お泊まり
リビングで瑠奈と適当に過ごしていると、お母さんが帰ってきた。
お母さんは瑠奈に挨拶をすると、すぐにご飯を作り出した。瑠奈がお母さんに手伝うと言い、手伝い出したので、私も手伝おうと思ったら、お母さんに「あんたは不器用なんだから、大人しくしてて。気持ちだけ貰っておくわ。ありがとう」と言われてしまった。不器用なのは事実なので、時間がかかりそうだし、私は先にお風呂に入ることにした。
その事を二人に向かって話すと、お母さんは好きにしてって感じだったけど、瑠奈は口には出さないけど、何故か不満げだった。
もしかしたら瑠奈は私と一緒に入りたかったのかもしれない。けど、もう高校生だし、お母さんの前で一緒に入ろうとか言ったら変だと思うから、私は瑠奈のことを無視して、脱衣所に向かった。そもそも仮にそうだとしたら、普通に恥ずかしいし。
はぁ〜、気持ちよかった。
そんなことを考えながら、お風呂を上がった私はリビングに戻った。
すると手伝いが終わったのか、ソファーに座っていた瑠奈が何故かびっくりしたように私のことを見てきた。
……何か変かな。そう思い私は自分の服装をまずは確認する。あれだ、一言で言うならかなりラフなパジャマだ。でも、ラフとはいえ別に露出が激しいとかでは無いし、瑠奈がびっくりする理由にはならないと思う。
じゃあ、なんでだろ……上の下着つけてないのがバレた? こんな一瞬で? そうだとしてもそれは許して欲しい。あれ、寝る時に付けると眠りにくいんだよ。
「れーな、髪がベタベタ!」
「いや、ちゃんとタオルで拭いたけど」
「ドライヤーまでしないと!」
どうやら瑠奈は私の髪を見て驚いてたみたいだ。まぁ、そうだよね。流石に入った瞬間に私がブラジャーつけてないなんて気が付かないよね。気がついたとしても、別に気にすることじゃないだろうし。
「私がやってあげるから! そんなんじゃ風邪ひいちゃうよ」
「いつもこんなんだから大丈夫」
「そういう問題じゃないの!」
そう言う瑠奈に私は無理やり脱衣所まで連れてこられた。
無理やりって言っても別に抵抗した訳じゃないけど。
「私の部屋でしてくれない?」
「えっ、な、なんで?」
「ここ、座る場所が無い」
「そ、そういうこと……うん。いいよ」
立ったままだと瑠奈もやりにくいだろうし。
お母さんにご飯になったら呼んでと言い、私たちはドライヤーを持って階段を上がり、私の部屋に向かった。
私は部屋に入るなり、すぐに椅子に座った。
瑠奈がドライヤーのコンセントを刺し、私の方にやってくる。
「始めるよ」
「うん」
瑠奈の手で髪をわしゃわしゃされながら、私は髪を乾かされてる。……一度だけだけど、私も自分でドライヤーをした事があるんだけど、その時とは違う……なんか変な感じ。嫌じゃない変な感じ。自分じゃない人にやってもらってるからこうなるのか、瑠奈にやってもらってるからこうなるのかは分からない。
「終わったよ」
私がそんなことを考えてたら、いつの間にか髪は乾いてたみたいだった。
……もうちょっと瑠奈に触って欲しい。いつもは瑠奈が私に甘えてくるけど、たまには私だって瑠奈に甘えてもいいと思うんだ。
「瑠奈、頭……撫でて?」
「えっ!? れーな?」
「……嫌ならいい」
「い、嫌な訳じゃないから! れーながそんなこと言ってくるの珍しくて……」
珍しいと言うか、こんなこと言ったことないし。今、甘えたい気分だったってのもあるけど、瑠奈が私が瑠奈のこと好きなの全然信じてくれないから行動でも頑張って示そうとしてるんだよ。
「こ、これでいい?」
「……うん」
いつも瑠奈が私に撫でられてる時もこんな感じなのかな。……ただ、頭を撫でられてるだけなのに、暖かくて、瑠奈を感じられて、幸せな気分になれる。
「もういい」
「あ……」
しばらく頭を撫でられて冷静になってきたら、急に恥ずかしくなってきたので、私は無愛想にそう言い、部屋を出て階段を降りていった。
「もうすぐできるからね」
リビングに入ると、お母さんがそう言ってきた。
「うん」
私はそう返事をして、ソファーに腰をかけた。
すると、瑠奈が私の隣に座った。……妙に距離が近い。いつも割と距離は近い方だけど、今はいつも以上に近い。さっき私が変なことしたから、そう感じてるだけかもしれないけど。
瑠奈は何も言わず、私の方に体を預けてくる。抵抗する理由もないので、そのまま私も何も言わずに、過ごした。
「出来たわよー。相変わらず仲がいいわね」
「まぁ」
瑠奈は気がついたら私に体を預けながら、小さく寝息を立て眠っていた。
私は瑠奈を優しく起こし、夜ご飯を一緒に食べた。
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