第10話 異世界から来た勇車

「ギャッ」

 車の後ろから悲鳴のような鳴き声がした後ズンっという振動と同時に身体が前に飛び出そうなところをシートベルトがしっかり守ってくれた。

【シートベルト 忘れないでね 絶対に!】

 そんな交通安全標語が、ふと頭によぎったのは言うまでもない。

「ナイスアタック!」

 助手席の窓から身を乗り出している彼女はそういって矢筒から次々と矢を射っていく。その度に悲鳴のような「グギャッ」「ギギッ」「ギャッ」と、とても蛇や猪が出すような鳴き声ではなく、まるで人が……。これ以上考えるのはやめようと思い、地面に横たわるサーペントボアの毛皮と肉は高く取引されるらしいので捌くことにする。


 数時間後


「やっと捌き終わったね! いやぁ〜思ってたより大きかったから予定より時間かかったよ」

 そういって彼女は嬉しそうに捌いたサーペントボアの猪の頭の部分の肉を一口大の大きさにして木の枝で作った串に刺して塩胡椒して葉っぱに絡む。

「ん? あぁ、コレは今日の夕飯用の下拵えだよ」

 どうやら今日の夕飯らしい。

「でも山に行って鉱石を採取してくるだけなら、そんなに時間は掛からないのでは?」

 トラックとはいえ、まだ日は高いので採取だけなら夕飯が必要な時間にはもう終わっていると思うのだけど……。

 彼女は俺の疑問に答えるように首を横に振り

「山の中は何回層にも分かれていて僕達が頼まれたアパラチア鉱は下層にあるんだよ。いくら君の召喚魔獣……。トラックだっけ? があったとしても1日は最低でもかかるよ。だって普通の冒険者なら1週間以上かかるからね! 街から往復で3日、採取で4日ってところを君は往復1日、採取で3日って感じだとは思うけど……。だからこのサーペントボアは都合の良い食料なのさ!」

 そういって彼女は嬉しそうに捌いた肉塊をトラックの荷台に入れていくので俺は肉を入れている手前のラゲッジルームの温度をマイナス30℃に設定する。

「それじゃあお肉も入れたし行こうか!」

 そういって助手席に戻る彼女を見ながらトラックの横に現れたステータスボードのような物を見る。

【ツーエバトラック】

【称号】

 異世界から来た勇車

【スキル】

 不壊 物理特効 完全治癒 状態異常無効

 水上走行 飛翔 不可視 

 どうやらトラックの性能がぶっ壊れらしい……。

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