第11話 何気に美味い

 グズマルド鉱山に着いた俺たちは、とりあえず今日は山に入る入山口でキャンプすることにした。着いたのはお昼だったので今のうちに少しでも先に進むべきだと話したが彼女はチッチッチとウインクしながら指を振って俺を見つめてくる。

「分かってないなぁ〜。ここまで来るのに僕たちは何体の魔物を狩って捌いたと思っているんだい? あんなに捌いていたら服や武器、捌くための道具が血まみれ脂まみれで悪臭を放っているだろ? だからここで武器と防具の手入れをしておく必要があるのさ」

 そういって彼女はトラックの助手席に置いてあるバックから砥石と思われる物と布切れを取り出して解体用のナイフを火で炙り、ナイフについた脂を溶かして布切れで拭き取る。

「お肉焼けてきたけど、このくらいの焼き加減でいいのかな?」

 こんがりときつね色に焼けた肉の串を指と指の間に挟み、持ちながら後ろにいるミィルにアピールするように左右に振りながら振り返ると、彼女は火を使って暑かったのか上着を脱ぎ胸にサラシを巻いた姿でナイフを砥石で研いでいた。

「あのぉ〜っ、お肉が焼けたんですけど?」

 集中してナイフを研いでいるためか、全然彼女は気づいてくれない。

「ねぇ〜先に食べちゃいますよ?」

 気づいてくれない彼女の後ろに立って、口元に串を持っていく。

「モガッ! もごもご! もごっ! モゴゴモゴ! もがもが! モキュッン!」

 食べながら喋るから何を言っているのか全く理解できない……。

「ありがとう! いつからそこに居たの?」

 串の肉を食べ終えた彼女はナイフが研ぎ終わったのか手を止めて後ろを振り返り、不思議そうに首を傾げながら俺を見つめてくる。

「焼けてから声を1度掛けて反応がなかったから後ろから中串を口元に持っていった。まぁ、それは別にいいんだけどさ……」

 そういって胡坐をかく彼女を見つめる。

「なっ、何? そんなに見つめないでよ!」

 顔を赤くして胸を隠すように身体を丸めて睨みつけてくるが、全く怖くない……。

「いや、女の子なんだからさ……。もう少し恥じらいってものを持とうよ……。その上着を脱いでサラシだけとかさ、胡坐もだけど……。スカートでの座り方じゃないと思うんだよね…。俺も男ではあるんだから気をつけて欲しい」

 そういって肉串をもう1つ彼女に渡して自分も座り食べ始める。

「ごめん、気をつけます」

 そういって彼女も服を整え、隣に座り渡した肉串を頬張る。

「あの猪、何気に美味いな」

 にんにくとハーブで焼いて臭みをとった肉は結構美味しくて意外だった。

 



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