第32話 恋ばなと夢の国2

「ちょっ、これドリームランドのチケットじゃない!?」


 東京ドリームランド、日本最大級の遊園地、夢と幻想の国とか言われてる。

 パーク内は冒険ゾーン、未来ゾーン、妖精ゾーンなどたくさんの施設に分けられて色々なアトラクションやショーが楽しめる。


 中でも、ナイトパレードは圧巻で、この光と音楽とダンスのパレードを見るためだけに、ランドに来る人もいる位だ。


「昨日、父さんが、チケット送ってくれたんだ」


「……これ?四枚もありますよ?」


「嘘!?四枚!?四枚!?」


「待って、何時いつ?何時?日にち何時?」


「落ち着いて、夕凪さん」


「だってー!!」


 大慌てしている夕凪さんに微笑みながら、

「日にちは、その…」、チラッと日向の方を見て、心でゴメンとつぶやく。

「クリスマスイブなんだ」


 日向と目と目が合って、日向が優しく微笑んで…。


 その後は、みんなと同じ様に大騒ぎしていた。


「クリスマスにドリームランド!!!」


 美少女三人が何度もハイタッチして喜んでいる。


「本当は、家族でって父さんが計画してたらしいんだけど、うさぎは、みっちゃん家のクリスマスパーティーに呼ばれたらしくて、ドリームランドよりパーティーなんだってさ」


「それは、お父さん、残念だったでしょうね」

「アハハ、どうだろう?」


 本当は、凄く凹んでたらしいけど、僕の彼女の話を聞いて、喜んで使ってくれって言っていた。


「ありがとう夜空君、クリスマスにみんなでドリームランドに行けるなんて、凄く嬉しい!!」


 日向の笑顔。本当に嬉しいのだろう。

 でも、この一年ちょっとの間、彼女の表情を見ていた僕には、何となく彼女の考えている事がわかった。


「……そっか」


 そっと日向の頭を撫でる。


 日向は、うつむき加減で、頬を染めた。


「あのね、ここにいるのは二人だけじゃないんですけど?」


 千早さんが、呆れた顔をする。


「隣の部屋行こうか?私達、隣の部屋行こうか?」


「これ以上、頭を痛くさせるな!!」


 絶対、体調悪くして、休んでるの忘れてるだろ?


「まぁ、今のはそのゴメン」


「いや、解って貰えれば良いのよ」千早さんが、バツ悪そうな顔をする。


「でも、クリスマスにドリームランドってーすごくないー!?」


「流石に、テンション上がって来たわね」


 二人は、手を叩き合いながら、盛り上がっているが、僕と日向にとっては、少しだけしこりの残る展開にはなったものの、後で、ちゃんとファローしておかないと行けないな。


 となると、後で、家に電話する事になるのか…。


 緊張してきた。


 こういう時、スマホが欲しいなぁ思う。


 でも、今はお互い無いからしょうがない。


 日向の耳に内緒話。


「今日、家に電話するから」


「…うん!!待ってるから!!」


 満面の笑みの日向を見て凄く嬉しく思う。


 皆が帰ろうとする頃、日向と夕凪さんが、妹とじゃれ合いながら、後片付け。


 残った、千早さんが話しかけて来る。


「ドリームランド本当に楽しみ」


 千早さんの言葉に、少しぼーっとしていた頭を振る。


「うん、楽しみだね、友達とドリームランドとか行った事無いから」


「ふーん、まるで他の所なら行った事あるみたいな言い方ね?」


 少し意地悪そうに、少し楽しそうに千早さんの声は、そう聞こえた。


「はい、すみません、友達とどっか行くなんて、ほとんどありません」


 少しすねた言い方をして、笑われる。


「そっか、でも、本当に良かったの?」


「何が?」


「ひなと、二人きりが良かったんじゃない?」


 少し、びっくりして千早さんの顔を見れば、ニヤリと笑われる。


「あっー、そんなに解りやすかったですか?」


「うん、まあね?って言うかひなの方だけどね。」


「えぇ、ちょっと解りやすいですよね」


 そういう所も可愛いのだと僕は思っている。


「何なら、私達二人はランドに行って別れて行動でも、良いんだよ」


「ダメです」


 僕は静かに強く言った。


「あなた方は、日向の友人でも、あると同時に僕の数少ない友人でも、あるんですよ」


 言いながら、これは、あまり威張れた事では無いなと内心苦笑いする。


「日向の事は大事ですし、大事にします」


「でも、僕にとっては、あなた方も大事なんです」


 千早さんが、くしゃっとした笑顔で、

「馬鹿、そう言う事は、ひなにだけ、言ってやってよ」


 そう言って目元に少しだけ滲んだ涙を拭いた。


 ☆☆☆


 その帰り道、私は千早と夕凪と一緒に帰りながら、ドリームランドの話で盛り上がります。

「やっぱり未来ゾーンで3つはアトラクション乗りたいです」


「えー、冒険ゾーンのトロッココースターも乗りたいしー、やっぱり早乗りをどこで使うかよー?」


「パンダのポー、一択」


 千早の言葉に2人で「「あー!!」」と唸ひ「パンダのポーってさ、よっ君に、似てるよねー」そうそれ!!


 夕凪をポコポコしながら、

「私が言いたかったのに!!」と勝手に怒ります。


「はーい、言った者勝ちー!!」大騒ぎして、笑い合って。


「やっぱり、可愛いよね…」


 千早の一言に二人して固まります。


「あっ…ポーさんだよ」


 そっ、そうですよね。

 本当に一瞬…。


「一瞬、焦っちゃった」


 夕凪…?


「ねぇひな、私達本当に行って良いの?」


「どうして?皆と一緒なら楽しいでしょ?」


「でもさー、よっ君とイブは二人で過ごすつもりだったんじゃないのー?」


 二人からの問いかけに、少しハニカミながら、

「本当は、二人で何処かに行きたかったけど……」


「夜空君が決めたのなら良いんです」


「夜空君は大事ですけど、二人の事も大事何です」


 これは、今の変わらない気持ちだ。


 この数ヶ月、みんなで一緒にいて、変わらない私の気持ちだ。


「まったく同じ事言ってる」


 千早は、何故か、参ったと言って苦笑いしていた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る