第10話 砂漠の国
タランとの戦いから、1ヶ月後。
ギャンズとローゼスの2人は、砂漠をさ迷っていた。
容赦なく照りつける太陽が、2人の水分をみるみると奪っていく。
一応水は多く持ってきたつもりだった。
しかし、砂漠は予想以上に広かった。
「クソあちぃですわぁ〜〜!!!!!!」
ローゼスの叫びが砂漠に響き渡った。
何故こんな所に居るのか、それを説明するには、2週間前に遡る。
「ギャンズ、旅に出ますわよ」
突然ローゼスはこんな事を言った。
いつものように薔薇茶を注いでいたギャンズは驚いていつもより多めに薔薇茶を注いでしまう。
「お、お嬢様突然ですね」
「このEBRの期間は1年ですもの、とっとと他国の令嬢を潰して1番になるのが効率的ですし、 私も旅行したいですわ」
「旅行目的の方が強そうですね。ザクロスさんもy」
「大丈夫よ、ザクロスは着いてこなくて。ギャンズ、あなたと私2人で行きましょう」
「でも一応お嬢様は17歳ですし私も若いですからやっぱり来た方が」
「いいから」
「それでも」
「いいから!」
という訳で、ローゼスの傷が癒えた今、2人は西の方にある砂漠の国『デザーツ』に向かっている途中なのだが、地図で見た以上に、砂漠は広かった。
ギャンズはコンパスを見て、方向を決めてはいるが、本当にあるのかどうかも怪しく感じてきた。
「デザーツはどこなの……ギャンズ……」
「分かりません……」
そのまま、2人は意識を失ってしまった。
「お……い」
誰かの声が聞こえる。
少女の声だ。
「おーい、大丈夫か?」
ローゼスが目を覚ますと、そこはベットの上だった。
とはいえ、ローゼスの知っているようなベットとは違い、下に布を敷いて、寝るどちらかと言えば布団に近い部類の方である。
もう夜なのだろうか、ロウソクの明かりが数個照らされ、周りは少し暗くなっている。
どうやらここはテントのようだ。
「ようやく起きよったか、飯ならここにあるもんなんでも食ってええで」
目の前にいる少女は金髪のロングヘアでサテン生地のドレスを着ている。
顔つきはやや男勝りな印象を持たせるがローゼスよりかは童顔だ。
「貴方は」
「ああ、自己紹介忘れとったな、わいはデザーツの王女、スミカ・サバナや。よろしくな。あんたは、ローズダムのローゼス・グフタスやな? あっとるやろ?」
「え、ええ。それより、私の執事は?」
「ああ、隣のテントで寝とるで」
ローゼスはスミカにあまり敵意は感じられなかった。
目の前に置かれた料理も、ローゼスは本で見た事があった。
西の方では、カレーとかいう食べ物がとても美味しいと本には書いてあったとローゼスは記憶している。
まさに目の前にあるのはカレーと、それに合わせて食べるナンとか言うパンに似た食べ物だ。
とりあえずローゼスは1口食べて見た。
口の中でカレーのスパイスの刺激か弾け合い、辛いが、なかなかクセになる味わいが舌の上を駆け巡る。
だが、そのスパイスの刺激達をナンが抱擁し、辛い物になれていないローゼスの舌に刺激を優しく伝えてくれる。
「……美味しいわね」
「せやろ? やっぱりこれウケがええねん」
「それで……何故私を助けてくださって?」
ローゼスはナンを食べながらスミカに問う。
「単純な話や。ワイと決闘しぃ」
ローゼスはナンを食べる手が止まった。
「セクトリアでの戦い。見させてもろたわ。あんたとはようやりたいおもてな。そしたら倒れてんで助けた訳や」
「……なるほど」
「ってな訳で口約束になる訳やけど。2日後、デザーツ第3地区で決闘や。ええな?」
「……わかりましたわ」
その頃、ギャンズは。
スミカの側近である大柄な男と互いにお嬢様に対する愚痴をこぼしあっていた。
「わかります!? あのお嬢様本当に雑なんですよ!」
「ああ、分かりやすぜ、うちの姉御もそんな感じで……」
「「あーあ! なーんでこんなにお嬢様ってワガママなんでしょうねぇー!」」
その夜はほとんど宴会状態であった。
同時刻、とある屋敷。
そこには、4人の令嬢と、謎の人物がロウソクの明かりのみの薄暗い部屋に集まっていた。
「……私達を呼んだのは、どう言った要件で?」
「なんだぁ、あんた見てーなお偉いさんがあたしらを呼んで、なんかこき使おうってんなら、ここであんたを肉塊にしてやっても良いんだぜ?」
「黙れ、蛮族」
「もうみなさん黙っててくださいよ☆」
最後の言葉を吐いた令嬢が綺麗に中指を立てる。
「お前たちを呼んだのは、ちょっとしたチャンスを与える為だ」
謎の人物は黒いマントに身を包み、暗い部屋も相まって、容姿が分からない。
「お前達には、この令嬢を倒して欲しい。そうすれば世界一の令嬢になる権利が手に入る。他の令嬢を倒さずともな」
そう言うと、謎の人物は1枚の写真を出した。
「写真……おいおい、なんで天人しか扱えない技術持ってんだおめぇ」
令嬢の1人がそう言うと、謎の人物の背中から、黒い翼が現れた。
「……これで文句は無いな?」
「お、おう……」
「という訳だ、これはお前達4人にしか伝えていない。この私の特権によるゲームだ、健闘を祈る」
その写真は、ローゼス・グフタスだった。
4人はそれぞれバラバラに散っていく。
「……頼んだぞ」
謎の人物はそう呟くと、黒い翼を広げ、空へ飛んで行った。
To Be Continued
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