第6話 決闘代理人 ギャンズ・マクベル

「ちょっとお嬢様! どういう事ですかぁ?!」


 ジンが帰った後、すぐにギャンズはローゼスに聞いた。


「大丈夫ですわよギャンズ、あの金髪野郎に勝てば良いだけですわ」

「そんな事言われたってさっきもザクロスさんに為す術なく負けて帰ってきた人ですよ!? そんな僕にいきなり決闘だなんて……」


 ローゼスはギャンズの肩を叩いてニコニコの笑顔でサムズアップする。


「いや『頑張れ!』じゃないんですよ! 大体、お嬢様が戦えばよろしいんじゃないですか?! 強いんですし」

「前に言いましたけど私は好きな奴を殺して、好きな奴を生かして生きるの。嫌いな奴殺したって嫌ですわ」

「嫌いな奴ならそうなるのでは……」

「決闘した所で私の勝ちですし、どうせならもっと面白くしたかったですし、ちょうど良かったですわ」

「僕を実験台にしないでくださいよ!?」

「楽しみにしてますわ〜」


 そういうとローゼスは自分の部屋に帰っていった。


「そ、そんなあ……」




 翌日。

 ギャンズは決闘の事をザクロスに話した。


「……という訳なんですが」

「ほほお、ちょうど良い。お前も少しは腕が立ってきたからな」

「立ってきてますか?! ザクロスさんにボコボコにされてる気しかしないんですが!?」

「安心しろ、私の攻撃を防いで反撃に出れるだけでも充分な事だ」


 ギャンズは褒められている気がしなかった。


「なら、そろそろ本物のレイピアで獣でも狩ってみるとするか」

「えっ、今日もザクロスさんに襲われるんじゃ無いんですか?」

「襲われる前提なのかね。まあとにかく、木の棒だけでなく、本物の武器の練習位もしといた方が良いだろう」

「そうですね」


 その前にも何回か鉄製のレイピアを用いた練習はしていたが、獣などに対して使っていた事は無かった。

 という訳で、2人は森へやってきた。

 木々が程よく生い茂っており、


「狩った獲物は、今晩の料理にしよう」

「ですね」


 すると、早速水色の液体の塊の様な怪物が現れた。

 スライムである。


「あっスライム」

「セェイ!」


 ギャンズが反応する前にザクロスが潰してしまった。

 周りにスライムだった物が飛び散る。


「ザクロスさん!?」

「……すまん、やってしまった」


 その後も。


「あっイノシシ」

「セェイ!」

「あっ鹿」

「セェイ!」

「あっゴブリン」

「セェイ!」


 ザクロスが先にやってしまう。


「ザクロスさん……」


 ギャンズはザクロスの両手を縄で縛った。


「ギャンズ、何をする!」

「こうでもしないとザクロスさん先にやっちゃうでしょ!」


 ザクロスはぐうの音も出なかった。

 ギャンズが奥へ少し進むと、突如目の前に巨大な大百足が現れる。

 大百足は牙をカタカタと鳴らし、足を動かしてギャンズの元に近づいてくる。

 ギャンズはレイピアを抜き、盾を前にして戦闘の体勢に入る。


 そして、次の瞬間………。






 2日後。

 ローズダム国立闘技場は満員の観客で埋まっていた。

 ローズダム国立闘技場とはローズダムの中で最も大きい闘技場である。

 主に戦士の決闘などに使われ、貴族たちの揉め事の際に決闘をするのにもここがよく使われる。

 普段は、闘技場内は何も無い平原で行われるが、ローズダム国立競技場は一味違う。

 なんと、闘技場の壁には鋭い棘の生えた薔薇の蔦がびっちりと貼り付けられているのだ。

 これにより、壁にぶつかると薔薇の棘が刺さり激痛が走るのだ。

 そんなデスマッチの様な状況が観客をより興奮させるのだ。

 そんな中、ローゼスは特等席にて、闘技場を見ていた。

 隣には、薔薇茶を注ぐザクロスが居る。


「ギャンズの調子はどうかしら」

「ええ、大丈夫かと」


 観客の中には勝手に賭けを始めたり、ジンのファンクラブと思わしき団体が自作のうちわ等を用いて応援の準備をしていた。


「ここまで盛り上げておけば、国の財政も少しは良くなりますわね」

「まぁ……最近は少し悪くなってましたからなぁ」

「さて、貴方の実力をじっくり見せてもらいましょう……ギャンズ・マクベル」


 ついに、扉からギャンズとジンの2人が現れる。

 ジンはやや軽めの甲冑姿で、防御と機動性を高めている。

 そして右手には剣を持ち、切っ先をギャンズに向ける。

 対するギャンズは、いつもの燕尾服のままであり、謎の穴の穴がある盾とレイピアを持っていた。

 盾は穴が空いているとはいえ、貫通している訳ではない。


「おい、ギャンズ・マクベル。そんな装備で良いのか?」

「ええ、いつもの動き慣れてる服装の方が良いので。それに、いつもお嬢様が襲われるか、分かりませんので」

「ほう……殺戮令嬢と呼ばれる彼女を守れる程の男か……見極めてやる。この俺の剣でな」


 二人の間に審判が入り、間合いを調整する。


「それでは、ジン家25代目当主ジン・ザフトルとグフタス家決闘代理人ギャンズ・マクベルの決闘を行います」


 そして勢い良く、審判の掛け声が闘技場内に響く。


「決闘っ! 開始ぃ!」

「ギャンズ・マクベル。行きます!」


 To Be Continued

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