第2話 異常なし『とりあえずは』

『プゥゥーーッ!!』という消魂けたたましいクラクションの音で俺は目を覚ます。

 怪我は、流石にしてるよな……。きちんと身体は動くかな? とりあえず手をグーパーさせる。指先の感覚はきちんとあるので腕はきちんと繋がっているようだ……。


「あの〜、大丈夫ですか? 意識ありますか?」

 外から女性の心配そうな声が聞こえるが横転したトラックの運転手だろうか? 事故ったのに元気そうだ。こっちはお前のせいで巻き込まれたのに……。イラッとしたから怪我をさせてしまったのかもと思わせるために少しシカトしよう。

「どうしよう? いきなり現れて助けてくれたのは凄く嬉しいんだけど鬼牙オーガの処理はどうすればいいの?」

 女性は慌てている。あまり聞きなれない単語が彼女の独り言から出てきたが、きっと頭を強く打ったからだろう…。きっとそうだ。


「どうしよう反応が無いよ!! 僕を助けるために特攻して死んじゃったのかな? それだと僕の責任になって冒険者ライセンス剥奪されちゃうのかな? そしたら僕、生きていけないよ!! どうしよう、誰にも見られてないし、このまま放置して逃げちゃえばいいかな? でもこの人が生きてて『助けたのに見捨てられた』って言われたら僕の信用問題に発展するし……。いっそのこと燃やしちゃう?」

 どうしよう、めっちゃ狂気的な発言してる!? 起きて反応するべきなのか? でも、ちょいちょい聞きなれない単語出てきてるんだけど、ここって日本の千葉県にある京葉道路だよな?


 反応するべきか迷ったがとりあえず目を開き外を見ることにした。賠償金とかは後で考えよう。


 俺の目の前には血だらけで横たわる大きなトナカイの様な角が生えた熊とそれと俺をオロオロ慌てた様子で見つめる耳の尖った上半身裸の女性が居た。



「あっ! 目、覚めた!!」

 目が合った女性はそういって指を差してくるが…。正直、それどころでは無い。



「どこだよここ!! マジかよ! 嘘だと言ってくれ! まだPCのフォルダ消してないんだぞ!」

 そういって俺はハンドルをバンバン叩いて天井を見上げ、溜め息を吐いた。


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