第14話
ランビーノは風に乗り、山々を駆け走った。サーリャの地は、アリシア王国とカルデア王国の間に挟まれている。
サーリャの地に、魔法陣が敷かれていることを、ランビーノは知っていた。サーリャに一歩でも入ると、不思議な力が働き、鞘から剣が抜けなくなる。
サーリャは山々に囲まれている。山の民の集落のみが、人々の生息地であった。集落への道を駆けるのは、2度目であった。ランビーノは、幾つかの罠を避けて、風穴の滝へ向かった。滝に着くと、勢いよく流れる水に手をあて、波動を作る。
「何者だ?!」
白い衣を着た、女の声だった。
(まずい、見つかったか)
ランビーノは、波動を作る力に一層の力を入れた。
(早く開いてくれ!)
「1826798αβ」
白い衣の女は、右手の杖を上げ、魔術の記号を唱える。
女の手から、炎の柱が立ち、炎は火柱のようにランビーノに襲った。
(魔術の使い手か。)
ランビーノは、波動に力を込める手をやめ、3回転をして火柱を避けた。避けきれず、右手が火に擦り火傷を負う。
(剣が抜けない。やばいな)
「1826798αβ」
白い衣の女は、再度魔術の記号を唱え、ランビーノに炎を浴びせる。
ランビーノは、炎の攻撃をするりと避け、鞘で炎を打ち返す。
炎は、滝に打ち返され、ジュワッと消えた。
「182679468904βαβα…」
白い衣の女が、より強い炎の魔法を唱えようとしたとき、
「やめよ。我の客人だ!」
山の民の長が現れ、声高く叫んだ。
白い衣の女は、長を見ると、魔術の記号を唱えることをやめ、恭しく頭を下げた。
「伝えなくてすまぬ。帰って良い」
山の民の長、アメジストは、優しい口調で、白い衣の女に言った。
白い衣の女は、丁重に長に礼をすると、
「6540421α」
と杖を振って唱え、空を飛んで去っていく。
「久しぶりだな、ランビーノ」
アメジストは、狼に乗って、ランビーノの前まで走ってくる。
「久しぶりだな。元気か?リャン」
ランビーノは、狼のリャンの立髪を撫でて笑う。リャンは、ランビーノにすりすりと擦り寄り、ペロペロとランビーノの手を舐めた。
「来るなら、連絡をしてくれば良いのに。こんな手荒な歓迎は、しないぞ」
アメジストは、苦笑しながら、リャンから降りて、ランビーノに手を差し伸べた。
「すまない。緊急のことでな。連絡する時間がなかった」
ランビーノは、アメジストの手を取り、恥ずかしそうに笑う。
「タンジア王子のことか?」
アメジストは、先手をとって聞いた。
ランビーノは、溜め息をつく。
「そうだ。何が何だか、よくわからん」
ランビーノは、リャンにキスをして、アメジストの後ろに乗った。
「わかった。とりあえず、我が家に行き、ゆっくり話そう。久しぶりの再会だ」
アメジストは、柔らかに微笑み、リャンに、
「よし、いけ!」
と、立髪を愛撫して命令を伝えた。
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