ぬいぐるみ事件

無頼 チャイ

おっきなぬいぐるみ。

 でっかい新人が入って来た。ふっくらした偉そうなやつだ。

 挨拶もしないのでぶっ飛ばしてやったら、動かなくなった。オイラは心配になってそいつの周りをキョロキョロしてみるが、動く様子がない。だから、ご主人の側によって助けを求めるが、肝心のご主人はマヌケ顔を浮かべるだけで役に立たない。

 だから大変なんだよ! 新人が動かないんだ!


 必死に吠えると、ようやくご主人が得心いったそうで、例の新人のところにやってきた。

 ご主人は新人を起こすと、太い腕をひょいと持ち上げて、何故か、後ろに回った。


「ボク、クマゴロウだよ。仲良くしてね」


 ご主人はオイラをバカにしてるのだろうか?

 イラッとしたので手を噛みつくと、ご主人がイテッ! と言って手を離す。


 もういい、根比べだ!


 試しにそいつ威嚇してみたり、パンチをしてみる。何故かフニャっと足が沈み込む。それでいて気持ちいい。よく分からないがそれが楽しくて、今度は両の前足で押し込む。

 反発されるが、それもまた楽しくて何度も押し込んだ。

 新人は忍耐強いやつみたいで、微動だにしない。


 オイラは、少しだけこいつが気に入った。


 仕方ない、少し住処の案内でもしてやろう。そう思って背中を鼻先で押してやるが、やはりピクリとも動かない。先輩が案内してやるって言ってるのになんだその態度!


 流石に頭きた、だから思いきし腕を噛み付いて、ブンブンブンブン、ブンブンブンブン振り回してやる。

と、何やら白い何かが出てくる。


 何だこれ? 舐めても美味しくないな。なぁ新人、これ……。


あ、ご主人! 助けて!!


□■□■□


「全く、UFOキャッチャーで取ったばかりのぬいぐるみをめちゃくちゃにするなよな。縫うなんてやったことないから更にめちゃくちゃになったろう」


 そういって、ペットの柴犬を見つめた。


「でも、お前が気に入ってくれたならいっか」


 そこには、クマのぬいぐるみに寄り添って寝る柴犬がいた。

 

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