第12話 合・体

 決闘当日。


 デザーツ第3地区。

 デザーツはその広い土地故に、無人の土地は地区ごとに分かれている。

 その数は9つあり、第1、第2地区は人が住んでおり、ほとんどの住民はここにいる。

 そして、第3地区はデザーツの中でも比較的、岩山が多く、砂丘の間から所々岩が突出している。

 そんな第3地区に、ローゼスとスミカは間合いを持って対峙していた。

 ギャンズとスミカの側近の男は、遠くの岩山の上で見守っている。


「ほな、やりましょか。殺戮令嬢」

「ええ、始めましょう」


 ローゼスはローゼンクロイツを鞭状態にし、構える。

 それに対し、スミカはただ仁王立ちしていた。


「「美しき決闘を行う」」


 その刹那、ローゼスは一気に間合いを詰め、ローゼスクロイツを振り上げた。

 すると、スミカの足元から何かが現れ、その衝撃でローゼスは吹き飛ばされた。


「何事?!」


 現れたのは、なんと獅子だった。

 だが、本来生息している獅子の大きさとは思え無い程大きく、その結晶を繋ぎ合わせて作り出された様な姿であり、ただの生物では無い事は確かな事だ。


「それは……精霊!?」

「そうや、わいは精霊令嬢のスミカ・サバナ様や! その頭によう刻み込んどきぃ!」


 精霊。

 この世界の万物には、必ず精霊が存在する。

 その物の概念が大きければ大きい程、その力は強くなる。

 だが、精霊を操ると言うのは、その概念その物を操ると言うのと変わらぬことであり、それを使いこなすには、長時間の鍛錬を要する。

 まさに高等技術なのである。


「いくでぇレオ! わいらの力。見せたるでぇ!」


 レオと呼ばれた獅子の精霊は太陽が照りつける空に雄叫びをあげ、ローゼスに襲いかかる。

 獅子の精霊は右前脚の強烈なパンチをローゼスに放つ。

 それをローゼスは咄嗟に避け、獅子の精霊の右前脚は砂漠の砂をまい散らせる。

 先程まで、平坦であった砂の地面に大きな凹みが現れた。

 ローゼスはローゼンクロイツを振るい、獅子の精霊の左前脚に叩きつける。

 ダメージはそれなりに入ったものの、獅子の精霊の怒りを買っただけに過ぎなかった。

 すると、獅子の精霊はローゼスに向けて口を開ける。

 ローゼスは何をするのかと少し動きを止める。

 その後、獅子の精霊の口から、何かが光だした瞬間、ローゼスは何かを感じ、咄嗟に避けた。

 獅子の精霊の口から極太の光線が放たれた。

 光線は射線上の砂を吹き飛ばし、岩を跡形もなく消し飛ばした。

 ローゼスは数秒動きが恐れければ、あの光線の餌食になっていると考えると、背筋が凍った。

 だが、それも一興だと考える。


「ほお……ライガー・キャノンを避けるとはなぁ……流石やな。ほな、もう1つ」


 スミカがそう言うと、ローゼスの足元が突如砂地獄のように滑っていく。

 ローゼスはなんとかローゼンクロイツを伸ばし、岩にまきつけ、それに寄りかかるも、広がっていく砂地獄に岩も飲み込まれかけていた。

 そして、その砂地獄の中心には、鋭い牙を生やした、凶暴なサメの精霊の姿があった。


「シャーク! その調子で殺戮令嬢はんをやったれ!」


 ローゼスはローゼンクロイツで引き上がろうとするも、砂地獄は広がり、岩も崩れていってしまい、そのままローゼスは滑り落ちてしまう。

 だが、それでくたばる彼女では無かった。

 ローゼスはローゼンクロイツを剣状態にし、サメの口の中に突入する。

 サメは当然のように、口を閉じ、そのまま沈みこむ。


「なんや、案外あっさりやな」


 スミカはあまりにも早い決着に拍子抜けしてしまった。

 その時、地面から、何かが噴出する。


 それは、サメの精霊の頭だった。

 そして同時に、ローゼスはローゼンクロイツを片手に飛び出した。

 どうやら、サメの精霊を体内から切り裂いたらしい。


「ほう、なかなかやるやん。でも後ろ、気いつけや」


 ローゼスは空中で後ろを振り向くと、そこには、巨大な鷲の精霊が翼を広げ、今にもローゼスをその脚で掴もうとしていた。

 ローゼスはなんとか避けるも、鳥の精霊は旋回し、砂の地面に足を取られたローゼスに鋭い爪で攻撃する。

 ローゼスの肩に鋭い爪が刺さり、肩から血が流れる。


「いったれ、イーグル!」


 だが、そう簡単にくたばる彼女では無かった。



 ローゼスは肩の血など気にせず、ローゼンクロイツを鞭状態に変え、イーグルと呼ばれた鷲の精霊の翼に巻き付ける。

 そして彼女はそのままローゼンクロイツを引っ張り、そのまま鷲の精霊を岩山に叩きつけた。

 岩山は砕け散り、周りに砂埃が舞う。


「……三体ともやりおったか」


 ローゼスは息があれ、スミカに剣状態のローゼンクロイツを突きつける。


「さぁ、次はどんな精霊を使いまして」

「生憎、イーグルで最後や。けどな、ワイにはもう1つ、最終手段がある」

「是非、見せて貰いたいものね」


 ローゼスは一気に間合いを詰め、ローゼンクロイツを振り下ろす。

 スミカはそれを避け、岩山の上に飛び乗り。


「行くで! セイ! レイ! オォォォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」


 スミカの叫びと共に指を鳴らすと、三体の精霊が砂漠から現れる。

 獅子の精霊が胴体に、鮫の精霊が二つに分離し、獅子の精霊と合体し、頭が九十度曲がり、足となる。

 その後、鷲の精霊が獅子の精霊の上に乗り、足を獅子の精霊と合体させる。

 そして、鷲の精霊の口が開くと、そこには人型の顔があった。

 口は無いものの、ツインアイが緑に光り輝き、獅子の両肩から鷲の精霊の足が飛び出す。

 そして、足の裏から手と思われる物が出現し、スミカは獅子の口に入る。


「合体完了! 精霊巨神セイレイオー!」


 獅子の顔を胸に持つ巨大なロボットであった。


 To Be Continued

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る