第36話 恋ばなと夢の国6

「パンダのポー♪パンダのポー♪ササをバリバリ、パンダのポー♪」


 美少女三人組が三人で手を繋ぎ楽しげに歌を歌っている。


 そして、僕は制服に頭は、ドリームランドの人気キャラ、パンダのポー、なりきりのパンダ帽子をかぶる。


(解っていたけど、やっぱり、僕も被るんだよね。)


 考えたら、負けだと前を歩く三人を見れば、日向が、うさ耳カチューシャで、千早さんが猫耳帽子、夕凪さんが犬の様な宇宙人の様な可愛らしいが、妙にコミカルな帽子を被っている。


 三者三様に凄く似合っていて可愛らしい。


 ついでに、制服ランドの時は、いつもの制服にアレンジをするようで、スカートは折り込んで少し短め、ニーソックスをはいたりもするらしい。絶対領域なんて言葉が頭に浮かんで、日向達の姿を思い浮かべてブンブンと頭を振って考えを消した。


 さっきから、周りの人達の視線が、僕達の方に集まっていて、何となく落ち着かない。


 やっぱり、三人とも、元々可愛いのに加えて、夢の国へ来た解放感と表情の明るさが周りの視線を集める事になったのだろう。


 それに比べて僕は……。


 中学生にもなって制服のブレザー姿で、頭にパンダ帽被って何してんだろう。


 メガネとパンダが被ってるんだってぇーの!!と一人、ローテンション。


 似合ってるのかな?と疑心暗鬼になりながら、テンションの高い三人の後に着いていく。まぁ多分、野郎の事なんて誰も見ていないだろうけど。


「よっ君、かーわい!!」


 後ろにハートマークでも着けそうな、勢いで夕凪さんが僕の手を握ってブンブン振ってくる。そうすると、まぁ、目の前でブンブン来るんだよね?目の前で、何かとは言わないけどさ。僕は赤面して目を反らすしか無いわけで。


「あのさ、耳触って良い?」


 千早さんがハニカミながら聞いてくる。恥ずかしそうに少しうつ向きながら。


「うっ、うん」


 別に、本物の耳じゃないし、触って痛い訳でも、くすぐったい訳でも、気持ちいい訳でも無いのだが、何故か千早さんに触られている間、くすぐったい様な毛恥ずかしい様な感覚がずっとして、居たたまれなかった。


「ふふっ、夜空君のポーさん、スッゴく可愛くて格好良いです」


 日向が腕にしがみついてくる。相変わらず、整った横顔で睫毛も長くて、頬もつつきたくなる位、プルンとしててピンク色で……?


「あれ?少しお化粧してる?」


「はいっ!!えへへっ、実は最近、みっちゃんママさんや、りっくんママさんにお化粧教えて貰ってるんです。」


「千早と夕凪と三人で」


 僕が気付いたのが、余程嬉しかったのか、ぎゃーっとする力が強くなる。


「それで、三人とも今日は明るくて華やかに見えたんだね?」


 三人の方を良く見て。僕なりの満面の笑顔で三人を誉める。


「そのさ……」


 日向とは反対の腕に千早さんがぎゅっとしがみつく。


「誉められると、やっぱり嬉しいな」


 普段、クールな千早さんが照れながら言うと、やっぱり、その可愛らしさが倍増する。


「ちっ千早さん?」


 両腕美少女二人、何だこれ、僕は明日死ぬのかな?


 少し、日向を気にするけど、嬉しさが勝っているのか、今は気にしていない様だ。


 まぁ、たまには良いか?


 と、思っていた僕を少し殴ってやりたくなりました。


「褒めてくれてー、ありがとー!!」

 両手がふさがってるんだから、仕方ないよね?と言わんばかりに、夕凪さんが僕の背中におんぶする様に背中に飛び乗って来た。


 背中に、ダイレクトに大きな物が、その衝撃が襲ってくる。

 恐るべしダイレクト。

 ただ……。


「重っ」


 急に乗られた事により、ついでた言葉。言ってはいけない言葉が出ちゃったー!!


「よっ〜君?ねぇ?よっ〜君……


 ダイレクトさん、もとい夕凪さんがおどろおどろしい声で耳元で囁く。


「いや、いきなり乗って来るから、つい反射で出ただけですよー」


「反射かぁー」


「そうです反射、叩かれるとつい、痛くもないのに、『痛っ』って出るあれですよー」


 失言、しつげーん、女性に体重の話は触れてはいけない事。誤魔化せ何とか誤魔化すんだ。


「反射じゃ、しょうがないよねー」


 にっこり笑顔の夕凪さん。


「よっ君、チュロス一本ね」


「えっ?」



「……はい」


 これは、しょうがない僕のミスだ。


 気を付けよう。


 とっさの言葉とダイレクト(意味不明)


「あのー、前が」


 後ろからの声に、僕らはあわてて列をつめた。


「何だあのメガネ!!」「美少女三人だと?本命は誰だ?」「くっそ、羨ましい」「神様、どの様に徳をつめば……」「それ以上は言うな……」「どの子タイプ?」「えっ?あのオレンジ髪の……」「俺、ちょっとクールな感じの……」「そっか?俺あのゆるふわな胸のおっきい…」「おぃ、お前ら彼女連れで来てるの忘れて無いか?」「げっ!?」「お前ら、夢の国の前に悪夢見させてやろうか!?」「ギャー!!」


 相変わらず、お騒がせしている様で……。


 そうこうしている間に順番が来たようだ。


 ドリームランドのキャスト(従業員)がにこやかに出迎えてくれる。お揃いのチェックのスカート、チェックのブレザーが華やかにまるで非現実的で、この制服を見るだけで、ドリームランド来たなって思えるんだ。


 「いらっしいませ、良い一日を!!」


「ありがとう御座います!!!」みんなで元気に挨拶をしてゲートを潜る。ゲートのバーを回転させて中に入って行く。キャストさん達と日向達がハイタッチしている。パンという軽い音を立てて、僕も恥ずかしそうに「どうも」と言いながらハイタッチをした。


 ゲートの通り際、キャストのお姉さんが耳元で言った。


「素敵な彼女さん達と仲好く夢の国をお楽しみ下さい」


 振り返ると、ニッコリとしたキャストさん達が皆で僕達に向けて、大きく手を広げて言った。


『夢と冒険の世界にようこそ!!』


 さぁ、楽しい一日になる様に頑張ろう!!




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