バトルファッカーケン① 序章 はじまりのビギニング(七里田発泡)

「ご主人さまぁ~ん。気持ちいいですかワン?」


 俺の股座に生えたチソチソをイヌ型生体ロボ『すけべイヌ』が貪るように喉元まで咥えこみ、ぐぽぐぽと音を立てながらしゃぶっている。マンネリ化してきた由紀とのセックスに新たな刺激をと思い、ZOMAZONEで『すけべイス』を購入したつもりが、『すけべイス』の代わりにやってきたのがこの『すけべイヌ』だった。ちなみに『すけべイス』とは通常の椅子とは違い、座るところがU字に抉られているイスのことである。もし自分で購入はしたくないけども『すけべイス』を見てみたいという方がいれば飛田新地あたりのソープランドに行くといい。風俗嬢が椅子のU字型の窪みに手を入れ、顧客の局部(ちんぽ)を洗っているところを見ることができるだろう。もろちんタダというわけにはいかない。見物料はそれなりに払わなければならない、太陽フレアの影響で誤作動。


「くっ…… これはなかなか……。 いいゾーこれ」


 俺は『すけべイヌ』から与えられる官能的な刺激に絶賛、必死に耐えている最中だった。『すけべイヌ』の頬の内側は大量のとろとろローションでぐっしょりと濡れそぼっており、一瞬でも気を抜けばすぐに俺はオルガズムってしまうことだろう。


 地震が発生し、すけベイヌの背後にあった洋服箪笥が前倒しに倒れてきた。


「うおっ……やっべ」


 洋服箪笥はすけべイヌの後頭部に直撃しその衝撃でおれはすけべイヌからチンポを食いちぎられてしまった。


「うおっ……イッテ」


 その時不思議なことが起こった。

 俺の身体が突然すっごい光を放ちはじめたのだ。


「うおっ……すっげ」


 ####


 遡ること2日前。違和感は玄関前に置き配されていたダンボール箱を持ち上げた瞬間からあった。プラスチック製の椅子にしてはずっしりと重たかったのだ。首を傾げながらも俺はダンボールを自室の中に持ち運び、中身を改めてみた。するとこの『すけべイヌ』が厳重に緩衝材に何重にも包まれた状態で箱の中に納まっていたというわけだ。俺は思わず頭を抱えた。何故ならば頼んだ覚えがない品物が玄関前に置き配されていたからだ。


(配達ミスかよ。クソが)


 カスタマーサポートセンターに問い合わせの連絡を入れる前に、俺は念のためスマホを右ポケットから取り出すとZOMAZONEの購入履歴を確認する。(俺はそういうところは意外とちゃんとしているのだ)


 注文日は2日前。ジャンルはアダルト。商品名は……『すけべイヌ』となってる。俺は再度頭を抱え、発狂した。『スケベイヌ』の『ヌ』の部分を『ス』と見間違えたのだ。振り返ってみれば確認ボタンを押す前、俺はアダルト用品は総じて価格帯が高いがプラスチックでできた椅子ごときがどうして何万もするのだろうと不審に思った瞬間があった。何たる失態ッ! ホーリーシット(聖なるウンコ)な自分のケアレスミスに俺は思わず頭を抱えた(本日2度目)。注文確定する前に自分の注文ミスに気づくべきだった。どうして確認しなかったんだろう。あの時の俺は恐らく寝ぼけていたに違いない。


 しかしこの『すけべイヌ』という商品はいったい何だろう。マニュアルらしきものを探してみるが箱の中には見当たらなかった。この時俺は既に『すけべイヌ』に魅せられていたのかもしれない。この日を境に、俺の日常は大きく一変することになった。まさか、ごく普通のどこにでもいるような一般人である俺が『ディルドーデストルドー』と『バター犬愛好会』の間で繰り広げられてきた血で血を洗うような凄まじい抗争の鍵を握る重要なキーマンだったなんて、この時の俺は知る由もなかった。


作:七里田発泡

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