第41話 恋ばなと夢の国11
あのさ、何でこうなった?宇宙空間を飛ぶ様にコーヒーカップ型の宇宙船が周りながらCGの宇宙を飛んでいく。
「キャー!」「キャー!」「えいっ」「おうぁ!?」
回転したりグワングワン揺れながら、回転したりグワングワン揺れながら、回転したりグワングワン揺れながら、その度に、女の子達が抱きついてきて、抱きついてきて、抱きついてきて……ちょっと色々当たってるんですけど!!
後、日向!!最後の「えいっ」は何?わざと?思い切り頭を抱き締められて、色々柔らかな感じで、いい匂いで……。
勘弁してください。
夢の国の力かなぁ、みんなテンション高すぎるよ。
アトラクションから、出てからベンチで少し休憩中、千早さんと夕凪さんは、チュロスやホップコーンを買いに行く事に、日向と、少しだけまったりお話しながら休憩中。
実際、男女比率1対3でわちゃわちゃしてるのって、楽しそうに見えるのだろうけど、周りの男の人達からの視線が痛いし、女の子達の気は使うんだ。
疲れたー!!
少し、ボーッとしていると、ようやくランド内の沢山の人の流れを見る余裕が生まれて来た。
かといって隣には日向がいるのに、あんまり余所見ばかり出来ない……当たり前だけど。
会話にも、気を使う。
やはり、目の前で他の女の子の会話は、あまり出来ない。
同じ女の子の話は続けて二回まで、何度か、日向や他の女の子達と話してみて思ったのだけど、それが限度、それを過ぎると、会話の中に「………」シンキングタイムが入ってくる。
基本、会話術の中には、相手との会話を聞く、こちらとの会話を話すが基本になるのだけど、会話のキャッチボールの中に、「………」つまり無言の圧力が入ってくるのだ。
この無言の圧力には、色々な情報を含んでいて、1つは貴方は、また同じ女の子の話をしていますよと言う警告。1つはその話はつまらないよと言う無益さ、1つはそれより私の事を見て欲しいと言う嫉妬。
他にも色々あるのだろうけど、まぁ、気を付けるに越した事は無いからね。
正直、疲れるのだ。
元々、女の人の事など、全然知る機会なんか無い筈の僕なのだけど、実は、この手の会話を経験する機会には意外と恵まれていた。
単純に言えば、妹の子ども園の友達のお母さん達、つまりはママ友さん達の事だ。
例えば、妹のお迎えに行った時とか、中学生のお迎えが珍しかったのか、色々と話しかけられたのだ。
きっといつか役にたつ筈と、りっくんママさんやみっちゃんママさん達に色々(無理やり)教えられたのだ。
勿論、半分は聞き流していたのだけど、意外と頭に残っている様で、やはり僕も健全な恋に恋する中学生だったらしい。
それが少しは、こうやって好きな子と会話する時や、様子を見る時に役にたっている気がする。
あんまり、威張れないけど。
「どうしたの?今日、無理しすぎてない?」
はしゃぎすぎている気がする日向に、無理をするなと問い掛けてみる。
「そんな事……やっぱり解りますか?」
少しだけ、うつむき恥ずかしそうな顔をする日向。
「そりゃ、その恋人だからね」
照れて頬を掻きながら言ってみる。
「夜空くんは、何時も私が言って欲しい言葉を言ってくれるんですね」日向が目を細めて微笑む。
ベンチに二人、体を寄り添う様に仲良く並んで座っていた僕らだったけど、もしかしたら思った以上に、日向を心配させてしまっていたのかも知れないな。
そっと日向の左手を握る。
思った以上に冷たい手だ。
みっちゃんママさんの言葉を思い出す。
『女の子はね、寂しい時、不安な時そんな時は、いつも好きな人に触れていて欲しい物なのよ』
『貴方の彼女の手を握って冷たかった時は……』
凄いな流石ママさん、まさか実践する事になるとは思わなかった。
「日向、その今日は寒いからさ」
握った冷たい日向の左手を僕の制服のコートの右ポケットにお招きした。
「夜空君……」
日向の恥ずかしそうな嬉しそうな顔。
「冬が寒くて、良かった」
僕も照れる日向を見て恥ずかしそうに言った。
「こうやって日向の手を握る理由になるからね」
日向が、そっと僕の肩にもたれかかってくる。
「私、馬鹿ですよね」
「夜空君と一緒にいれば一緒にいる程、優しくしてくれればしてくれる程」
「皆といて楽しければ楽しい程……」
「不安になるんです」
ポケットの中の左手が強く握られる。
冷たかった手が温かくなった頃、日向がポツリポツリと話してくれた。
考えて見れば、いくら恋人関係になったとしても、僕ら自体そんなに変わった訳でも無かった気がする。
「教えて日向、僕は馬鹿だから、言って貰わないと解らないかな」
僕は本当に馬鹿だ。
こんなに優しくて可愛い恋人を不安にさせてしまった。
学年一位の大馬鹿が。
「私ね、何となく解ってるんです」
「千早と夕凪が、夜空君の事、その……好きになってるなって」
「その……二人に聞いたの?」
僕の言葉に、日向は強く首を振った。そして僕の肩にもたれ掛かる。日向のシャンプーの香りが、僕の鼻をくすぐった。
「違います」
小さくため息を吐く。寒空に白い息が霧散していく。
「でも、夜空君も、やっぱり知っていたんですね」
日向の言葉に僕はメガネの奥で目を細め優しく言った。
「まぁね、流石に解るかな?」
彼女達から、告白を受けた事だけ、黙っておく。
別に、良いよな、キミを傷つけない為なら。
二人の間に、沈黙の時間が流れた。どれ位だったのだろう。妙に長かった様な気がする。
「夢の国の魔法って有るのでしょうか?有るなら、みんながいつまでも仲良くしていく事が出来る魔法をかけて欲しいです」
「私、恋人として失格何でしょうね?」
もう何度目なんだろう、悲しい時と嬉しかった時と、そして多分僕が見ていなかった時に流した事も有ったかもしれない……。
日向の瞳にうっすらと涙がたまっていた。
「私ね、今が凄く楽しいんです。夜空君や千早や夕凪とこうやって楽しんでいる今が……なのに何故涙が出るんでしょう」
僕はまた日向を泣かせてしまったらしい。
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