第21話
「え?サーリャの地に?」
ランビーノはミネアに、山の民の長、アメジストと話したことをそのまま伝えた。
ミネアは、自分の母親が山の民の長の長女であったこと、そして、自分自身がサーリャの地の後継者であることを知り、息を飲んで考えた。
ミネアは、まだ見ぬ母が、恋のためにカルデア王国へと行き、サーリャの地を捨てたことが理解できた。
「お父さん、きっと、恋が母を動かしたんだ。それくらいカルデアの王を、サリーンは愛していたんだね」
ミネアは部屋の窓から空を見上げ、もはや会えぬ母を想った。
「きっと、愚かな行為と見えても、愛は何より、母にとって大切なものだったんだ」
ミネアは、青い空に微笑んで話す。
(ミネアは、なんだか、大人の色気というか、大人の顔をするようになったな。これが、愛の力か)
ランビーノは、ミネアの澄んだ目を見ながら感慨深い思いになった。
「それで、お父さんは、これからどうしたら良いと思う?」
ミネアは、ランビーノを振り返って言った。
「俺は、カリューシャに勝つためにも、サーリャの地へ行き、アメジストと話をしたほうが良いと思う」
「なぜ?」
「サーリャの地の後継者であるなら、魔法を唱えることができるはずだ。カリューシャに勝つためには、魔法を習得する必要がある」
ランビーノは、冷静な目をして言った。
「前の私なら、剣術だけで闘おうと思った。でも、今は、王子を助けるためにも、魔法を使えるようになりたいと思う」
ミネアは、サーリャの地へ行くことを了承して言った。
「相成る術を受け入れる。強くなったな」
ランビーノの表情が、柔らかくなる。
「不思議だけど、王子のためと思うと、違うものも受け入れられる」
ミネアは、ふつふつと湧き上がってくる愛の力に自分でも驚いていた。
「ミネア、サーリャの地から、そのままカルデア王国へ向かえ。俺は、一足先に、カルデアへ行って、情報を集めている」
ランビーノとミネアは、お互いに頷き合い、これから起こる決戦に、覚悟を決めた。
ミネアは、すぐに準備をすると、サーリャの地へと向かった。ランビーノに言われた道を辿り、旋風の如き足で駆けた。
まだ陽が明るい頃に、サーリャの地へ到着する。山岳の地形を、ランビーノに教えられた道順で進んで行くと滝へと辿り着く。
(確か、お父さんは、滝に着けば、迎えがくると言っていたけど、、)
ミネアは滝に降りて、鬱蒼と茂る木々を見渡す。
「待っていました。ミネア様」
声のほうへ振り向くと、木の枝に座っている、豊かな赤い髪を光らせる、アメジストが笑っていた。
「アメジスト?」
「はい。貴方の母の妹です。だから、ミネア様にとっては、叔母ですね」
アメジストは木々を飛び、ミネアの前に降り立って、再び、ニッコリと笑って言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます