお互いを傷付けるようになった

あの人を傷付けてしまう自分が許せなくて

私はとうとう離れる言葉を口にした

ただ頷いて、その場を後にするあの人の

背中が遠くなっていくのを見つめて

心に風が吹き

切なさで、その場にしゃがんで泣いたんだ

人目も気にせず、声を上げて泣いたんだ

別れを告げたあの日から

私は引っ越す準備に追われ

あの人を思い出すのを止める努力をした

携帯番号も変えて 

この場に思い出すべて置いていき

もう二度乗る事のない最後の電車に乗り込んだ

まくらぎごとに揺られる電車から

戻らない街を目に焼き付けながら

これが最後だからと言い聞かせ

あの人との思い出に想いをはせる

その間も電車はゆっくりと

そして確実に私を街から離してゆく

私が愛したあの人が暮らす街

ありがとう

そして

さよなら

二度と戻らないと決めた想いの詰まった見慣れた街

この電車の窓から見える街が好きだった



           秘め事

『好きな人ができたら教え合おうね』

って約束した親友のあの娘から

「先輩から告白されて付き合う事になったよ」

登校途中に耳打ちされた

恥ずかしそうに約束を守ってくれた

あの娘の横顔がまともに見れなくて

「良かったね」

の一言が言えず、黙ったまま俯くしかできなかった

だって放課後

「あたし、先輩の事好きなんだ」

って言おうと思ってたんだもん

それなのに

二人が付き合うなんて

しかも先輩から告白するとは考えてもいなかった

あたしが最初に先輩と仲良くなって

あの娘を『親友なんだよ』って紹介したのに

あたし達並んで話してたのに

先輩はずっとあの娘だけ見てたんだね

好きになったのはあたしの方が早いのになぁ…

神様、酷いよ告白する前から失恋決定なんて

あんまりだ

せめて先輩に気持ちを伝える機会をくれても

良かったじゃない

ホントは好きになるのに

遅いも早いも関係ないこと位分かってる

でも

今は、今だけは

神様に愚痴らせてよ

嫉妬する醜いあたしを許してよ

うわべだけの言葉じゃなくて、心から

「良かったね」って喜んで言える様に

少し時間がかかるけど

必ず立ち直って、言うからね

それまで、二人とも待ってて

あたし、絶対先輩よりもいい男の子見つけてみせる

その時こそ、ちゃんと教えるから協力してよ

上手くいったらみんなでWデートしようよ

だから

今は、泣いても良いよね?

涙が枯れるまで泣いたら

心もスッキリするはず

また誰かを好きになれるはず

一緒に帰る先輩とあの娘の後ろ姿を

教室で見送りながら

「次はもっと良い恋しよう!」

あたしは心の中で呟いた

















































































































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