第18話 神龍の脅威
決闘の約束から2日後。
ついにその日を迎えたローゼスは落ち着いていた。
もう既に3度目になる決闘。しかし、まだ勝利は1度のみ。
ローゼスはやや自分の弱さを感じていた。
殺戮令嬢は母親から貰った肩書きであり、自分はまだ母親に追いつけていない。
彼女は、自分はもっと強くならなければ、この肩書きを誇りにすることが出来ない。
そう考えていた。
「お嬢様、準備は出来ましたか」
ギャンズが荷物をまとめ終え、部屋のドアを開け、ローゼスに呼びかける。
「……ええ」
2人は闘技場にやってきた。
正方形の舞台の真ん中にナタクは仁王立ちしていた。
「来たか。覚悟は出来ているな」
「ええ、もちろんですわ」
ローゼスとナタクは対峙し、それぞれ武器を構える。
ローゼスはローゼンクロイツを鞭状態に、ナタクは神龍槍を取り出す。
そして、2人は同時にあの言葉を言った
「「美しき決闘を行う」」
ナタクは先手必勝と言わんばかりに神龍槍をローゼスに向けて伸ばした。
ローゼスもまた、ローゼンクロイツを伸ばし、互いの先端が弾かれる。
双方攻撃の威力が強いために腕が持っていかれそうになるが、そう簡単に隙を作る2人ではない。
再び攻撃に入る2人は、ほとんど互角の攻撃だった。
互いの武器がしなり、ぶつかり、弾かれる。
「拉致があかん……」
ナタクは神龍槍を元の長さに戻し、ローゼンクロイツの連撃を避け、ローゼスの腹に正拳突を放つ。
その衝撃はローゼスを貫通し、嗚咽する。
続け様にナタクは左足を軸に、右足の回し蹴りをローゼスの顔に放つ。
そしてそのまま勢いを利用し、右足と左足の軸を変え、左足でローゼスの鳩尾に強力な蹴りを放った。
ローゼスは衝撃で倒れ、少しの間息が出来なくなった。
「どうだ、五星拳の威力は」
ローゼスは口から胃酸を吐き、咳き込む。
ナタクはさらに神龍槍を伸ばし、ローゼスの右腕に巻き付けそのまま地面に叩きつける。
舞台はひび割れ、ローゼスも倒れたままだ。
ナタクは神龍槍を離し、彼女の元へ近づく。
「……もう負けか」
ナタクが彼女の胸元に付いていた、思想薔薇を見ると、その薔薇の花びらは、まだ散っていなかった。
「まだやる気か、こいつ」
ローゼスほすぐさまローゼンクロイツを剣状態に変え、ナタクの顔に向けて突く。
それをナタクはギリギリで避け、間合いをとる。
ローゼスは起き上がりすぐ様間合いを詰め、ナタクに連続して切りかかる。
ナタクは神龍槍で防ぐも、彼女の怒涛の攻撃ほ止まらない。
神龍槍とローゼンクロイツが火花を散らし、激しい攻撃が繰り広げられる。
そしてナタクはローゼンクロイツの鋭い棘に刺さり、皮膚から血が流れ出る。
「小賢しい!」
ナタクは神龍槍でローゼスの腹を突く。
それをローゼスはギリギリ避けるも、脇腹のかすれ、そこからじわじわと血がにじみ出る。
「まだ諦めぬか!」
ナタクは左足でローゼスの脇腹の傷に強力な一撃を放つ。
ローゼスの我慢していた脇腹の痛みが爆発するように広がり、彼女は歯を食いしばった。
さらにナタクはローゼスの顔面に掌底を放ち、仰け反った彼女に神龍槍で袈裟斬りにする。
ローゼスはそのまま地面に倒れた。
だが、彼女は。
また立ち上がる。
「諦めの悪い女だ……」
ナタクは神龍槍を構えた。
そしてローゼスも、ローゼンクロイツを構える。
「トドメだ……ローゼス!」
ナタクとローゼスは一気に間合いを詰め、2人は同時に攻撃をした。
しばらくの静寂は、シェンシェーの従者達や、ギャンズの緊張を最高頂にする。
そして。
ナタクの腹から、血が吹き出した。
花弁の散った思想薔薇と2つに折れた神龍槍と共に。
「言いましたよ。私は、諦めが悪いと」
ナタクは腹部を抑えたまま、倒れた。
ナタク・タオリン対ローゼス・グフタス。
勝者、ローゼス・グフタス。
ローゼス・グフタス2勝目。
翌日、ギャンズは、出発の支度をしていた。
「もう行くのか」
ナタクが部屋に入り、出発の支度をするギャンズをじっと見ている。
「……なんですか」
「いやなんでもない、今のうちに見納めておこうと」
「見納め……?」
ローゼスは薔薇茶を飲み優雅に休んでいた。
「ええ、私は。まだまだ強くならなくてはならない。あの傷すら、付けられないほどに」
ローゼスは包帯で覆われた脇腹を撫でながらそう言った。
「そうか」
ナタクは部屋を去ろうとした時ふとある事を考えた。
「ひとつ頼みがある……」
同時刻。雪山アサマサ。
標高2556メートルのこの山は常に雪で覆われ、一面白銀の世界となっている。
そんな中、1匹の白兎か雪原をはね回っていた。
それを狙う様に狼は虎視眈々と、遠くから白兎を見ていた。
そして、うさぎが狼の攻撃範囲に来た瞬間。狼は白兎に襲いかかった。
その刹那。
狼は謎の光線を全身に受ける。そして空中で氷漬けにされ、そのまま身動きが取れなくなった。
白兎が驚き、気配するの方向を見ると、そこには毛皮のフードを着た少女の姿があった。
そのフードから見える瞳は氷の結晶の様に透き通り、可憐な物だった。
「……駄目だよ」
少女はそう言うと。森の中へと消えていった。
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