第20話 人見知りなお嬢様
「「「ええええええええええええええええええ!?!?!?!?」」」
3人の驚きの声が洞窟内に響き渡る。
洞窟がミシミシと鳴った気がするが、3人は無かった事にした。
「まぁ驚かれるのも無理は無いでしょう。お嬢様、フードをおとりください」
ヒラタがそう言うとフウカは恥ずかしいのか、フードをより深く被ってしまう。
「お嬢様、今目の前にいらっしゃるのはローズダムの女王、ローゼス・グフタス様と、シェンシェーの女帝、ナタク・タオリン様ですよ? フウカお嬢様もマカクラの王女であるならば、もっとシャキッとしてください」
「……あ、あの……そ」
「恥ずかしがる事などありませんよ」
「あっいや……その」
しり込みしてなかなか話さないフウカにナタクが痺れを切らし始める。
「さっさと話さんか」
「ひいぃい!」
フウカは余計隅に逃げてしまった。
「ちょっとナタク! 強く言い過ぎでわよ! こういう子にはもっと優しく言うべきですわ! 大丈夫ですわよ、私たちは怖くありませんからね〜」
ローゼスがフウカに近寄り、優しく頭をなでなでしようとするが、フウカは怖くて体が硬直していた。
「お嬢様、それストレスで固まってますよ」
「うぇっ!?」
そんな事をしていると、いつの間にか吹雪が止んでいた。
「ちょうど良い。マカクラの城に案内しましょう。フウカお嬢様、行きますよ」
ヒラタはフウカを連れて、3人と共に城へと向かった。
城に行く道中も、フウカが3人に話す事はなかった。
「ヒラタ・マツナガと言いましたわね」
「ええ、なんでしょうかローゼス様」
「どうして、彼女はこんなみすぼらしい格好をしているの? 王女ならもっとこう……胸張って良いですわ!」
と言いながらそんなにない胸をローゼスは反らした。
「昔から自然がお好きなようで、よく城を抜け出しちゃうんですよね。まぁ大抵においで追いつけるのですが、最近はにおいも消すようになってきて……」
「あら可愛い」
ローゼスがそう言うと、フウカはちょっとだけ彼女と距離を詰めた。
ナタクが近づこうとすると、やっぱりフウカは離れた。
そんな感じで、5人は城に着いた。
城は氷のように透明で雪山の斜面に建てられている。
途中町内を通ったが、国民は皆三角耳が生えていて、3人は風変わりな光景に少し驚く。
「着きました、ここが城です」
ヒラタがそう言うと、城の入口が開いた。
城内も広く、目の前に階段があり、それぞれT字型にわかれている。
そして突き当たりにはガラスで作られたようなステンドグラスの絵があった。
城に着くや否や、フウカはそそくさとどこかに消えてしまった。
「フウカお嬢様……全く」
「どうかしましたの?」
「お嬢様はすぐ部屋に閉じこもる癖みたいなのがありまして……引きこもりなのか、外が好きなのか……」
「変わった子ね」
すると、奥から氷色のドレスを着た、長身の白髪ロングヘアの女性が階段をおりてやってきた。
「皆様、ようこそマカクラヘ」
その女性は美しく、まるで絵画から飛び出てきたような美しさだった。ローゼスたちへの挨拶の声も耳に優しく、癒されるような声である。
「私は、マカクラの元王女のミカサ・ユキタニと申します。私は既に王女の地位を退位しておりますので、決闘の方は娘のフウカに……」
「ミカサ様、お嬢様とは既に会っております」
「あら、そうなのね。ヒラタ、フウカはどこに?」
「今……部屋に」
「また……困ったわねぇ。少しお待ちを」
その時、フウカの閉じこもった部屋から彼女が現れた。
その姿は、母親譲りの美しさで、ショートヘアの白髪と蒼き瞳は光り輝き、まるで人形かと思うような凛とした顔立ち。
「フウカ、お客様よ、ちゃんと挨拶しなさい」
ミカサがそう言うと、フウカは顔を赤らめて目をバッシャバッシャと泳がせながら。
「よ、よろれ……よろぶァ! す!」
「ちゃんと挨拶くらいしろ娘」
「ナタクさん! 怖い!」
ギャンズは意外とツッコミの技術がある。
そしてフウカはナタクの怖い目付きに怯え、耳を伏せて、ミカサの後ろに隠れてしまう。
「ほら、王女なら。もっとシャキッとしなさい」
「で、でもなんかあの人目付き怖い……」
「なんだと」
「ヒィイイイイイイ」
怯えて余計ミカサの脚にしがみつくフウカに、ローゼスが何とか仲介にはいる。
「大丈夫ですわよ、決闘をしたいの私。殺戮令嬢のローゼス・グフタスですわ。御安心なさい」
「あ……あの」
「どうかしましたの?」
フウカは勇気を出して、ミカサの脚から離れると、ローゼスに頭を下げた。
「決闘、拒否します!」
その頃、マカクラ国内サミイナ海域付近の村には、とある船が一隻止まっていた。
その船は船首にドクロの彫刻が取り付けられ、旗にもデカデカとドクロが描かれている。
そして、その船の甲板にはコートを羽織りながらも、荒々しい顔つきの者共が村の人々を震撼させていた。
それも無理はない。なぜなら彼らは海賊だから。
「船長ぉ! ここがマカクラですぜ!」
「おう!」
海賊の男が船長にそう言うと、船から飛び降りる女がいた。
その女は他の海賊の船員とは違う派手なコートを身にまとい、肩からかけたホルダーに銃が3丁、腰に巻いたベルトにカットラスを2本携えていた。
体格はやや小さいが、大きな海賊帽と伸ばした金髪が目を引く。
そのヤンチャな顔つきの女は、腰からカットラスをひとつ引き抜いて、空へ掲げる。
「おうおう! マカクラの野郎共! 耳の穴かっぽじってよく聞け! あたしは海賊国家、アルビダリアンの王女にして、カイジャー海賊団船長、海賊令嬢のマフィ・カイジャー様だァ! ここに殺戮令嬢がいると聞いたァ! さっさとその女を出しやがれぇ!」
海賊令嬢、マフィ・カイジャーがマカクラへ侵略を開始したのだった。
To Be Continued
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