第1章 最終話 私の「好き」を確かめたい
シャドウとの戦いの後、人間界に戻ってきた私はシアと一緒に別館で仕事をしていたリンカの元を訪れた。そして、未だに状況が把握できずに混乱していたリンカに全てを説明した。そう全てを。彼女はまるで自分のことのように涙を流していた。それがどうしてかは私には分からなかった。
でも、1番救われたのはリンカがシアを受け入れてくれたことだよね。
リンカはシアの正体が魔族だと知ってもなお、友達でいる事を選んでくれた。これには流石のシアも驚きを隠せないでいた。もちろん私もだ。本当にリンカの優しさにはどんな魔法も叶わないね。
私は2階にある1番奥の部屋の前に立ち止まる。
「えーと、確かこの部屋だよね」
なにせこの場所に来たのは2週間ほど前の1回きりなのだ。もし間違えたら色々と面倒なことになる。辺りを見回して誰もいない事を確かめると自分に使っていた
他の部屋と比べて明らかに大きな扉をノックする。
コンコンコン
「どうぞ」
すぐに硬く威厳ある女性の声が中から聞こえてくる。
ガチャとドアを開けると、大きな机の椅子に座っていたリンカが私の姿を見ると、先程とは打って変わった明るい声を出す。
「あ!氷花!」
「ヤッホー!リンカ。久しぶり!」
私は手を振りながら彼女の声に負けないくらい明るい声で返す。
「ごめんね、急に来ちゃって」
「大丈夫だよ。ちゃんと事前に連絡してくれたじゃん。いきなり来られるよりはずっと良いよ」
そういう彼女の目は少し緩んでおり、眠たげに目を擦っていた。恐らく私が来る前に仮眠をとっていたのだろう。
そうだよね。最近ずっとほぼ休みなく仕事してたんだもんね。やっぱり前の日くらいに連絡した方がよかったかな。
そんなふうにリンカへの配慮が足りなかった事を反省していると、顔をパンパンと両手で叩き、残っていた眠気を覚ましたリンカが質問してくる。
「もしかして今日も城の修理手伝ってくれてたの?」
「まあね。本当は1発でパパッと直したいけど、流石にそれは不自然すぎるからね」
「それでも十分ありがたいよ。氷花のおかげで修復のペースも早いし、予算申請も少なくなってるからさ」
そう、私は人間界に帰って来てからずっと
「手伝ってくれるのはありがたいけど体は大丈夫なの?前来た時は、その、すごい事になったから」
リンカは少し言いにくそうに言葉を濁しながら私を心配してくる。彼女が言っているのは帰ってきた直後のことだろう。
リンカに今回の真相を説明した直後、私の体を激しい激痛が襲ったのだ。それは自分の体が中から崩壊するのではないかと思うほどの痛みで蹲ることしか出来なかった。リンカの悲鳴にも似た声に先に部屋を出ていたシアが急いで戻ってきて、急いで私に
まず、全身を常に筋肉痛のような痛みが走るようになった。そして、厄介だったのが魔法を使えなくなった事だ。普通は魔力回路に魔力を流して魔法を使うが、魔力回路が上手く機能しなくなった。この症状は3日間続き、その間はベッドでの生活を余儀なくされた。
「それならほとんど治ったよ。リハビリとかもしてたし。もうバッチリ」
ある程度収まった日から私はリハビリ代わりに城の修復活動を行った。そのおかげが、今では前のほとんど変わらないほどに回復した。恐らくシャドウとの戦いで無理に魔力を使ったため、体が耐えきれなかったのだろう。
「氷花があんなに弱ってるところ、初めて見たからびっくりしたんだよ」
確かにあの時のリンカは今まで見た事がないほどに動揺し、涙が流れていた。
今回はリンカに迷惑をかけてばかりだな。私がもっとしっかりしていれば。という後悔が後からどんどん出てきた。だが、
「ありがとう、氷花。街の事を考えてくれて。」
リンカは私に感謝の言葉をかけてきた。その事に申し訳なさが強まる。だから私はまた心配させないように笑顔を浮かべる。
「別に良いって。今回は完全に私のせいでもあるんだし。むしろまだまだ償いきれてないよ。もし困った事があったら相談して。どんな依頼でも受けるからさ」
「ありがとう。なら遠慮なく頼らせてもらうね」
そういう彼女の表情は明るいがどこか緊張しているような雰囲気が漂っている。
何だろう。この違和感。この部屋に来た時からいつものリンカと違うような。気になった私は正直に聞いてしまう。
「ねえ、リンカ。なんかあった?」
「へ?!いや、特には……何も。そ、そうだ!今日は何か用があって来たんでしょ!」
私の言葉に動揺を見せるが、それを隠すように早口で話題を変えようとする。その変化にますます疑念を持つが、無理強いするのも気が引けるので流される事にした。
「実はね。相談があって来たんだけど」
「うん」
私はソファに腰掛ける。柔らかい上質な素材で出来ており、座った瞬間体が沈んだ。リンカも向かい側のソファに座る。
これ言っても良いよね。相談するくらいなら大丈夫だよね。この事は内緒にしてもらえば良いよね。
自分の中で今更だが葛藤が芽生えるがそれを押し殺す。
「私、シアに告白されたの!」
「あ、そうなんだ。良かったね」
「それだけ?!」
あれ?終わり?想像していた反応と真逆の反応で思考が止まる。私、けっこう思い切った事言ったつもりなんだけど。リンカは私の叫びなど聞いても動じる事なく冷静だった。
「それだけって言われてもさ。何を相談しているのか分からないと、反応に困るよ」
いや、私が告白された事自体が驚きじゃないの?!だってそんな素振り全くなかったじゃん!私告白された時すごいびっくりしたんだからね!
「相談ってのはね、シアにシャドウとの戦いの日に告白されたんだけどまだ返事をしてないの」
「氷花忙しそうだったもんね」
「それもあるんだけど、実はわざとシアと一緒にいないようにしていたの。返事が決まらなくて」
そう。修復活動は巻き込んでしまったことへのお詫びと、私のリハビリという事もあるが、シアと顔を合わせないための言い訳でもあった。シアに返事を迫られても答える事が出来ないからだ。
「シアの事が嫌いなの?」
首を傾げて意外そうな顔で聞いてくる。私はそのありえない可能性を思わず強い声で否定してしまう。
「そうじゃないよ!シアの事は好き。けど、今までシアの事をそういう目で見てなかったから。恋愛的な意味での好きがよく分からないの」
前世でも今世でも恋愛なんてした事もなかったし、そんな感情を抱くような事もなかった。だから好きという感情がよく分からないのだ。そんな状態で返事なんて出来るわけがない。
「つまり好きが何かを聞きたくて来たの?」
察しの良いリンカに感謝しながらコクリと頷く。1人で散々考えたが、未知のことすぎて何1つ解決しなかった。このままシアから逃げるわけにもいかないため、こうして相談しに来たのだ。するとリンカは小さくため息をついて顔を下に向ける。それから少しして顔を上げる。
「氷花、シアとキスはしたの?」
予想外の質問に戸惑うが記憶を巡らせて答えを探す。
「うん。したよ」
「どうだった?」
「え?!いや、その」
シアにされた2回のキス。それを思い出した瞬間、顔が熱くなる。近くにあった鏡で自分の顔を見ると案の定、真っ赤に染まっていた。そしてこの感情を口にするのが猛烈に恥ずかしく、口にするのに抵抗があった。だが、相談に乗ってもらっている手前そういう訳にもいかず、私は辿々しい声で質問に答える。
「き、気持ちよかった。その、もう1回したいって思った」
改めて口にすると恥ずかしさでどうにかなりそうだった。それくらい私はシアとのキスで快感を感じたのだ。死に際に思い出してしまうくらいに。
私の言葉を聞いたリンカはフフっと少し笑いながら言葉を返した。
「あのね氷花、キスっていうのは好きな人にされないとそんな感情にはならないんだよ」
「そうなの?!」
初めて知る事に驚きの声をあげてしまう。
するとリンカは静かに立ち上がる。宝石が散りばめられた純白のドレスの裾を翻しながら部屋の隅に置かれたベッドの上に座る。そして、自分の右隣をポンポンと叩く。
え、来いってこと。ここでよくない?
疑問が頭をよぎり動かないでいると、さらに強くベッドを叩いた。私は誘われるがままに彼女の右側に座ってしまう。
私がベッドに座るとリンカは顔を前に向けたまま話す。
「もし嫌いな人にキスされたら氷花はどうする?」
「もちろん殴り飛ばす」
その光景を想像して、思わず身震いしてしまう。確かに好きな人にされないとキスは気持ちよくないのかもしれない。
「キスはねそれくらい重い行為なの。簡単な気持ちじゃできないんだよ」
「リンカはその、キスしたいくらい好きな人がいるの?」
思わずそう聞いてしまった。少しして、自分がリンカのプライベートな事を聞いてしまった事に気付いて慌てて言い訳をしてしまう。
「や、その、なんか実感がこもっているように聞こえたから」
「いるよ。私はずっと昔からその人の事が好き」
そうか。リンカも恋愛してるんだ。好きを言葉にするリンカの横顔はうっすらと赤く染まり、真っ直ぐな目をしていた。
「リンカはその人とキスしたいって思ってるの?」
「もちろんだよ。でもその人は私の気持ちに気付いていないから、嫌がるんじゃないかと思って出来ないけどね」
そう語るリンカの顔がどこか寂しそうな表情に変わる。
「そんな事無いって!リンカみたいな美人にキスされて喜ばない人なんていないよ!リンカのような美人に恋されて気付かないなんて相当鈍感な人か、人の心が無いのかのどっちかだよ!」
全く。リンカに寂しそうな顔にするなんて、1発くらい殴ったほうがいいかな?
リンカにあんな顔をさせた人物に何故か無性に腹が立った。するとその様子を見ていたリンカが何かを含んだような笑みを浮かべる。
「その人はキスしたら気付いてくれると思う?」
私の方を見て聞いてくる。そんなの考えるまでも無い。恋愛と無縁な私ですら意識せずにはいられなくなったのだ。
「気づくに決まって、ッ!」
気付くに決まっている、と答えようとした瞬間、リンカの唇が私の唇と重なっていた。突然の出来事に動きと思考が止まり、リンカに押し倒されてしまう。そしてそのまま膝の上に乗られ動きを封じられてしまう。静かに唇が離れる。リンカは私の両肩を両手で抑え込みながら不敵な笑みを浮かべていた。
「どう?気付いてくれた?私の気持ちに」
「ど、どういう事なの?」
「私はずっと前から氷花が好きだったの。氷花の恋人になりたいって思ってた。だから、私と付き合って、氷花」
その真っ直ぐな目に私は何を言うべきか完全に分からなくなっていた。そもそもリンカが私に対して恋愛感情を抱いていることすら知らなかったのだ。私は今までシア同様に彼女の事を友達としか見てなかった。
「あ、あのね、リンカ。私はまだ好きが何か分かっていなくて」
「それでも良いよ。私が教えてあげるから。好きがどんな感情か。こんな風に」
「ま、待って!」
リンカが私の服に手を掛けてくる。これから何をされるのかが嫌でも分かってしまい、慌てて静止の声を出す。だが、
「ちょっと待ったーーー!!!」
ベッドの下から静止の叫び声が聞こえてきた。私はビクッと体を震わせ、閉じていた目を開いて部屋を見渡す。そして何故か目の前のリンカは驚いた様子が無い。まるで想定通りとでもいうように。するとベッドの下から何かが這って出てきた。
「シア?!」
ベッドの下から出てきたのはシアだった。え?!ずっとそこにいたの?!
魔力感知を切っていたため気付く事が出来なかった。呆然とするしかない私をよそに、シアは綺麗な顔を怒りに染めていた。
「おいリンカ!お前、先に進みすぎだバカ!」
一方リンカはその反応すら楽しんでいるかのようだった。
「別にシアに許可取る必要なんか無いでしょ。私は私のやりたいようにやるだけだから」
ブチっとシアの堪忍袋の緒が切れる音が聞こえてきた。今すぐにでもリンカに飛びかかりそうな表情になるシア。未だに状況が呑み込めていない私は2人に聞く。
「えーと、2人ともこれは一体どういう状況なの?」
「私ね知ってたの。氷花がシアに告白されてた事」
知ってた。え、告白された事を。チラッとシアを見ると渋々といった様子で頷く。
「えーーーーー!!!!う、嘘でしょ?!いつ!」
「お前が来る前にこいつに会っていたんだ。その時に全部話した」
「だから認識阻害の腕輪を借りたの?!」
別にデメリットも無いので用途も聞かずに腕輪を貸したが、まさかこのためだったなんて。
「じゃあリンカは全部知った上で私の話を聞いてたの?」
「まあ、そういう事になるのかなー」
「全く、何がキスしても大丈夫かなーだ。このアホ女!わざとらしすぎるだろうが!」
「でも氷花は気付いて無かったよ」
やめて!それは言わないで。だって本当に知らなかったんだもん。リンカと一緒にいるのは楽しいけれど、友達としての関係でしか接してこなかったんだもん!
私は1人顔を赤くして膝を抱えて蹲る。
「確かにこいつの鈍感ぶりは聞いているこっちが恥ずかしくなるほどだったが………」
「そうだね。私もちょっとイラッとしちゃったもん」
「え?!あれ怒ってたの?!」
「少しね。だって全然気付いてくれないんだもん。そのくせシアとのキスを話す時はあんなに可愛い顔してさ」
リンカは少し、不貞腐れたように答える。確かに今日のリンカはいつもの笑顔と少し違うような気がしていた。まるで漏れ出しそうな感情を堪えているような。
「言っておくけどね。さっきのは苛立ちもあったけど、私のしたいことでもあるからね。そこは勘違いしないでね」
そう言いながら私の首筋をゆっくりと撫でる。
「ヒャ?!」
くすぐったい感触に思わず変な声を出してしまう。するとシアが不機嫌な顔になり私の頭を小突いた。
「変な声を出すな。私もやってみたくなるだろうが」
そう言って私の右側に座る。リンカは目を輝かせながら同意するように声を出す。
「分かる!今日の氷花はいつもの何倍も可愛いしエロい!」
「あ、あのー、出来れば私がいないところでして欲しいんですが」
いつも仲の悪い2人が意気投合している姿は微笑ましいが、内容的に私のいないところで話してほしい。場の空気に耐えられなくなり、急いで話を変えようとする。
「そ、そうだ!どうしてシアはリンカに話したの?!シアはリンカの事が、あまり好きじゃ無いのかって思ってたから」
「それなら簡単だ。今回の件で迷惑をかけただろ。お前は修復作業を手伝っているが私は何も出来無いからな。だからこいつの後押しでもしてやろうと思っただけだ。」
「リンカが私を好きな事に気付いてたの?!」
「当たり前だろ。あれだけあからさまにやっていればな。むしろ何でお前は気付かなかったんだ?」
グハッ!
私の心に大ダメージがはいる。
「仕方がないよ。氷花はものすごーく鈍感だからね。言わなかったら一生気付かなかったと思うよ」
「全くだ。友達としか見られない私たちの身にもなってほしいものだ」
「でもその分返事は期待しても良いかもよ?」
「そうだな。お前が私の事を避けてるのを分かって見逃していたんだ。早速返事を聴かせてもらおうか?」
シアを避けていたのバレてたの?!
どうやら返事が決まらず城の修復を言い訳に逃げていた事がバレていたらしい。まあ、そうだよね。シアの性格なら強引にでも聞いてきそうだし。それが無かったということは私の思惑に気付いた上で見逃していたのだろう。私が絶対に逃げる事が出来ない状況を作るために。
現に私は2人に挟まれ、逃げる事が出来ない。転移も前の戦いの後遺症で未だに上手く発動する事が出来ない。完全に逃げ場を封じられた。
なんかこんな状況、最近あったような気がするなー。あ、そうだ。シャドウの
何て半ば現実逃避をしているとそれを感じ取られたのか2人の目線が強くなる。
そこでふと疑問に思う。どうして私は告白の返事をする事を避けているのだろう。リンカとは3年前から依頼主と請負人、そして友達として交流があった。シアに至っては2年前から一緒に暮らしている。2人とも私の正体を知った上で受け入れてくれた人だ。私の人生の中でかけがえのない大切な存在である。
そうか。私は怖いんだ。中途半端な気持ちで答えて2人が遠ざかるのが。
私は好きが何か分からない。そんな状態で告白を受け入れて好きが間違っていたらどうなるか。もう今までの関係には戻れないかもしれない。
それが私は怖いんだ。好きを確かめたいんだ。なら私の返事は決まっている。
「2人とも、ごめん!」
私は思わず頭を下げていた。その動きに2人は僅かに目を驚きで見開く。先に声を出したのはシアだった。
「それはどっちに対してだ。私か、それともこいつか?それとも………両方か?」
彼女はいつものように冷静な口調で話しているつもりかもしれないが声が震えていた。リンカに至っては顔を下に向け、その目には涙の膜が張っていた。
「そうじゃないの!」
私は自分の発言が思わぬ誤解を生んでしまった事に気付いて慌てて訂正する。
「私は2人の事が大好きだよ。でもそれは友達としての好きで、恋愛の好きなのかが分からないの。2人の事が大切だから簡単に決める事が出来ないの」
私は恋愛をした事が無いし恋心を抱いた事も無い。あくまで本の中の世界だけの話だと思っていた。だから自分が恋人を作ることなんて全く想像もしていなかったし、する気すら無かった。だから
「だから、少しだけ時間を頂戴。2人の事を真剣に考えたいの。こんな言い方ずるいって自分でも分かってる。でも!」
私は勢いよく立ち上がり、ベッドに座る2人の目を真っ直ぐに見る。
「胸を張って2人の想いに答えられるようするから!私に好きを確かめる時間をちょうだい!」
それが今の私に出せる精一杯の答えだった。結局は2人の事が大切と都合の良い事を言って返答を先延ばしにしただけだ。それが最低な事だと自分でも思ってる。でも中途半端な気持ちで答えたくない。
「お前の気持ちは分かった」
「うん。そうだね」
私が死に物狂いで出した答えを聞いた2人は少し考えてから静かに頷いた。
「いいぞ。お前が考えたいと言うなら待ってやる。好きなだけ考えれば良い」
「私もいいよ。それくらい氷花が私達を大切に思ってくれてるって事だもんね」
「あ、ありがとう」
私の情けない答えを受け入れてくれた。その事が嬉しくて、頭を下げて感謝をする。これでしばらくはこの関係を続けられる。その事が嬉しいと同時に、見つからなかった時の不安が心を苛む。
「氷花、お前は好きが何か知りたいと言っていたな」
「え、あ、うん」
そう答えた瞬間、2人に腕を掴まれベッドに引き寄せられる。いきなりの事で対処する事ができず、私は2人の間に倒れてしまう。急いで立ち上がろうと仰向けになった瞬間、シアに右半身、リンカには左半身をガッチリと固定される。そして2人は顔を近づけてきた。
「だったら、お前が私のことしか考えられないくらい徹底的に惚れさせてやる」
「アハハ。それは無理だよ、シア。だって氷花はこれから私にメロメロになるんだから。シアの事なんて目に入らないよ」
2人の間にバチバチと火花が散ったような感じがした。
なんか私、とんでもない選択をしちゃったんじゃ。
命懸けの戦いを何度も繰り広げてきた私ですら身の危険を感じるほどのオーラを2人は纏っていた。
「あ、あのー、出来れば、お手柔らかにお願いしたいのですが」
「「ムリ」」
即答されてしまう。そして確信した。もうこの2人を止めることは誰にも出来ないと。目を閉じた2人の唇が迫ってくる。私は抵抗する事なく、目を閉じ彼女達の唇と自分の唇を合わせる。これから毎日、彼女達の情熱的で激しいアプローチをされる事になるだろう。でも、それが楽しみになっている自分がいる。私達なら好きという不確定で目に見えない感情も見つけられる気がした。
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