第5話 101回目の縁談

 ダンジョンでの怪物退治の1件から2ヶ月程たった頃。

 ギャンズはあの日からザクロスの厳しい特訓を受けていた。

 その修行内容とは、ただザクロスに襲われまくる事であった。

 

「逃げるな! ガキ!」

「死ぬ! 無理!」


 無論たまに稽古はつける。しかし、ザクロスは戦いは習うよりも慣れる方が良いとの事でほとんど実践形式である。


 ザクロス・ボルジャーノ、86歳。元ローズダムの戦士であり、その凶暴さから仲間の戦士や騎士からも恐れられていた。

 そして彼の凶暴さは、ローズダムの先代王女にも向けられ、彼は先代王女に決闘を申し込んだ。

 しかし、ザクロスは敗北し、その後彼は先代王女の望みをなんでも聞く事になった。

 その時、先代王女はこう言った。


「私の執事になりなさい」


 ザクロスはそれ以降ローズダムの執事となったのだ。



 そして時は戻り現在、今彼は城の庭でギャンズに木で作った斧で襲いかかっている。


「ちょっ、ザクロスさん! 危ない!」

「何を避けている! その武器で戦え!」


 ギャンズはレイピアと樽の蓋を加工した盾で応戦しようとするが、ザクロス迫真の攻撃で何も出来ない。

 なぜレイピアなのかと言うと、城にある武器庫の中から一通り武器を使ってみた結果。彼に取って1番使い勝手がよかったからだ。

 しかしギャンズは、レイピアだけでは心もとないと感じ、ついでに盾も持つことにした。


「ザクロスさん! これは特訓なんですか?」

「敵はそんなもん聞かん!」


 ギャンズはレイピアで斧の攻撃を防ごうとすると、なんとレイピアがへし折れてしまった。


「ぬぁっ! 折れたァ!? ぐはぁ!」


 ギャンズは城壁まで吹き飛ばされ、追い詰められる。


「ガキが、死ねぇ!」


 ザクロスが絶対に執事が言ってはいけないような言葉を吐きながら再び斧を振り下ろす。

 ギャンズが避けると、ザクロスが振り下ろした木の斧が城壁に当たり、木の斧が砕け散った。

 ギャンズはそのザクロス脅威のパワーに目が飛び出る。

 彼は思った。

 たとえ木であろうとあんなものに当たったら死ぬ。

 死ななくても一生残る傷が出来上がると。

 ザクロスは舌打ちをし、すると今度は拳でギャンズに襲いかかってきた。


「次は拳だぁ!」

「ぬぉっ!?!?!」


 そんな2人の追いかけっこを見て、ローゼスは驚いていた。


「……あれは、何をしてらして?」


 ローゼスは通りすがりのメイドに聞く。


「ギャンズ様が強くなる為の特訓だそうで……」

「特訓……と言うよりもあれはリンチの様な……」

「ですが、前よりもギャンズ様の動きは良くなっていると思いますよ? 始めた時は5分でザクロス様にやられてましたし」

「そ、そうなのね……」


 今日も城の庭には、ギャンズの悲鳴が鳴り響いていた。





 そんなある日、城にとある一行がやって来た。

 派手な服を身にまとった金髪の男が堂々とやってきたのだ。

 ローゼスは彼を見て、そっぽを向いている。

 彼の名は、ジン・ザフトル。ローゼスの貴族の1人であり、ローゼスに求婚をしている。


「そろそろ俺と結ばれる気はないのか?」


 ジンとローゼスは客間にて縁談をしている。

 しかし、これで101回目であり、ローゼスはもはや飽き飽きしていた。

 そこまで求婚をしている彼も彼であるが、ローゼスはそろそろこいつをどうしようか考え始めていた。


「貴方のような魅力的な女性など他には居ない」

「私は貴方に魅力などありませんわ」

「俺はもう何回も来ている、ここまで一途な男もそう居ないだろう」

「私には他の男という選択は十分にありますわ」

「……けっ」


 ジンは一向に興味を示してくれない彼女に痺れを切らし始めていた。


「なら、こうしよう」


 ジンはある提案をした。


「決闘だ、お前とこの俺で1対1の勝負としよう。もし俺が負ければローゼス、お前から手を引く」

「……断りますわ」

「ほう……そろそろも近いからか?」

「そういう訳では……」

「じゃなかったら、俺と戦え」


 ローゼスは何がなんでも嫌だった。

 そもそもローゼスは彼の事が根本的に嫌いなのだ。

 そんな奴と決闘などもっと嫌である。

 決闘というのは互いにやり合う気がなければ成立しない。

 そんな時、修行で全身ボロボロになったギャンズが客間に倒れ込んできた。


「お、お客様……ですか?」

「何だこの薄汚い男は」

「彼は……」


 その時、ローゼスはある事を思いついた。

 つい口元の笑みがこぼれる。


「彼は、ギャンズ・マクベル。私の執事にして、決闘代理人ですわ」

「え? お嬢様決闘とは……」

「代理人だとっ?!」


 ギャンズは全く状況が掴めなかった。

 理解出来るのはこの金髪の人がびっくりしている事である。


「ジン、もし私と戦いたいのであれば。彼を倒してからにしなさい!」

「僕と……戦う?」


 ジンは苛立ち、彼女の挑発にのってしまった。


「良いだろう! こんな薄汚い男、すぐに片付けてやる! 決闘は3日後のローゼス国立闘技場だ! 良いな! ギャンズ・マクベル!」

「え、えええええええええぇぇぇぇ!?!?!」


 ギャンズは突然、ジンに決闘を申し込まれたのであった。

 ローゼスとジンの結婚をかけた決闘、はたしてどうなるのか………。


To Be Continued

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