第13話 狙撃と精霊巨神

「合体完了! 精霊巨神セイレイオー!」


 突如出現した、胸に獅子の顔を持つ巨大ロボット、セイレイオーの前にローゼスは唖然としてしまう。


「……とんだ、余興ね」

「見せたるでぇ。セイレイオーの力をなぁ!」


 スミカがそう言うと、セイレイオーは両腕を突き出す。


「セイレイチェストォ!」


 すると、両腕が外れて断面からロケット噴射し、ローゼス目掛けて飛んでいく。

 ローゼスはローゼンクロイツを鞭状態にし、セイレイチェストの弾道を外し、二つの拳は砂漠に衝突し、大きな轟音と共に砂が飛び散る。

 その衝撃は、遠くで見ていたギャンズとスミカの側近にも及んだ。

 ギャンズは衝撃によって起きた砂嵐に思わず目を守ってしまう。


「ぬわっ……あんな……力を」

「あれでも、まだ本気では無いですよ」

「えっ?」


 セイレイオーはセイレイチェストを両腕に戻し、胸の獅子の口から、ある物を取り出した。

 それは、巨大な剣だった。

 セイレイオーの2倍はあろうその巨大な剣の刀身は赤く光り輝く。

 セイレイオーはそれを構えた。


「セイレイバスター!」


 セイレイオーはセイレイバスターを振り上げ、ローゼスに向けて切りかかる。

 その巨体から放たれる剣撃がどんな威力なのか、ローゼスでなくともそれは容易である。

 セイレイオーがセイレイバスターを振り下ろす。

 ローゼスはなんとか避けられたものの、セイレイバスターの強力な一撃はデザーツ中に轟音を響かせ、その衝撃は周りの岩山を粉砕していく。

 ローゼスも直撃は避けたものの、その衝撃を至近距離で受けた為、紙吹雪の如く舞い上がり、岩山に激突する。

 背中に衝撃が走り、肺が押しつぶされ、空気が一気に抜ける。


「直撃はせんかったか……やけどこのセイレイオーにかかりゃあ、王国なんてひとひねりやで。はよお降参すんのが身のためやで!」


 セイレイオーの中で、操縦をするスミカがそう言うと、ローゼスは立ち上がり、ローゼンクロイツを剣状態に変える。


「降参? そんなのは、私の辞書にありませんわ」


 ローゼスは飛び上がり、セイレイオーの顔面にローゼンクロイツを突き刺そうとした瞬間。


 銃声が1つ鳴り響く。


 その銃声と共に、ローゼスは羽をもがれた天使のように、地面に落ちる。


「なんや!?」


 ローゼスは脇腹を抑える。

 どうやら脇腹を撃たれたらしく、彼女の脇腹.からは、赤く血が滲み出ている。


「おい誰やうちらの決闘にちゃちゃ入れよったんは!」


 セイレイオーもとい、スミカは周りを見回すと、少し遠くに、1人の女が立っていた。

 茶色いドレスを身にまとい、長い唾の帽子を被り、両手で持つのは長身のマスケット銃。

 そして背中には大きなリュックサックと特徴的なのは、肩に止まった鳩。


「私はキノル・トリプト。ロンビンフンの女王だ。済まないな、狩りをしていたら誤射してしまったらしい」

「ゴシャシチャッター!」


 肩に乗った鳩が高い声で鳴く。


「そんなんで済むんやったら、警察や騎士団は要らんで」

「まあ良い。決闘はいずれにしろ中止だろう?」


 スミカはセイレイオーを合体解除し、キノルに近づく。


「あんた、わざとやろ」

「……証拠はあるか?」

「その態度でようわかるわ」

「デザーツの女王はあまりにも頭が弱い様で、証拠とは物的なものでなければいけないのですよ?」

「現に撃っとるやろが」

「あくまで私は誤射ですよ。誤射。ほら、東の国ではこんなことわざがあるようですよ。『弘法も筆の誤り』、どんな達人でも、失敗はするのです」


 スミカは舌打ちをして、キノルから離れる。

 それを脇目にギャンズはローゼスの元に駆け寄り、怪我を診る。

 弾丸はまだ彼女の腹の中に埋まっている。

 

「……ギャンズ」

「喋らないでください。傷が広がります」


 すぐ様デザーツの救護班が現れ、担架の上に乗せられたローゼスはすぐに運ばれた。


「……うちの決闘相手。怪我しよったんやが、どうケジメつけるんや」

「そうですね。前座として、あなたとやりましょうか」

「望む所や」


 こうして、ローゼスとスミカの決闘は中断、スミカとキノルの決闘が執り行われる事になった。


 数分後。

 2人は準備を済ませると、互いに間合いを取り、決闘にすぐに入れる様に体勢を整える。

 キノルの肩に止まっていた鳩は看護を済ませたギャンズの肩に乗っている。


「なんで僕に……」

「オメェフンイキニテルッ!オモシロォ!」

「タメ口……なんですね」


 スミカは三体の精霊を出現させる。

 キノルは肩に担いだマスケット銃を両手に携える。


「ほな、始めようか」

「ああ」


「「美しき決闘を行う」」


 スミカは即座に精霊三体を合体させ、セイレイオーに乗り込む。


「5秒で消したる!」


 そしてセイレイオーの胸元の獅子の口から極太のビーム光線を放つ。

 ビーム砲は地面をえぐり、周りに砂埃を撒き散らす。


「どうや、これでおしまいや」


 しかし、そこにキノルの姿は無かった。

 スミカがふと不思議に思うと、突如背後から発砲の音がなり、セイレイオーの背中に弾丸が当たる。

 セイレイオーが後ろを振り向くと、そこには岩山の上に立つ、キノルの姿があった。


「あまりにも雑すぎる」


 To Be Continued

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