お泊まり2

「ご馳走様」

「ご馳走様。美味しかったです」

「そう言って貰えて良かったわ」


 そして何故かそのまま二人で会話が盛り上がっている。こういう時も瑠奈は凄いと思う。私だったら絶対瑠奈の両親とこんなに会話を盛り上げることなんて出来ないし。いや、両親どころか瑠奈と喋る時だって会話を盛り上げたりしてないな。

 まぁいいや。二人で喋ってるし、私は部屋に戻ろう。




 部屋に戻った私は、お風呂にももう入ったので、ベッドに横になりスマホを弄っていると、美菜璃からメッセージが着た。


【ちゃんと無事に帰れた? 迷子になってない?】


 ……無事に帰れたかの心配はともかく、迷子にはなるわけないでしょ。いくら美菜璃の家に初めて行ったからって帰り道ぐらいわかる。


【帰れた】

【良かった】


 美菜璃からのメッセージが帰ってきたと同時に扉がノックされた。


「れーな、入っていい?」

「いいよ」


 この前の事で学習したのか、この前は私が寝てると思ってたからノックしなかったのか、どっちなんだろ。どっちでもいいか。

 

「何?」

「着替え貸して欲しくて」


 あぁ、そう言えばそんな話してた気がする。

 着替えを貸すってどこまで貸せばいいんだろ。服はともかくとして、下着とか。上の方はサイズの問題があるだろうし、貸せないとして、じゃあ下は?


「下着も?」


 結局考えても分からなかったので、素直に聞いてみる。


「……い、いいの?」

「上はサイズの問題があるから無理だけど、下は瑠奈がいいならいいよ」

「じゃ、じゃあ借してください」

「そっちの棚に入ってるから、適当に持って行って」


 そう言うと、何故か瑠奈は顔を赤らめ、恐る恐るといった感じで棚を開ける。

 瑠奈は色々見た後に、さっきより顔を赤くしながら言う。


「こ、これ借りてくね」

「うん」


 もしかして、私の下着を見るのが恥ずかしかったのかな……でも、洗ってあるし、ただの布だと思うんだけど……分かんないし、いいか。


 私が不思議がっていると、瑠奈が私が貸した着替えを持ちながら、挙動不審に部屋を出ていった。

 瑠奈が部屋を出て少し経ってから階段を降りていく音が聞こえたので、普通にお風呂に入りに行ったんだろう。






 しばらくすると、お風呂に入った瑠奈が戻ってきた。私と違ってちゃんと自分でドライヤーをしたみたいで、髪が乾いてた。それでも、肌に赤みが残ってるから、ちゃんとお風呂に入ったんだと分かる。そもそも、服が私のになってるし。


「私もベッド行っていい?」

「いいけど、私もう寝ようとしてたんだけど」

「私も寝るから」

「一緒に寝るの?」

「……違うの?」


 いや、知らないけど。瑠奈が一緒に寝たいなら寝ればいいし、嫌なら布団を敷く。


「瑠奈がしたいようにして」

「じゃあ、一緒に寝よ?」

「うん。電気消してから来て」


 瑠奈がそう言ってそのままこっちに来ようとしてたので、電気を消してもらうように言う。

 瑠奈が電気を消してくれたので、何も見えなくなった私は、瑠奈がわかりやすいようにスマホのライト機能を使う。


「ありがとう、れーな」

「ん」


 私はベッドの奥に行き、布団を少し持ち上げ、瑠奈を急かす。


「お、お邪魔します」


 瑠奈は緊張してるのか、変なことを言う。いや、これが普通なのかも?


「あ、暖かいね……」

「そりゃ、私がずっと入ってたし」

「う、うん。……れーな、もうちょっと近づいていい?」


 ……同じベッドで寝てるんだから、今でもかなり近い距離感だ。その上でまだ近づくの? 流石にこれ以上は恥ずかしいんだけど。


「……だめ」

「うん……」


 私はちゃんとだめと言ったのに、何故か瑠奈はそのまま私に近づいてくる。同じベッドなので逃げ場なんてあるはずもなく、近づいてきた瑠奈に私は抱きつかれた。

 そして抱きついてきた瑠奈の腕が少し私の胸に当たった。

 

「え……」


 私の胸に瑠奈の腕が当たった瞬間に、びっくりしたような声を上げ、反射的に瑠奈が少し離れていった。

 ……確かに、私は断ったし、恥ずかしいからそれ以上近づかれるのはちょっと……とは思った。けど、その反応はいくら私でも傷つく。そんなに触りたく無かったのか……


「な、なんでブラつけてないの!?」

「瑠奈も今つけてないでしょ」

「そ、そうだけど、それは今持ってないからで……れーなはあるじゃん!」

「寝る時邪魔だし」

「い、いつもつけてないの?」

「いや、学校行く時とかはつけてるよ」

「あ、当たり前でしょ」


 良かった。そこは誤解されてないみたいだ。瑠奈にそんな変態と思われるのは嫌だし。


「れ、れーな……その、さ、触ってごめん」

「何が?」


 急に瑠奈が謝ってきたけど、これは……胸のことを言ってる? だとしたら私の方こそ触らせてごめんって言いたいよ。


「む、胸触っちゃったでしょ」

「うん。ごめん」

「な、なんでれーなが謝るの?」

「いや、貧相なものを触らせてしまって」

「そ、そんなことないから!」


 ……それは何に対して言ってるんだろうか。貧相なものに対して言ってるのか、触らせてしまったことについて言ってるのか。


「でも、反射的に離れてたじゃん」

「そ、それは……だって、好きな人の、胸触っちゃったら、だ、だれだってああなるでしょ!」


 え……そうなのかな? 仮に私が瑠奈の胸を意図せず触ったとして……あ、確かに瑠奈みたいになるかも。


「だ、だから……触っちゃってごめん」

「いや、いいけど」

「え」


 意図してのものじゃなかったんだし、仕方ないと思う。ガッツリ揉んできたわけでもないんだから。

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