第4話 酒は飲んでも飲まれるな

「ほぇぇ〜っ! 魔法も剣もない平和な世界なんかがあるんだ! そんな世界あり得ないよ! だって仮に種族が人しか居ないにしても文化や言葉が場所によって異なるんだから特徴も変わるだろうし、自分と違う肌の色や言語を喋るって事だけで溝ってのは出来て、次第に広がりやがて争いは生まれるんだから……。だから平和な世界っていうけど、それはきっと表面上なだけで、もっと奥深くではきっと今も争いは続いていると思う」

 そう云いながら彼女は運ばれてきた取手の付いた小さい樽のジョッキを手に持ち、一気に飲み干す。

「確かにお兄さんの登場のタイミングとかも考えると不思議な点だらけだから何となく言ってることは正しいんだろうなぁ〜とは思うけど、その場合お兄さんは今後どうするの?」

 酔っ払いが急に現実を突きつけてくる。

「とりあえずは、さっきのオーガの買取金を使ってギルドで冒険者登録をしたからこの街で暮らしていくことになると思うけど?」

 そういうと彼女は頬を膨らまして不機嫌そうに顔を覗き込んでくる。

「何のために冒険者登録したのさ! 冒険者はね、冒険するものなんだよ! 定住して安定した暮らしがしたいなら商業ギルドに登録すればいいじゃないか! でも君は冒険者を選んだんだ、なら冒険しなきゃ損だろ! 君は僕のパートナーとして世界樹を目指す冒険をするんだ!」

 彼女はそういって俺のことをビシッと指差し床にへたりこんだ……。お酒がまわったのだろう……。1人だと心細かったので正直ありがたい提案だ……。それに初対面相手に酔い潰れるほどお酒を飲んで潰れている彼女を見る限り、人畜無害という言葉がとてもピッタリだと思う。

「よろしくお願いします。でも潰れる程飲まないでください」

 そういって床に横になっていつの間にか寝落ちしているミィルに笑いかける。

「よかったな! 兄ちゃんパーティ結成おめでとう! これは今日の勘定な」

 俺たちの会話を聞いていた酒場のマスターがメニューと金額が書かれた紙を渡してくる。

 メニューにはオーガの買取で得たお金の3分の1の値段が書かれている。

 エルフ側のテーブルを見てもお金は置いてない……。

 訂正、このエルフにはお酒は飲ませないことにする。

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