第34話「天聖獣、降臨」

「これが……グレンたちの真の姿……!」

「綺麗……」

「かっっっけぇ……」

「わわわ!すごいすごいでっか~い!」

「夢じゃない……これ、本物だ!?」


相棒たちを見上げて、俺たちは思い思いに歓声を上げる。

横に並んだカラフルな体色の伝説の聖獣たち……ファンタジー戦隊のお約束キタコレーーーーー!!


こう、生物然とした見た目がとてもいい!

額には腕輪と同じ色の宝玉が輝いてるのも、統一感があってすごく綺麗だ。


って事は始まるのか……巨大戦!

うひょ~!不謹慎かもしれないけど、すっごいワクワクしてきた!!


「既に天命尽きた巨人の戦士よ。冥界の淵に戻るがいい!」

「グゴォォォォ!!」


ギガンテスは雄叫びを上げ、右腕の大砲を発砲しながら迫る。

だが、グレンたちは全く動じない。


「ロック!」

「おうよ!隆起しろ、大岩壁!」


巨牛ロックが数歩、前に出る。

技名らしきものを叫んで前足を大地に叩きつけた直後、地面が隆起しギガンテスの砲弾を受け止めた。


「じ、地面が……壁になった!?」

「グゴ、グゴゴォォォォ!!」


岸壁を破壊しようと、大砲を連射するギガンテス。

しかし、大地そのものを隆起させた岸壁は、その全てを受け止めビクともしない。


「次はあたしだよ!そらっ!」

「行けー!ハヤテー!」

「グガッ!?グガゴッ!?」


続けて不死鳥のハヤテが、その巨大な翼を羽ばたかせて竜巻を巻き起こす。

竜巻に巻き込まれたはギガンテスは目を回し、大きくふらついた。


「ヒョウガ、合わせてください」

「フッ、余裕だとも」


その隙を見逃さず、大海蛇ミーナと氷角獣ヒョウガが同時に畳み掛ける。


「ウォーター・スプラッシュ!」

「フリージング・スタンプ!」


蛇行しながらギガンテスの背後に回り込んだミーナが、その足元を狙い口から高圧水流を放つ。

そしてヒョウガが前足を大地に叩きつけると、その地点からギガンテスの足元へ、強い冷気が迸った。


あっという間にギガンテスの足元は凍りつき、ギガンテスはそのまま足を滑らせて転倒した。


「いいぞーヒョウガ!」

「ミーナもグッジョブ!」

「愛らしい少女からの声援とは、いい身分だなミーナ」

「いちいち僻まないでください。グレン、あとは任せます」


そしてグレンはギガンテスを見下ろせる位置へと飛翔すると、口をガバッと大きく開いた。


炎が渦巻き、火球へと形を変えていく。

ギガンテスが空を見上げた時、それは力強く解き放たれた。


「死せる者は塵に還れ、灰燼帰す紅蓮の轟咆ドラゴニックバースト!!」

「ウゴァァァァァァァァァッ!!」


ギガンテスは炎に包まれ、焼き尽くされていく。

その炎は氷を一瞬で蒸発させ、やがてギガンテスを骨まで灰燼に変える。鋼鉄に覆われていた部分さえも、その熱で蒸発した。


「やった……のか……?」


火柱となっていた炎が消える。

残されていたのはギガンテスの足跡と、焦げた跡と灰のみ。


そして隆起していた大地も、時間を巻き戻すかのように元に戻っていった。


「ああ。我々の勝利だ」


青空を背に、天聖獣たちがこちらを振り向く。

神々しい雰囲気と威厳を放ちながらも、その顔はとても穏やかで。

その表情が、俺たちの緊張を一気に緩ませた。


「や……やったぁぁぁぁぁ!!」

「おっしゃあ!!」

「やりましたよ皆さん!」

「ふぅ……ようやく終わったのね~」

「なんか、ドッと疲れが……」


両手を挙げて喜び、仲間たちと勝利の喜びを分かち合う。

義彦くんは真っ先にハイタッチを交わしに来たし、槍木なんかはガッツポーズしてる。


真魚ちゃんと弓宮さんは、疲れで互いに肩を預けていた。


「た……助かった……!」

「死ぬかと思った~~~~!!」

「生きてる……生きてる!!よかったぁぁぁぁ!!」

「でも俺らこの後牢獄行きだぁぁぁ」


ゴブリンたちも、死なずに済んだ事を喜んでいるようだ。

敵とはいえ、目の前で死なれなかった事は嬉しく思う。じゃなきゃ寝覚めが悪い。


そういや、ユスティは……。


「……うぅ……」


……ん?

今、視界の端で何かが地面から這い出したような?


思わず顔を向けると、そこには……。


「し……死ぬぅ……寒いし……熱いし……ぐぅ……」


黒焦げになったユスティが、バタッと倒れるところであった。


「あいつ……まだ生きてたのか……」

「直前に氷漬けにされて、それが地面に埋まっていたおかげで生き長らえたのだろう。悪運の強いやつだ」


グレンが呆れたように呟く。ここまでしぶといと、逆に賞賛できるな……。

でもまぁ、死ななくて良かったと思う。思う所は色々あるけど、この気持ちだけは本心だ。


「気絶してるうちに運んじまおうぜ。起きたらぜってぇ面倒だろ」

「そうね。さっさと兵士の人たちに引き渡しちゃいましょう」

「じゃあ、僕が担ぎます」

「それなら、凍らせたゴブリンさんたちは私が引っ張るね~」

「戻ったら、レイアさんたちにお礼言わないとな」


こうして、俺たちは城門の方へと足を向ける。

戦いが終わった平原を、西に傾いた日が照らしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る