第3話 ダンジョンGO!GO!GO!
名無しの少年がギャンズ・マクベルと名付けられて、2ヶ月程経った時の事。
ギャンズは、この生活で慣れてきていた。
最初はザクロスに指導してもらい、執事としてのイロハを教わった。
最初は文字を書くことすらままなかった彼ではあるが、2ヶ月もするとある程度の字は書けるようになり、ローゼスのスケジュール管理や、身の回りのお世話など、やる事は多い。
ギャンズもそれなりにやりがいがあり、生活もそれなりに充実していた。
そしてギャンズは、2ヶ月程過ごしてわかった事がある。
それは。
「……お嬢様、いい加減……自分の部屋を片付けてください」
とてつもなくだらしがないという事である。
無論、公の場では綺麗な令嬢である。しかし、私生活になれば様子は一変。
部屋には服が脱ぎ散らかされ、朝には弱いわ、勉学は苦手であるわでギャンズは最近情けなく思えてきていた。
もはや、彼女に対して恐怖心とかは無くなっている。
「え〜、片付けるのめんどくさいですわ〜」
「服はせめてちゃんと裏返しにしたままにしないでください! それでも一国の王女ですか!?」
「王女よ!」
「王女らしくありませんよ!!」
ローゼスは口を膨らませて拗ねる。
これがいつも行われているのでギャンズのお人好し精神は進化を遂げてもはやオカンと化してきた。
「部屋を片付けないと、3時の薔薇茶出しませんよ」
「もぉ〜! ギャンズのケチ」
「ケチじゃありません!」
ローゼスは拗ねる。
これが2人の日常となっていた。
そんな時、ギャンズの元にとある手紙が届く。
それは、王女への依頼の手紙だった。
封筒には『ダンジョン内の怪物討伐の依頼』と書かれている。
「ダンジョン内の怪物討伐の依頼……?」
「あら、そんなのが来てたのね」
「お嬢様、いつの間に」
「たまに来るのよ、そういう庶民では解決出来ない怪物退治の依頼が」
「そういうのは、兵士にやらせれば良いのでは?」
「私のような令嬢が強ければ、その分私を守る兵士も強いと思われる。私が出るのは国の軍事力を証明するのには良い事ですのよ」
「そうなんですか……」
「貴方と会ったのも、ミノタウロス退治の依頼が来たからあんな所を私がほっつき歩いてたからですのよ?」
「ああ……あれもそうだったんですか」
ギャンズはてっきり好き好んでやっているのかと思っていたが、案外彼女は自分の立場を理解していたのだと感じた。
「……それで、その手紙にはなんて書いてあるのかしら? ギャンズ、読みなさい」
「はい。ええっと……『ガンドリウム鉱山採掘場の最深部にて謎のダンジョンらしき物が発見されました。私達で調査を行いましたが、ダンジョン内部には謎の怪物がおり、このままでは鉄鉱石の採取が難しくなります。どうか、お嬢様の手をお貸しください。 〜ガンドリウム鉱山採掘場採掘員一同〜』」
「あら、そんな所にダンジョンがありましたのね」
ガンドリウム鉱山とは、ローゼスの街に流通する鉄の7割を占めている鉄鉱石の産地である。
ここで取れる鉄は質が良く、手軽に加工がしやすく、鍛治職人の中には『鉄を打ち始めるならまずはローゼスの鉄を使え』と言う者も多い。
一応国土の中にあるものの、人々の居住している所からやや離れているのが欠点ではある。
「ギャンズ、明日すぐに行きましょ!」
「えっ、お嬢様明日はヴァイオリンのレッドスn」
「そんなもんほったらかして行きますわよ〜!」
「えぇ……」
翌日。
早朝からザクロスの馬車に乗り、砂利道に揺られてしばらくすると馬車はガンドリウム鉱山に辿り着いた。
2人が馬車から降りると、そこには砂利道の上に短いながらも、レッドカーペットが敷かれており、両端には鉱夫達が頭を下げて並んでいる。
そして、目の前に1人、鉱夫の代表と思われる男が、膝をついて居た。
「遠路はるばる来て下さりありがとうございます」
「ダンジョンはどちらに?」
「私が案内します」
その鉱夫に案内され、2人は洞窟の中に入る。
薄暗い洞窟の中を進むと、掘り進められた壁から裂けたようにダンジョンと思われる遺跡の一部分が出ていた。
「あら……随分地下深くにありましたのね」
「お嬢様、これは……」
「おそらく、古代文明の産物ですわね。偶然出土してしまったんですわ」
そう言いながらローゼスはダンジョンの中へと飛び降りる。
「ああっお嬢様!?」
「ギャンズ、早くしないと置いていきますわよー!」
ローゼスは深紅のドレス姿でありながら素早い。
普段からドレス姿であり、この服は彼女にとって令嬢の服であり、戦闘服でもある。
ギャンズはついて行くだけでも精一杯だった。
なんとかギャンズがローゼスに追いつくと、そこには謎の壁画があった。
見た事も無い文字と絵が書かれており、それらが一面にデカデカと載っている。
「すごいですね……」
「ギャンズ、見てないで早く行きますわよ。怪物討伐の方が私は好きだわ」
その時、目の前の曲がり角から何かがやってくる気配をローゼスは感じた。
「ギャンズ、貴方は戻りなさい」
「えっ、お嬢様。どうかしましたか?」
「怪物よ」
ギャンズは先程とは違うローゼスの口調に緊張が走る。
そして、曲がり角から現れたのは、5m程の機械人形だった。
顔は画面のようなバイザーで左手には盾、右手には小型の銃を持っている。
「貴方が、このダンジョンの怪物……」
ローゼスは不気味な笑みを浮かべ、ドレスの右袖から棒を取り出し、その棒から棘付きの鞭を伸ばす。
「さて……虐殺開始ですわよォ〜!」
To Be Continued
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