第21話 決闘拒否

「決闘、拒否します!」


 フウカのまさかの返事にローゼスは返す言葉がなかった。

 隣にいたギャンズもまた、まさかの返事に硬直する。


「……え?」

「で、ですので……帰って……ください!」

「いやいやいやいや! おかしいですわよ! 普通のるんじゃないですの!?」

「私は……そういうの好きじゃない……です」


 意外な返事にローゼスはどうすれば良いのか分からなかった。

 隣のギャンズが耳元で囁く。


「お嬢様、帰りましょう。相手に無理させてまでの決闘は宜しくありません」

「そうね……って! このまま帰るの!? あんなさっっみぃ中歩いたのに?!」

「まぁ言うじゃないですか。骨折り損のくたびれもうけって」

「……なんか納得いかないけど」


 ローゼスは納得いかぬまま、城を後にする。


「本当に、ごめんなさい」


 ローゼスの後ろ姿を見て、フウカは頭を深々と下げた。



 ローゼス達は城下町に着くと、人々は皆ざわついていた。

 何やらいつもとは違う大事が発生しているとローゼス達は察知する。


「ギャンズ、なんかおかしいですわね」

「なにかあったんですかね」


 すると、向こうから何やら野蛮な格好をした集団が、堂々と町の人々を威嚇しながらやってきた。

 その集団の真ん中にはやや小柄な少女が派手なコートに海賊帽子を被り、カットラスを右手に、リボルバーの銃を左手に持って道を闊歩している。


「おらおらァ! ローゼスの野郎はどこだァ! 海賊令嬢のあたしと決闘しろぉ!」


 海賊令嬢のマフィ・カイジャーであった。

 ローゼスはあまりにも野蛮な彼女達に唖然とした。


「あれも……令嬢?」

「らしい……ですね……」


 ナタクが解説に入る。


「あの旗は……アルビダリアンの王女兼カイジャー海賊団の船長のマフィ・カイジャーだ。あの国は確か、海賊行為が合法とされている国でな。治安は最悪だと聞いている。だがなぜこんな北国に奴らが」


 すると、海賊の下っ端の1人がローゼス達に気づき、彼女達に近づいてきた。


「船長! ローゼスを見つけましたぜえ!」


 ローゼスは嫌な予感がし始めた。

 するとマフィがローゼスの所へ近づき、彼女にカットラスを突きつける。


「てめぇだな! あたしと決闘をしな!」


 ローゼスは訳が分からなかった。

 だが、相手は海賊であり王女、先程拒否されたのだ。適当に1人倒すのも悪くは無い気がする。とはいえ、ローゼスはこんな野蛮な奴を倒す気にはならなかった。

 彼女のプライド的な面が、こんな野蛮な奴は勝手に死んでいればいい、私にとって彼女は倒しがいが無いと言っているのだ。

 ローゼスは好きな奴を殺し、好きな奴を生かすのだから。


「残念ですが、貴方のような蛮族と、やり合う気は毛頭ありませんの。では、私は帰りますわ」


 すると、マフィは上空に発砲した。

 周りの人々から驚きの声が漏れる。


「おい野郎ども」


 マフィがそう言うと、彼女の下っ端達が町の人々に銃や剣を突きつけ始めた。


「どっかのお姫様がよぉ……決闘を拒否したから……他国の国民が死にました……さぁーてどっちが悪だ?」

「貴様ら……何をしている! これは、立派な虐殺行為になりかねないぞ」

「そう言うなよナタクさんよぉ……あたしらは海賊なんだぜ? 海賊が命奪って何が悪ぃんだ?」


 ナタクは何も言い返せなかった。


「お嬢様、私が出ましょうか」

「ギャンズ、大丈夫ですわ。ここで戦闘は私たちに不必要ですわ。とはいえ……まずいわね」

「なぁーに簡単な事だよ、ローゼス。あんたがあたしと決闘すりゃいい」


 海賊に怯える町の人々、中には子供もいる。

 ローゼスはプライドを守るか、あの命を生かすか、選択を迫られていた。

 緊迫した空気が張りつめる中、突如路地裏からフードを被った何かが現れ、マフィの目の前に立ち塞がる。


「あぁ?」


 その瞬間。

 パァン!

 マフィの頬にビリビリとした痛みが走った。誰かが、彼女にビンタしたのだ。

 あまりにも突然の出来事で周りにいた町の人々や海賊は唖然とし、ビンタのによる音の余韻がマカクラに響いた。


「いっ……誰だテメェ!」


 マフィが銃口を突きつけると、その人物はフードを取り、オドオドとした目でマフィを見ていた。


「てめぇは……」

「ひ、人質は……よ……良くない……です」


 フウカ・ユキタニであった。

 町の人々はざわめき、海賊達もまさかの登場に唖然とするが、依然町の人々に武器を突きつけている。


「おいおい、これはあたしとローゼスの問題だ、てめぇは帰りな」

「で、でも。私の国民を……人質にするのは……やめなさい!」


 やめなさいと同時にフウカの右ストレートがマフィの顔面に打ち込まれる。


「「「「「船長ぉ!!」」」」」


 吹き飛ばされたマフィに海賊達が集まる。


「てめぇ……王女をぶん殴ってただですむと思ってんのかぁ!? ああん!?」

「すすすす、すみません! いやあのその、ととと止めるなら、こうなのかなぁと」

「あーあったまきた! おいてめぇ!」

「は、はい?」

「決闘しろ」

「……え?」

「聞こえねぇか? 決闘しろつってんだよ。わかんだろ」


 フウカは周りを見回すと、国民はなんとかして欲しいと言う視線でいっぱいだった。

 彼女は、唾を飲み込み答えた。


「決闘、やります」


 To Be Continued

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