第84話 : またしようね❤❤(碧の眼)

注)このエピソードには性的描写があります。タグに「性描写あり」を付けていないのはこの表現ではR15に該当しないと考えているからです。

 僅かでも性的表現を好ましく思わない方は以下の文章を読み飛ばしていただきたく存じます。



◇◇◇



 夫と一緒にベッドにいる。お互い生まれたままの姿だ。

 柔が帰ってくるまでもう少しだけ時間がある。


 二十年近く振りで男の人を迎え入れた。いや、迎え入れられたというのが正解だろうか。

 長い間わたしのを使っていなかったから、デキないかも知れないと不安だった。凌雅さんがいなくなってから誰かをなんてことを考えたこともなかったし、そんな機会が来るとも思っていなかった。


 夫婦としていつか体の繋がりを持つならば早いほうが良い。

 ヘタに気遣いをするくらいなら既成事実を作った方がお互い納得できる。凌雅さんもそういう考えで、初めては婚姻届を一緒に出した日のことだった──あの時はお互い未経験どうしだったから今よりも遙かに大変だったけど。


 夫から誘われるとは思っていなかった。その種の行為が目的なのであればとうの昔に何らかのアクションを起こしているはずだ。ところがそんな気配すら感じられなかった。

 その昔夫とキスをした時(お互いファーストキスだ)に彼が次を求めるのではなく、非常に申し訳なさそうに頭を下げてきたことを思い出した。私があの時ハッキリと同意の意思表示をしなかったのに──手を繋ぐところからいちいちしても良いかと彼は同意を求めてきたから、正直面倒くさかったのだ──してしまったと反省していたのだ。そんな純情すぎる人にをできる訳がない。


 彼から自分は童貞だと言われている。これまでの様子からしてそれは真実だろう。

 もちろん女性の扱いに慣れている訳はないから、ならば今日は私から攻めていくしかない。

 柔が帰ってくるまでの二時間少々が勝負だ。



 やはりというか、夫は女性経験が全くないらしく完全にマグロ状態だ。

 凌雅さんも私も昔は何をして良いかわからず、成人になっているというのに「何からする」みたいな感じで最初は記憶に残らないほど無我夢中で終わってしまった。

 痛かったという事実を覚えているだけだし、その時間だって今考えれば抱き合ってから数分もなかったと思う。


 彼にはそんな想いをさせたくない。

 プロの女性のようなテクニックはないけど、生娘ではないからそれなりのリードは出来るはずだ。



 凌雅さんも夫も男の人の最初ってそう言うモノだろうか。

 夫の場合は最初から私が上になったのだけど、あっという間に「ごめん」と言われた。安全日だからいくら中に出されても構わないけど、さすがに早い。

 このままだと彼は自信を無くしてしまう。男の人は誰しもこの手のことに関してはもの凄くデリケートな存在だということは施設で働く人達から聞いている。私達にとっては男性からの猥談などをどうやって躱すかはとても重要な問題だからその手の話は結構するのだ。


 夫には自信を付けて貰いたい。

 今日みたいに私から誘うのも良いけど、いつも私からだと淫乱女と見られてしまうかも知れない。なので私としてはどちらかと言うと彼から誘ってもらいたい。もちろん女の子の日以外は応じるつもりはある。

 その為には夫が“きちんとできる”ことを知ってもらい、積極的に動く術を覚えて欲しい。だから私は二回目を誘った。


 結論から言うと二回目はしっかりと長持ちした。

 ちゃんと腰も振れていたし、体全体を使って愛してくれているのが良くわかった。もちろん私も興奮した。さすがに数をこなした凌雅さんの時ほどではないとは言え、しっかりと感じることもできた。

 このままならあまり時間を掛けずにお互い気持ち良くなれるだろう。そんなことを考えていたら未だに異物感が残る下半身が火照ってくるのが分かった。柔が帰ってくる時間になるのでそれ以上はしなかったけど。



 次の日も柔は用事があると言って出かけていった。

 娘は割と感受性が強い部分があるので、昨日のことを勘づいて気を利かせたのかも知れない。あまり気遣いをしないで欲しいし、そこまで貪り合いたいわけでもない。その位の分別は勿論ある。


「十時頃に戻るから」と言われていたから、今からだと三時間は夫と二人きりだ。


「しよっか?」


 真っ赤な顔をしながら彼が誘ってくる。


「うん」

「疲れていないか。気が乗らなければ無理しないで欲しい」


 ああ、これがゲン君だ。凌雅さんもそうだったけど、もの凄く気を遣ってくれているのが嬉しいし、そこまでしてくれなくても全然平気だよと伝えたい。



 それからはずっと離れないでいた。

 私の中が何回か彼の分身で満たされても私は彼自身と繋がっていたかった。

 何度も何度も……凌雅さんを裏切るのではなく、凌雅さんが安心していられるように私が幸せにならなければという思いで、私は自分の心地よさを求めた。

 凌雅さんのことを思うのは今の夫ゲン君への裏切りかも知れない。でもそれは自分の過去を乗り越えるために必要な過程だと思っている。いずれ凌雅さんを意識せず、ありのままの彼を受け入れるため、今暫くの間許して貰いたい。


「どうだった。俺ばかりが気持ち良くなっていたら申し訳ない」

「そんなことないよ。私も気持ち良かったから、これからもよろしくね」


 これは本心だ。愛する人とする行為は稚拙なテクニックであっても気持ち良くなれるものだ。むしろ上手くなる余地があるから、これからお互い勉強しながらカラダを開発し合っていけば良いと思う。凌雅さんとは別の何かを感じられるのではないかと変な期待をしている自分がいる。


「俺の方こそ、これからも、いくつになってもをしようね」

「私もそう思っているから」



 もう少しで柔が帰ってくるはずだ。繋がりを解いたら夫が名残惜しそうにしていた。

 その姿をどこか可愛く感じ、「またしようね」と心の中で呟いた。



◇◇◇


 性描写としてはある程度の具体性をもたせつつ、表現をできる限りぼかしたつもりですが、不快な思いをされる方がいらっしゃいましたらお詫び申し上げます。

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