第34話 恋ばなと夢の国4
「そうだな、色?僕は特に、日向は白でしょ?」
スマホの話から、どんな色のスマホにしようかと、どうでも良い話が心地好い。
日向の受話器から聞こえてくる優しくも甘い声に癒しを感じつつ、あぁ、時のたつのを忘れるとは、まさにこう言う事なのだろうな?と思う。
「やっぱり白なんでしょうね?」
「どうかした?」
千早の声の調子に少し元気の無さを感じて問いかける。
「いえ、私のあだ名と言うか、愛称はご存じでしょう?」
「うん、まあね」
あえて聖女様の名前は出さない。
「そのイメージのせいなのか、私のイメージカラーは、何時も白になってしまっていますねと思いまして」
「決して白色が嫌いな訳では無いのですが……」
イメージカラーか?確かに日向と言えば白って決めつけてしまっていた感はあったけど。
「イメージカラーか……」
「確かに、そう言うのって決めつけられたり押し付けられたりってあるよな」
「何となく、貴方はそれですと言い切られてしまっている様で嫌なんです」
日向の小さなため息が、耳をくすぐる。
「うん、言いたい事は解るよ」
自分を決めつけられる不快感、嬉しくは無いだろう。
でも。
「その上で言わせて貰えば、日向のオレンジブラウンの髪には、白い服が良くに会うし映えると思うよ」
目をつぶってここにいない日向を思い浮かべてみる。
「その、凄く……綺麗だと思うよ。決めつける訳じゃないけど、君に白が良く似合ってる。」
「よっ、夜空君、駄目ですズルいです、酷いです」
何かをバンバンと叩く音が小さく聞こえる。
「日向?」
大丈夫だろうか?何かお気に召さない様な事でもあったのか。
「そんな事言われたら、白い色が好きになっちゃうじゃないですか」
最後の声は熱を帯びて。
「それに……その、会いたくなっちゃいます」
「僕も、会いたいよ」
今日あったばかりなのに、凄く会いたい。
「今から、行っても良いですか?」
僕と同じ考えの人がいた様だ。
「……駄目だろうね」
個人的には、凄く会いたいけど、
「夜道は危ないし、僕は情けないけど、病み上がり、ちょっと無理かな?」
「そうですよね」
明らかに落ちるテンション。
こればかりは仕方ない。
「今すぐ、会いたいのは本当だよ、そこは信じて?」
「はいっ!!」
見えていないのに満面の笑顔が見えた。
「あのね、日向」
笑顔の所に切り出したくは無いのだけど……。
「今日は、謝りたくて電話をしたんだ」
まぁ、本題に入るまでに一時間以上かかったけど。
「はい、何でしょう」
声に緊張感がこもる。
「うん、その……クリスマスイブの件ゴメン」
「何を言ってるんですか?みんなでドリームランドに行けるんですよ?凄く楽しみにしてます」
日向の言葉に嘘は無いのだろう。
だけど、僕には謝らないといけない理由があった。
「でも、僕は二人で出掛けたいって言った」
「……はい」
「父さんから、ドリームランドのチケットをもらった時、本当は、少し二人で行こうかな?とも、思ったんだ」
「でも、しなかった。だから僕が悪いと思うんだ」
チケットの枚数なんて関係無い。
日向と二人でクリスマスデートを楽しむ事も出来たはずなのに……。
「ううん、私は多分皆で行った方が楽しめると思います」
「それは、ちょっと違うかな?」
日向は、そう言ってくれると思ったけど。
「多分ね、日向と二人で行っても、皆と行っても同じ様に楽しめたと思う」
「それは……」
「本当にね、迷ったんだ。日向との約束を守るべきか、皆との仲を考えるべきか」
本当は、みんなのいる所で話す事何だろうけど。
「最初は約束もあるから、二人でって考えたんだ」
「でもさ、考えちゃったんだ。みんなで行く事が出来たのにって、ずっと考えちゃうんだろうなって」
日向は、黙ったままだ。もしかして、呆れてしまったのかな?そうじゃないと良いけど。
「そこまで、考えて思ったんだ。僕にとって、あの二人も、とても大事な人になっちゃったんだなって」
「夜空君……それはス」
「もちろん友達としてだよ」
日向の口から、出ようとする言葉、それは彼女の口から言わせてはいけない事だと思ったから、途中で遮った。
「日向の事は凄く大事でも、あのふた……千早さんと、夕凪さんの事も友達として、ないがしろに出来なかったんだ」
きっと、それは、日向とは違う、まだ恋とかでは無いと思う。
「そうしなきゃ僕が後悔すると、思ったんだ」
「夜空君らしいですね」
日向の声は優しい。
「きっと、黙っていれば、誰も考えない事なのに」
そう、でも、それだと少しのしこりが残るんだ。
他の誰でもない僕の心に。
きっとズルいんだ、僕は。
「さっきの言葉は、聞かなかった事にして下さい」
「えっ?」
僕に構わず日向は続ける。
「私は、夜空君が大好きです。それに、千早と夕凪も。だから、もし夜空君が二人の事をそのス……その、やっぱり、何でも無いです」
「日向、僕の今の偽り無い言葉を言っておくよ」今、言える全てを込めて。
「僕は、君が好きだ」
「はい」
「それは、決して変わらないから」
「はい……」受話器の奥から聞こえる声に、軽く鼻をすする様な音がする。
心配させてるよな。
それから、また一時間位話して、母さんに怒られた。
日向、お休み……。
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