第6話 氷花VSシャドウ
水色の光が宙に浮いている。シャドウが大量の瓦礫の山に穴を開け、飛び出してきたのだ。下の瓦礫の山からは土煙が上り、無理矢理に穴をこじ開けた反動でガラガラと瓦礫の雪崩が出来ている。空を高速で飛んでいた氷花は彼の愛銃ガブリエルの射程範囲外ギリギリの位置に止まる。
瓦礫に埋まっていたはずなのに土煙一つ付いていないシャドウは氷花の気配を感じ取ったのかこちらを振り向く。
「どうやら力を取り戻したようですね」
「まあね。これでようやく君を殺せる」
「フフフ、それは楽しみですね」
「ねえ、シャドウ。二つだけ聞かせてちょうだい」
「何ですか?」
質問を聞くという意思表示なのか、持っていたガブリエルを収納魔法陣に戻した。
「どうしてこの時代にいるの。君はあの時、シアの魔法で間違いなく死んだはずなのに」
今でも思い出す。500年前のあの日。シアの悲しみに満ちた狂ったような絶叫と爆発的な魔力の奔流を。制御を失った膨大な魔力が暴走し、地形を変えるほどの威力を持った具現化した破壊衝動を。目の前に立っている銃使いは間近であの攻撃を受けたのだ。生きているはずがない。実際に氷花は彼が骨すらも一瞬で消滅する様を目撃している。
氷花やシアがこの時代にいるのは
「簡単な事ですよ。僕も死ぬ時に自分に
「あの魔法は私しか使えないはずじゃ?!」
思わず動揺の声を出してしまう。
「僕はあなたとそれなりの時間一緒に研究をしていたんですよ。それに床や机に散乱している魔法の資料や実験結果を見ていれば魔法陣の構成は大体分かります」
(なるほどね。つまり当時の私が残していた資料を元に再現したってわけね。そう言えば、
作っていた時はただの興味本位でしかなく使うことなんて全く想定していなかった。だから資料や魔法陣の設計図なんかも机や床に置きっぱなしにしていたのだ。
(まさか、それを元に作られるなんてね。ああー、ちゃんと保管しておけばよかった。まあ、あの時はシャドウが裏切るなんて考えてもなかったから無駄かも)
過去の自分の行いの反省と苦し紛れの言い訳を考えつつ、残っている疑問を口に出す。
「じゃあ2つ目。ここ最近の王都での事件も全部君の仕業なんでしょ。君はこの時代で何がしたいの?」
「それは以前も話したではないですか?僕はもっといろんな魔法を知りたいんですよ。今まで誰も使ったことのない魔法を作り、魔法の可能性を広げたい!」
「そのためなら人の命なんてどうでも良いって言うの?」
「はい。僕はあなたと違って人の命に価値を見出してませんので」
目を凝らしシャドウの表情を伺うが、その浮かべている笑みが本当のものか判断がつかない。昔から彼はそうだ。こちらの考えていることや嘘をあっさりと見抜くくせに自分の内面は探らせない。
「じゃあ、何で私を殺そうとしたの?」
「というと?」
手を振り続きを促してくる。
「君が珍しいものや理解できないものをとことん調べ尽くすタイプだって事は知っているよ。だったらどうしてシアに興味を示さないで私を殺そうとしたの?シアが私達を遥かに超える魔力量を持っている事は君も身をもって知ってるでしょ。はっきり言って異常なほど。君の性格なら私よりもシアに興味を持つと思ったのに。君はさっきの戦いで私に意識を向けていた。それはなんで?」
バシュ!!!
一瞬で魔法陣からガブリエルを取り出し魔力弾を撃ってきた。右手であっさりと弾く。今までの戦いでは撃つ瞬間に発する殺気がうっすらとしかなかったのに、さっきの発砲の瞬間だけは強烈な殺気が感じられた。だからこそ簡単に弾く事が出来た。
動揺が顔に出た事に気付いたのか、顔に手を当て先程までの笑みを浮かべ直す。
「サービスタイムは終了です。早く始めましょう、僕たちの
「私が勝ったら殺す前にさっきの質問に答えてもらうよ」
「お好きにどうぞ。どうせ勝つのは僕なので。ですがその前に、」
シャドウが自分の足元に
「場所を変えましょう。ここでは戦いにくいでしょう」
「私は別にここでも良いよ」
嘘だ。誰も住んでいない廃墟とはいえ氷花の頭の中にはかつての栄えていた街並みが繰り返し思い出される。本当はこの街を壊すようなことは避けたい。魔王城は不可抗力だったとしても。それでもこの場所で戦おうとしているのはシャドウの提案に乗ることは危険だからだ。彼は昔も今もこちらの思いもよらない事を容易くしてくる。転移した瞬間、罠でも発動されたらたまったものではない。
氷花の心の内を読んだのか、シャドウは口元に手を当て残酷な笑みを浮かべる。
「彼女を巻き込んでも良いのでしたから僕も構いませんが?」
挑発的な物言いに氷花の目が殺意に細まる。つまりは状況によってはこの街にいるシアを人質に取ることも厭わないということだ。
「分かったよ」
シャドウは追い詰められれば、いや、こちらの苦痛に歪む姿を見るためなら躊躇うことなくするだろう。
(ここは従うしかないよね)
渋々ながらもシャドウの展開した魔法陣を読み取り、同じ場所に転移するための魔法陣を足元に展開する。
[
2人の姿が一瞬にして廃墟から消滅する。氷花が目を開けた瞬間、全方向から殺気を感じた。
「って、嘘?!」
咄嗟の判断で身を捻る。彼女の転移した場所を囲うように無数のガブリエルが配置されていた。いや、よく見ると形はシャドウが持っているガブリエルと同じだが、ガブリエルの影を紫にして立体化させたような作りの銃だった。その銃口が標的を捉えるや否や魔力弾を発射してきたのだ。全身の関節を限界まで動かし、全て回避する。
「ちょ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!」
ほぼ隙間なく氷花の体を魔力弾が通り過ぎていく。弾の通り過ぎる時の風が全身を撫で背中に冷たい汗が滴る。その様子を見ていたシャドウはどこか楽しそうにクツクツと笑いながら賛辞の言葉を送ってきた。
「全方位の
「ちょっと!不意打ちとかズルくない?!このために移動させたでしょ!」
「そうですよ。王都で鳥を暴れさせる前にここで準備していました」
氷花の非難の声など気にした様子もなくあっけからんとした様子で答える。だが、氷花はシャドウの技量に驚きを感じられずにはいられなかった。先程の全方向からの攻撃はこちらの転移する場所を完璧に予測していなければできない。つまり、シャドウは
(それにさっきの攻撃。魔王城で私に死角から攻撃したのもさっきの
この銃使いは魔王城での戦いの時にも万が一のためにあらかじめ設置しておいたのだ。トドメを刺そうとする氷花を逆に仕留めるために。それに彼が選んだ戦いの場も氷花の胸をざわめかせる場所だった。
バルグレン大渓谷
500年前の戦争の最終決戦の場所だ。この場所は、広大な草の生えていない大地。それに連なるように出来た左右の巨大な崖。そして、遠くにはうっすらと巨大な森が見える。崖に挟まれている大地は人間と魔族が大規模な戦闘をしても有り余る程に広い。だが、今のバルグレン大渓谷は当時とは全く違っていた。
2人が浮いている場所の下を見下ろしてみると、直径約2500メートル、深さ約300メートルもある巨大なクレーターが出来ており、左右の崖もその辺り一帯と数キロメートルに渡って消滅していた。まるで巨大な何かが落ちたみたいに。
(そうか。ここにシアネスタの魔法が落ちたんだ)
すぐにその可能性が思い当たる。そして、改めて戦慄する。シアの膨大な魔力量に。ここまでの規模で地形を変える程の魔法は氷花でも撃てない。しかも当時のシアネスタは魔法陣無し、ただの魔力の塊を落としただけでここまでの破壊を起こしたのだ。
彼がここを選んだ理由も分かった。先程の罠よりもこの光景を見せて、氷花に当時の事を思い出させ、罪の意識で苦しませるためだ。
「ほんっと性格悪すぎ」
「今更何を言ってるんですか?まさか、僕が何の仕掛けもしていないと思っていたんですか?」
「それもあるけどさ。普通こんな場所選ぶ?ホントねじ曲がった性格だよね」
「お褒めにあずかり光栄です。ですが慣れたものでしょう。この程度のイタズラには」
その軽い物言いに彼がこれまでしてきたことが一瞬でフラッシュバックし、激しい怒りが込み上げる。500年前のあの日。友を無惨に殺された事。王都で怪物を暴れさせて平和になった世界を壊した事。
そして。
怒りのあまり握りしめていた拳を解き、あえてニッコリとこの場に似合わない笑みを浮かべる。
「シャドウ、1ついい?」
「?………何ですか」
キョトンとしたシャドウに転移したと思うほどの速度で近付き、左頬を思いっきり殴る。バキイイイインン!!!と大きな音をたてシャドウが吹き飛ぶ。この一撃を当てるために怒りを押し殺し、殺気を無くしたのだ。
「グッ!!!」
空中で姿勢を直し、殴られた頬を触る。ヌルッとした感触を感じ左手を見ると、赤い血が付着していた。
「君はシアとリンカを傷付けたでしょ。そのお返し」
血を流しボロボロになったシアの姿。自分の大好きな街を破壊されて絶望に顔を歪ませるリンカの姿。それらが脳裏をよぎった瞬間、抑えていた怒りが爆発した。
(近付くための動きが全く見えませんでした。なるほど。かなり力が増しているようですね)
一方シャドウは、油断していたとはいえ攻撃のために近付かれたことさえ気付くことが出来なかったことに驚きを隠せずにいた。人間界で戦っていた時は、氷花の力が当時とは比べ物にならないほどに落ちている事に気付いていたため、遊び半分で戦っていた。
(ですが………どうやら)
「どうやら僕も本気で戦わないとダメみたいですね」
シャドウの魔力が覚悟と共に膨れ上がり、水色の魔力が全身から噴き出す。
「当然でしょ。加減されて勝ったって嬉しくもないし、私の気が収まらないよ」
それに応えるように氷花の全身からも水色の魔力が噴き出す。
2人の魔力が同時に膨れ上がる。地面がグラグラと揺れ、空もビリビリと悲鳴のような音を出す。どんどんと魔力量が上がっていき、雲が空を覆い雷の唸り声を上げる。
「
シャドウの水色の魔力が紫に変わり、魔力量が一気に上昇する。
王都での戦いで氷花はこの状態のシャドウに遠く及ばず完敗してしまった。けど今は、
「
氷花の首元にネックウォーマーが出現し口元を隠し、水色の魔力が黒く染まる。魔力量が一気に上昇し、力がみなぎってくる。シアに移植していた魔力炉を元に戻した今の氷花は、前までとは比べ物にならないほどの力が増していた。
2人の黒と紫の魔力が渓谷全体に吹き荒れ、出現していた雲が吹き飛び、青い空が2人を照らす。
「さあ、ハッピーエンド、迎えるぜ」
「さあ、このコンサートに
先に動いたのは氷花だ。空気を蹴り、勢いよく突進する。シャドウを相手にするのに距離を取るのは不利になるだけだ。
収納魔法陣からシュバルティネオを取り出し、黒い魔力を纏わせ威力を上げる。
氷花は自分の周りにいくつもの
剣の間合いに入った瞬間、振り下ろす。シャドウがガブリエルに紫色の魔力を纏わせ、シュバルティネオの一撃を受け止める。
辺り一帯を黒と紫の光が染めあげる。王都での戦いでもこのような鍔迫り合いはあったが、双方が込めている力は桁違いだ。衝突の瞬間には衝撃波が辺りを駆け抜けた。もし近くに人がいたら、なす術なく吹き飛ばされるだろう。
だがこの2人にとってはただの挨拶代わりの攻防でしかない。2人の周りに
[
シャドウの存在が世界から消える。突然の出来事に力をいなすことが出来ずに動きが止まる。銃撃が氷花に襲いかかる。
ドガアアアアアアン!!!!
氷花を起点にして集結した魔力弾が大爆発を起こす。煙が消えるとそこに氷花の姿は無かった。
「あの一瞬で転移しますか」
「ねえ、君のさっきの魔法何?」
「
(なるほどね。だから私の魔力感知にも反応しなかったわけか)
氷花は
シャドウの使う魔法の凄さに舌を巻きつつ、状況を把握する。既に
(やっぱり間合いを詰めるしかないよね)
距離を取られれば取られるほどこちらが不利になるだけ。一息に距離を詰め決着を着ける。
[
ガブリエルと
[
緑色の魔法陣をシュバルティネオにスキャン。剣が緑色の風を纏う。そして風の刃を縦横無尽に振る。氷花の周りを暴風が吹き荒れ、魔力弾が明後日の方向に飛んでいく。シャドウの動きも鈍くなり体勢が僅かに崩れる。その隙にブーツの底に刻んである加速を発動。空気を蹴り、シャドウに接近。
[
自分の周りに
ガブリエルの銃口には先程の
宙を蹴り高度を上げ、避けようとするがそれを想定していたシャドウがすぐさま、照準を合わせて撃ってくる。放たれた6発の魔力弾が迫ってくる。その全ての弾丸をシュバルティネオで切り裂くが、切り裂いたはずの弾丸が爆発し、氷花の視界を塞ぐ。未だ効果が続いている風の刃で煙を散らすが、シャドウはすでに
思わず歯噛みしてしまう。
(なら、無理矢理にでも近づいて倒す!)
そう決意すると、シャドウの目の前に転移する。転移が完了し、氷花がシャドウの前に姿を現す。
「ハアアアアア!!!」
黒い魔力を纏った剣で横向きの斬撃を放つ。シャドウは魔力を込めたガブリエルで受け止める。すぐさま剣を引き戻し、何度もシャドウに斬撃を与える。シャドウは躱したり、銃身で受け流したりと、銃使いとは思えない技量で氷花の高速で繰り出される斬撃を捌く。
「ダアアアアアアアアアア!!!!!」
シャドウが作り出した
「チッ」
舌打ちと共にシャドウが
剣士並みの技量で氷花の攻撃を捌いていたシャドウだったが、やはり本職の剣士である氷花より先に動きが乱れ、攻撃が服を僅かに掠め始める。そして、とうとうシュバルティネオがシャドウの腹部を一閃。防御力を上げるための紫のコートを切り裂き、シャドウの腹部から血が噴き出る。シャドウは顔を歪めガブリエルを構えるが、氷花は後ろに転移。
「何?!」
驚きの声を上げ、振り向こうとするが遅い。
「ダアアアアア!!!!」
シャドウの背中に右足での横蹴りを決める。地面に向かって飛ばされるシャドウをさらに上の速度で降下し回り込み、シュバルティネオをガンモードに変形させる。
[
黒い魔力砲がシャドウの体を上に吹き飛ばす。
「グッ!アアアアアーーーーー!!!」
[
火が描かれた魔法陣をソートモードに変形したシュバルティネオにスキャン。漆黒の剣に轟々と燃え盛る炎を纏わせ、すぐさま
「ハアアアアア!!!」
炎を纏ったシュバルティネオで連続攻撃を放つ。灼熱の剣はシャドウの体を次々と焼き切り、激痛に顔を歪める。振り下ろされた剣をガブリエルで受け止めようとするが、衝突した瞬間、衝撃に耐え切れずガブリエルが弾かれ宙に舞う。轟々と燃え盛る炎を纏った剣を振り下ろす。
「あまり、舐めないでください!!!」
怒声と共に掌から衝撃波を放たれ、氷花の動きが一瞬止まる。
「その程度で!!!」
再び剣を振り上げるが攻撃にばかり気を取られていた氷花は気付かなかった。
[
「ッ!!!」
背後の殺気に気づいた時には遅かった。無数の
「ガハッ!!!」
凄まじい衝撃と痛みで動きが止まる。
(そうか!さっきの衝撃波は銃を動かすため?!)
先程の衝撃波で一瞬、氷花の動きが止まった。その一瞬の空白の時間で
「グッ!ハッ!」
氷花は腹を抱えてうずくまる。魔力を込めて威力が上がった攻撃をまともに受けてしまった。肺の空気が全て吐き出され、呼吸すらままならない。シャドウは紫の魔力を纏った拳で氷花の顔や腹を何度も殴る。彼が剣士である氷花と互角に近接戦をしていたことから予想はしていたが、彼の格闘術は一流のレベルに達していた。全ての攻撃が重く速く、そして、みぞおちや顎などを正確に狙い撃ちし、氷花にダメージを与えつつ反撃の隙すら与えさせない。
(やばい!抜け出せない!)
人体の弱点を的確に攻撃され、氷花の体力は削られ視界が痛みで歪む。
「どうしました氷花?この程度で終わりですか?もっと僕を楽しませてくださいよ!」
愉悦に顔を染めながら振るった拳が氷花の顔面に命中した。氷花は一瞬意識を手放し、視界が真っ暗になる。だが髪を掴まれ、みぞおちを殴られる。痛みで意識が無理矢理戻された。
目を開けると息切れをしたシャドウがこちらを見ていた。先程の拳による攻撃で氷花の体はボロボロだった。唇が切れて血が流れ、顔と腹は内出血により大量の青あざが出来ていた。だが、シャドウの傷も相当だった。全身の切り傷からは血が流れ、口元も血で汚れている。互いに満身創痍の状態。
手をかざすと吹き飛ばしたはずのガブリエルが吸い込まれるようにシャドウの手に収まる。
「最初に戦った時よりは楽しめましたよ。こんなに傷を負ったのは前世でもなかなかありませんでした。本当はもっと楽しみたいですが、あなたは危険すぎます。なので」
ガブリエルを氷花の眉間に当て魔力を込め、引き金に力が篭る。
「今度こそ終わりにしましょう」
「まだ!…………終わらせない!!!」
突き出した右手にシャドウの身長と同じくらいの大きさの赤い魔法陣が一瞬で構築される。その魔法陣にこの戦いの中で最も大量の魔力が注がれ赤い光を放つ。
「
巨大な黒き炎の砲弾が放たれゼロ距離でシャドウに直撃。黒炎は猛烈な勢いでシャドウを押し続けている。魔力を込めたガブリエルを盾にして炎から身を守っているが黒い魔力を使って発動した
「まだこんな力が?!…………ク、ウアアアアアアアアアアーーー!!!!!!」
黒炎が遠くの森に墜落し、大爆発を起こす。爆発の音と衝撃がこちらまで届く。大量の燃えた木々や地面が爆発により宙に吹き飛ばされ、黒い煙が雲の高さまで上がる。
氷花が使える魔法の中で
「ハァ、ハァ、ハァ、…………」
最大威力で強力な魔法を発動させたため、体に多大な負荷が掛かってしまい、全身が痛い。
(今の攻撃で倒せてなかったらかなりまずいかも)
氷花の胸に焦りが募る。攻撃を当てることが困難なシャドウの隙を突いての攻撃だった。本当は
辺り一帯に
「いない?!………シャドウの魔力がどこにも感じられない。死んだ?!……それとも………まさか?!」
魔力が感じられなくなるのは隠蔽で魔力を隠されるか、死んだかだ。まず前者はあり得ない。氷花の
だが、シャドウだけは。彼だけはもう1つの。思わず可能性から外したくなるあの魔法がある。
氷花が焦りと共に辺りを見回すと真上にシャドウが姿を現す。服が焼け焦げ、全身に火傷が生じ、左腕に至っては黒く炭化しており、動けるのが不思議なくらいの状態だった。そんな状態でも顔には優雅な笑みを浮かべこちらを見下ろしていた。
「………嘘……でしょ……」
氷花の口から乾いた声が漏れる。不意打ちの
再びシャドウの姿が消える。
ドカッ!!!
シャドウが一瞬で近付き、氷花の顔に横蹴りをくらわせたのだ。氷花の口から血が噴き出す。
「さすがに今の攻撃は焦りましたよ。
シャドウの左腕が自分で行った攻撃の衝撃でバキンッ!と砕け散る。
「本当はもっとあなたを痛めつけてから殺したいところですが。あなたは危険すぎます。ですので………僕のとっておきの技で一瞬で葬ってあげましょう!」
地面に落ちていく氷花の周りに無数の
やがて
竜巻の真上に浮いているシャドウのガブリエルに膨大な量の魔力が集まっている。銃口に巨大な魔法陣が展開され、ガブリエルに集まっていた魔力が流し込まれている。紫色に強く発光し、チャージが完了した。
「これで
[
極太のレーザーが発射され、動けずにいる氷花に直撃。氷花の魔力障壁は一瞬でパリンと儚い音をたてて砕け散る。全方向からの魔力弾と必殺の威力を持ったレーザーが氷花を紫の光に呑み込み、地面に大きな穴を穿った。
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