面と向かって謝ることが大切
扉を開けると、瑠奈が待っていた。瑠奈が待っているのは予想どうりだったから、私はすぐに瑠奈の手元を確認した。良かった、何も持ってない。
それを確認して安心した私は言う。
「ただいま」
「おかえり」
瑠奈はいつも通りの声色でそう言う。
あれ、私が想像してたより怒ってない? メッセージだから怒ってるふうに感じただけで、実際はそれほどだったってことか。
「はいこれ、鍵返すね」
「ありがと」
瑠奈から貸していた家の鍵を受け取った私は、鍵を適当にカバンの中に入れた。
そして瑠奈に帰らないのかを聞こうとすると……
「楽しかった? 私を忘れてあの子と遊ぶの」
……随分トゲのある言い方な気がするけど、気のせいかな。
取り敢えず、それは置いておいて、私は瑠奈のことを忘れてなんかいななかったことを伝えた。
「忘れてた訳じゃないけど、楽しかった」
「……へぇ、忘れてた訳じゃないのに、こんなに遅く帰ってきたんだ。早く帰るって言ったのに」
これって単純に美菜璃と遊ぶのに夢中で時間を忘れてたって言ったら余計まずいことになるかな。
でも、それがほんとだし、それ以外にどう言ったらいいのか分からない。
「……違うから」
咄嗟に私はそう答えていた。
「何が?」
ほんとに。何が違うんだろうね。
「瑠奈、もう今日は遅いし、帰ったら? 送ってくから」
「話をそらさないで」
「いや、逸らしてないから。ほら、外、もう真っ暗だから」
どうしたら瑠奈をこれ以上怒らせずに穏便に解決出来るかがもう分からなかったので、私は話を逸らしていた。
「……私、今日泊まっていく」
「何言ってんの」
瑠奈の親に許可を取ってないし、それはスマホで許可が取れたとしても、私のお母さんが許可をくれるかは……私のお母さんならむしろ喜びそうだった。
私がそんなことを考えているうちに、瑠奈はどこかへ電話を掛けていた。
「――うん、分かった」
そう言って瑠奈は電話を切っていたので、どこに掛けたのかを何となく察しながらも聞こうとしたら、瑠奈はもう一度電話を掛けていた。
「はい、今お家にお邪魔させていただいているんですけど、れーなが外も真っ暗で帰るのが危ないと過保護なので、今日は泊まって行っていいでしょうか」
いや、確かに危ないとは言ったけど、私は送って行くって……
「はい、ありがとうございます」
そう言い瑠奈は再び電話を切る。
「……どこに掛けたの」
「私のお母さんとれーなのお母さん……あ、お義母さんって呼んだ方がいいかな?」
……瑠奈が泊まること自体はいい。正直夜も瑠奈と一緒にいられるのは嬉しい。けど、着替えとか持って来てるのかな……仮に取りに行くんだとしたら、もうそれは普通にそのまま帰ったらいいと思うんだけど。
「お義母さんももうすぐ帰ってくるんだって」
「そりゃ知ってるけど……と言うかお母さんの前でその言い方しないでよ」
「えー」
そんな不満そうな表情してもだめだから。
「それと、着替えは?」
「れーなの借して」
「……サイズ違うでしょ」
「大丈夫だよ」
……まぁ、大して変わらなそうだしいいか。
「リビングか私の部屋行こ」
私たちは未だに玄関でやり取りをしていたので、そう瑠奈に提案する。
「まだ、何が違うのか聞いてない」
……覚えてたのか。でも、考える時間があったから分かる。今すべきことが。
「ごめんなさい」
そう言って私は頭を下げた。
そう、確かに私はメッセージでは謝ったけど、顔を合わせてからは謝ってなかったんだよ。だから謝る。
「……貸一つね」
「分かった」
それで許して貰えるなら全然いい。
そして私たちはリビングへ向かった。
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