第3話 帰還

それから、少しの時間が経った。

目覚めて、1週間ほどで僕の声は元に戻った。

それからは、リハビリが始まった。

ふた月がさらに経ち、僕はやっと退院の日になった。

結局、僕は年末年始を病院で過ごした。

もう三学期も終盤になってしまっている。

「「おにぃ、迎えに来たよ」」と雫と奏の声が病室へと入って来た。

「おう、ありがとう。二人共」

僕は、荷物をまとめ病室を出ていく。

「お世話になりました」

僕は、部屋に僕はお礼を言って出て行った。

病室を出ると奏・・・青みがかった茶髪を後ろ手に結んだ長髪でアップにしていても背中の真ん中位まであり、雫と同じ150cmの身長だ。

その髪が、規則正しく左右に揺れている。

「退院手続きは、ママが済ましてくれてるから車にいこ」

そう、僕の後ろから声をかけてきたのは雫だった。

ちなみに、奏が姉で、雫が妹だ。

僕にしてみれば、二人共可愛い妹だけど。

「それは助かるよ、退院手続きなんて何していいかわかんないから」

「あはは、まあわたしもわかんないけど」

奏は歩く速度を落とし、僕の速度に合わせるように左側へとくる。

雫は、僕の気持ち右後ろをついて歩いていた。


長い廊下を抜けてやっと病院の外に出ることができた。

「さむっ」

「あはは、そっかおにぃずっと病室に引きこもってたたから」

「雫、引きこもりはないだろう」

「ごめんなさ~い」

もうすぐ、2月も終わる。

とりあえず、今回の件で僕が進級できないということはないようだ。

事件は、学校のグラウンドで起きていたこともあり報道にもなった。

犯人たちは、みな捕まっている。

今回は、あまりにも残忍なことから厳罰は免れない。

まして、一人の選手生命すら絶ったのだから。

もう、僕は空手の選手としては致命的だ。

靭帯は、断裂まではいかなくとも伸び、その後廃用症候群となったことでリハビリにとても時間がかかった。

日常生活には支障はないが、運動はまだ当分できないだろう。

あと半年の部活もさすがにこのまま引退するしかなかった。

「とりあえずは、終業式くらいは出れそうかなぁ」

「おにぃと学校行けないの寂しいよ、あたし」

雫は、歩く速さを変えて僕の右側へと並んだ。

「わたしも寂しい」

「はいはい、二人ともありがとう。

あ~、でも心配だな。二人だけで学校行かせるの」

「「もう、おにぃったら」」

僕に残っているのは、この可愛い妹たちだけだ。

なにもかもがする抜けていく。

僕は、これから何をしていこう。

何ができるんだろう。

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