第14話 負けず嫌いな王女様

「……あんたいつの間に」


 スミカは唖然としていると、キノルは袖から弾丸を取りだし、弾を銃に込める。


「距離2500フィート 角度35度」


 そして再びキノルはマスケット銃の引き金を引く。

 弾丸はセイレイオーの顔に当たる。

 しかし、全く傷つくことは無い。


「そんなちゃちい弾でセイレイオー倒せると思っとんのかこのたこぉ!」


 セイレイオーは右ストレートをキノルに放つ。

 岩山は粉々に砕け散る。

 だが、キノルの姿は無かった。


「どこにおんねん」


 セイレイオーが周りを探すもキノルは見つからない。

 すると、射撃音が鳴り響き、その方向へ振り向くと、セイレイオーの右膝が爆発した。

 セイレイオーはひざまづき、弾丸の飛んできた方向を見るが、そこにキノルの姿は無い。


「あんにゃろう……どこ行きよったんや!」


 セイレイオーが胸の獅子の口からセイレイバスターを取り出して、どこから弾が来るのか警戒する。

 すると、今度は地面が爆発し、砂がズブズブと沈んでいく。

 セイレイオーは沈んでいき、蟻地獄に落ちた蟻の如く、砂に吸い込まれていく。


「野郎っ……こそこそとぉ……」


 セイレイオーは合体を解き、スミカは鷲の精霊に乗る。

 上空からキノルの姿を探すが、広い砂漠だと言うのに中々見つからず、スミカは焦りを感じ始める。


「奴は……」


 その刹那、発砲音が聞こえ、その方向へ振り向くと、スミカの右肩は撃ち抜かれた。

 スミカはその激痛に膝を着く。

 血がダラダラと流れ、精霊も操る体力が失われ、消えかかり始めた。

 だが、彼女の薔薇はまだ散らない。


「……負けたら……あかん……」




 〜ここで少し過去の話を〜


 スミカ・サバナ、15歳。


 彼女に身内は居なかった。

 そもそも砂漠の国デザーツは、国家としてはまだ未発達な部分が多く、他国に比べ低い立場にある。

 そんな国にスミカは捨て子として生まれていた。

 彼女は1人だった。

 何も無い砂漠でただ1人、彼女は生きなければならなかった。

 そんな時、スミカはとある盗人に拾われた。

 彼らは、決して弱い者から物を盗む事はなかった。

 スミカにとって、盗人は恩人であり、家族の様な存在であった。


「なぁ兄貴!」

「あ? なんや」

「あたしも、いつか兄貴みたいになれんのか?」

「さぁな、そないこたァ知らんな」


 そんな2人の日々は、長く続く事は無かった。

 ある日、盗人は天人に撃たれた。

 ここらを牛耳っているという天人の財産をごっそり狙おうとしたが、スミカのミスでバレてしまい、盗人は蜂の巣にされてしまった。

 なんとか盗人は体力を振り絞り、脱出したものの、身体中から流れる血は止まらない。


「兄貴! 兄貴!」

「スミカ……逃げろ」

「嫌や! そんなん……」

「良いんだ……年貢の納め時や……」

「でも……」

「はよ行け……あんたは……負けんなや……」


 スミカは走った。

 そして決意した。

 もう何者にも負けないと、何がなんでも勝ってやると…………。

 全ての頂点に立つと。



 〜時を戻し、現在〜


「やられて……たまるかぁ!!!」


 スミカはサメの精霊にサーフィンのように乗り、急なUターンと共に砂の大津波を発生させる。

 すると、背後からキノルが現れる。


「馬鹿が」

「阿呆はそっちの方やで」


 その刹那、キノルの背後から大きな衝撃が走る。

 それは、獅子の精霊だった。

 獅子の精霊がキノルをはじき飛ばしたのだ。

 キノルは岩山にぶつかり、その場に倒れてしまう。


「あんた、魔法で自分をワープさせてたんやろ」


 そう、キノルの手は至って単純な物で、ただ自分を転送する魔術を用いて、狙撃地点を変えていたのだ。

 ただ単純な手ではあるが、彼女の戦い方には適している。


「バレたところで、お前のでかい的は変わらん!」


 キノルは魔法陣から巨大な大筒を2本を取りだし、合体させて巨大なキャノン砲にした。

 そして、小さな岩山を支えにし、セイレイオーに向けて引き金を引く。


「発射あ!」


 大きな轟音と共にキノルも後ろに吹き飛ぶ。

 セイレイオーの身体に大爆発が起きた。

 周りの砂が吹き荒れ、直後の様子は見えなかった。


「……やったか?」


 砂埃が晴れるとそこに居たのは。


「ちゃちぃ花火やのお……」


 無傷のセイレイオーだった。


「嘘……」

「花火っちゅうのはなぁ…………」


 セイレイオーの胸の獅子の顔の口が光り輝く。

 キノルは何が来るのか察し、すぐに魔法陣を展開し避難しようとする。

 しかし、それを逃すスミカではなかった。


「おい何逃げようとしてんねん、今からワイが本当の花火見せようっちゅうんに」


 セイレイオーはキノルをキノルを鷲掴みにし、胸の獅子の顔の真ん前にキノルを近づける。


「や、やめて……」

「セイレイ砲! ファイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」


 獅子の口から巨大な光線が放たれた。



 -キノル・ロビンフン対スミカ・サバナ-


 勝者、スミカサバナ。



 キノルは全身黒焦げになり気絶していた。

 薔薇も散ってはいるものの黒ずみになっていた。


「けっ、ひきょい手なんか使いおって、何が狙撃令嬢や」


 キノルの鳩は彼女を心配して翼をパタパタとして仰いでいる。


「オジョウサマァ!?シヌナァ!チキンハイッショォツイテイクヨォ!!」

「あんた、チキンって名前なんか」

「チキンダヨォ!」


 すると、ギャンズと松葉杖を使ってゆっくりと歩くローゼスの姿があった。


「お疲れ様です。スミカ様」

「なんやなんや、わざわざこうへんでも良かったんやで?」

「まぁ、お嬢様がわざわざ出たいと……」

「サバナ・スミカ。私は、いつでもいKいっ……」


 ローゼスは見栄を張ろうとして脇腹の傷が開いたらしく、痛みが走る。


「お嬢様、傷がまだ癒えてないんですから……」

「まっ、あんたとは最後にやり合おうや。それまで、負けんなや」


 ローゼスはスミカの言葉にこう返した。


「言われなくとも」


 その時、突如2人の間に割り込んで来た者がいた。顔を布で隠していて、細身の男が。

 黒子の様なその姿よりも目をひくのは、耳だった。その耳は、鋭く尖っていたのだ。


「エルフやと……なんの用や」

「私、東の武の国、シェンエーの使いであります。ローゼス・グフタス様。貴方様には、我が国の女帝ナタク・タオリン様と決闘をして頂きます」


 To Be Continued

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