第5話 最強の矛と最強の盾 今ここに矛盾が生まれる
「うぅ〜っ頭が! 頭が割れるくらい痛い!」
そういってミィルは頭を抱えながら俺の後をヨロヨロとついてくる。
「パーティになったんですから防具とか武器を購入するのに着いてきてもらうのくらい良いですよね?」
そういって二日酔いエルフのミィルを鍛冶屋が建ち並ぶ工房街に連れ出す。
「音が頭に響いて痛い、痛いんだよ。それに君は昨日、召喚してた召喚魔獣で戦うんだし武器や防具は必要ないんじゃないかな?」
確かに彼女の言う通りなのだが、せっかくの剣と魔法の異世界、男なら一度は憧れるじゃないですか! 武器とか魔法で俺強ぇぇーって! 見た目だけでも強そうに!
「兄ちゃん、この店には最強の矛があるんだけど見ていかないかい!」
キョロキョロ見ながら歩いている俺をカモだと思ったのかいかにも質の悪い商品を取り扱うような男が声をかけてくる。
「ありがとうございます。俺、防具も探してて」
そういって招かれた店の中を見渡すと防具らしい防具は取り扱ってないようだ。
「それなら、ちょうどいいのがこのあいだ東のダンジョンで見つかったんだよ」
そういって男性は店の奥に戻っていく。
「ダンジョンってあるんだ?」
後ろでへばっているミィルに声をかけると頷きかけたところで彼女は顔を真っ青にして店を飛び出していく。たぶん戻しに行ったのだろう。
「あった、あった! これが最強と言われる盾と矛だ」
店の奥から出てきた男は嬉しそうにニヤつきながら俺を見つめてくるけど、俺も笑い出さないために必死に取り繕っていた……。だって、これって矛盾の成り立ちのまんまじゃん! このあと矛で盾を突いたらどうなるって聞いたらこのエセ店主焦るだろうなぁ〜
俺はカウンターに置かれた矛と盾を見比べ笑いながら
「この矛でこの盾を突いたらどうなりますか?」
と尋ねるとエセ店主はみるみるうちに顔がミィルと同じくらい青くなっていった。
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